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第32話

夏実は雅之の隣に座りながら、スマートフォンでレシピを検索していた。おいしそうな料理を見つけて、彼女は雅之に寄り添って見せた。

「この料理どう?でも、材料が足りないからスーパーに行かないと」

雅之は少し眉をひそめてから、「停めてくれ」と運転手に言った。

運転手はすぐに車を停めた。

「どうしたの?」と不思議そうに夏実が尋ねた。

雅之は運転手に「夏実ちゃんをお願い」と言い、夏実に向かって「ちょっと用事があるから、先に行くよ」と言った。

そう言い終わると、彼は車のドアを開けて出て行った。

「雅之…」

名前を呼ばれても、雅之は振り返ることなく去っていった。

夏実はスマートフォンを握りしめ、顔色が急に冷たくなった。

雅之がタイムラインに載っていた里香の写真を見て、突然出て行ったのだと気づいたのだ。

さっきまで家に来るって約束してくれたのに!

まさか、本当に里香に心を奪われたの?

そんなの、絶対許さない!

バーの中、揺れるライトが雰囲気を盛り上げていた。

里香は喜多野の腕を引っ張ってカウンターに戻ると、かおるの肩を叩いて言った。

「見て、連れてきたよ!」

かおるは親指を立てて「すごい!」と返した。

里香は喜多野に一杯の酒を注いで「どうぞ…」と差し出した。

しかし喜多野は受け取らず、悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。

「飲むだけじゃつまらないじゃないか」

里香は目を瞬かせ、「じゃあ、どうするの?」と尋ねた。

喜多野は彼女を見つめ、テーブルの上にあるグラスを並べて、次に酒瓶を手に取り、すべてのグラスに酒を注いだ。

「俺と飲むには条件があるんだ。これを全部飲んだら、好きなだけ付き合ってやるよ。どうだ?」

里香はそのグラスを見て、少し戸惑った。

「あなた、結構大胆ね」

喜多野の目が冷たくなった。

「飲むのか、飲まないのか?」

里香はグラスを置き、「飲まないわ。あなた、本当に退屈な人ね!」と言った。

喜多野は冷笑し、「俺のイヤフォンを奪ったからには、簡単には逃げられないぞ」と言った。

彼が手を上げると、どこからともなく数人のボディーガードが現れ、カウンターを囲んだ。

バーの音楽が小さくなり、みんながこちらを見ていた。

里香は驚き、この状況の大事さを感じた。

「女の子に無理やり酒を飲ませるなんて卑怯じゃない?酒を飲まないなら帰っ
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