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第130話

里香は車から降りたものの、酔いのせいで体調がすぐれず、顔を上げた瞬間、めまいがしてふらついてしまった。

祐介はそれを見て、すぐに里香を支えた。

「大丈夫?」

里香はなんとか体勢を整えたが、彼との距離が近すぎることに気づき、慌てて彼の手を離して、「平気よ、ちょっと目が回っただけだから」と笑顔で答えた。

祐介は心配そうに眉をひそめ、「そんな状態でどうやって帰るんだ?送っていこうか?」と提案した。

「ううん…」

里香が首を振りかけたその時、遠くから聞き覚えのある声が響いてきた。

「ここじゃちょっと危ないな。直接上に上がった方がいいんじゃないか?」

里香と祐介は同時に声の方を振り向くと、そこには雅之が車の中に座っていて、窓を下ろし、冷たく険しい表情を浮かべていた。

その狭い目が、今じっと里香と祐介を見つめていた。

里香は唇を噛みしめ、視線をそらして祐介に向かって、「私は先に帰るね」と言った。

祐介はまだ心配そうに、「でも…」と声をかけたが、

「大丈夫」

里香は微笑んでから、住んでいる棟に向かって歩き出した。

祐介は里香の背中を見送った後、視線を車の中の雅之に向けた。彼の唇に浮かんだ笑みは冷たく変わり、口を開いた。「二宮さん、好きな人がいるんだろ?なんで離婚しないんだ?里香をこんなに引き延ばして、良心は痛まないのか?」

雅之は冷ややかに祐介を見返し、「どうした?私生児じゃ満足できないから、今度は愛人にでもなろうってのか?」と返した。

祐介の笑みは一瞬で消え、その目には危険な光が宿った。

しかし、雅之はそれを気にせず、冷たく視線をそらして運転手に指示を出し、車は前に進み始めた。

祐介の目はますます冷たくなり、何かを思いついたように、唇の端に再び悪戯っぽい笑みが浮かんだ。

いつか、愛想を尽かす時が来るさ…ふふ

里香は階段を上がり、そのまま自分の部屋へ直行した。温かいお湯に浸かると、ふわふわした不快感が少しずつ消えていった。

目を閉じると、今夜の雅之の姿が脳裏に浮かんだ。

あの冷酷で無情な表情…。

以前の彼とはまるで別人のようだった。

雅之は一体何を考えているんだろう?

かおるの言葉に不満があるなら、さっさと離婚すればいいのに、なぜずっと引き延ばすの?

まさか、里香を犠牲にしてまで夏実を守るつもりなの?

そう考えると、里香
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