Share

第18話

おかしい。昼休みの時間なのに誰もいなかった。

里香は心の底から混乱し、顔を引き締めていた。

「止まれ!」

「その女の名札を見たんだ!あいつはDKグループの社員だ、間違いない!」

「捕まえろ!」

「賠償金を払わせるんだ!」

背後からおびただしい数の人々が追いついてきた。

里香はますます急いでいた。一方向に向かって走り出したが、次の瞬間、体勢が崩れ前に倒れそうになった。なんとか身体を支えたが、もう走ることはできなかった。

相手は十数人で、里香を追い詰めるように立ちふさがった。

「あなたたちは誰ですか?」

里香は恐怖を必死に抑え、美しい瞳で追手を見つめた。

先に言葉を発したのはヒゲを生やした男性だった。

「俺の弟がここで働いている最中に足を折られたんだ。アンタはDKグループの従業員だな、責任を取ってもらうぞ!」

里香は眉をしかめた。

「弟さんのことで心配しているのは理解できますが、責任者が他にいるはずです」

田中たけしという男は手を振って怒りだした。

「責任者だと?どこの馬の骨かもわからない人間が200万を払ってくれたけど、全然足りねぇんだよ!弟は足を骨折しているんだぞ!たった200万で、ことを済ませると思ってんの?」

賠償金に不満を持っているようだ。

里香「しかし、私に頼んでも何の助けにもなりません。私はただの下っ端ですから」

田中「そんなの知ったことじゃねーよ!とにかく、今日中に説明してもらわないと、足一本折るようにしてやる。そしたら200万あげるから、それでいいよな!」

どうやら、相手の態度は頑固のようだ。

里香は一瞬息を呑んだ。今日は本当についてないわ。出かける前に占いでもしておけばよかったのに。

これまでにこのような状況に遭遇するのは初めてで、困らないと言ったら嘘になるが、今は、相手を落ち着かせることが先決だ。

そう思って彼女は笑顔を浮かべた。

「公正な対応を求める気持ちはわかります。そうですね、とりあえず私を離していただけますか?会社に戻って責任者に交渉を再開するように頼みます。どうですか?」

田中の表情には、少し迷いが混ざっていた。

「この女の言うことに耳を貸すな、どうせ嘘をついているだろう。この女を行かせたら二度と戻ってこないに決まってる!」

「そうだ、彼女を逃がしてはいかん!」

人混みの中から不満な
Locked Chapter
Continue to read this book on the APP

Related chapters

Latest chapter

DMCA.com Protection Status