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第30話

「里香ちゃん、遊びに行かない?面白いバーを見つけたよ」

かおるの興奮した声が電話の向こうから聞こえてきた。

里香は深呼吸して答えた。

「いいよ、場所を教えて」

「OK、ちょっと待ってね」

電話が切れた後、里香は夕日を見上げ、胸の痛みを感じながらも皮肉な笑みを浮かべた。

雅之が夏実と寝ているのなら、自分も世間体なんて気にする必要はない。

離婚したら自由に楽しい生活を送れるかもしれない、今はその前哨戦だ。

バー・フィリン。

バーに着くと、かおるが入口で待っていて、里香を見るなり駆け寄ってきて大きなハグをした。

「里香ちゃん、数日会わなかったけど、また綺麗になったね!」

「かおるって本当にお世辞が上手いね」里香は微笑んで応じた。

かおるは里香の腕を組んでバーの中へと入った。

「ここのDJがすごいって聞いたよ、絶対気に入ると思う!」

里香は苦笑した。

「私が既婚者だって忘れてない?」

かおるは笑い飛ばした。

「それがどうしたの?あのクズ男だって既婚者なのに、結局、他の女と何をしてるか分からないじゃん。里香ちゃん、人生は短いよ。楽しんで生きよう!三本足のカエルは見つからないけど、二本足の男ならどこにでもいるんだから!」

「その通り!」里香は頷き、かおるの言葉に賛同した。

「今夜は酔わずに帰らないわよ!」

かおるは手を挙げて宣言した。

「酔わずに帰らない!」

店内は徐々に人で賑わい、ライトが点滅し始め、雰囲気が盛り上がってきた。

二人が予約していた席に着いた後、かおるはウェイターを呼んだ。

「ここで一番美味しいお酒を全部持ってきて」

「かしこまりました」

ウェイターが笑顔で去ると、かおるは里香を引き寄せて言った。

「あそこを見て」

かおるが指差す方向を見ると、黒いレザージャケットを着た男が近づいてきた。

灰色の髪に綺麗な顔立ち、それにあの鋭い目、全体に不良の雰囲気が漂っていた。

彼の一瞥は、魂を奪われるようなドキドキを感じさせた。

「かっこいいでしょ?」

里香は「たしかに」と頷いた。

「彼がここのDJだよ。気性が激しいから普通の人には冷たいけど、里香ちゃんなら違うよ。里香ちゃんを見たら、きっと小犬のようになるよ!」

里香はかおるを見て「どういう意味?」と尋ねた。

かおるは目を輝かせて「人生は短いから、楽しもう
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