第136話

里香は冷静に雅之を見つめ、少し眉を上げて言った。「続けないの？」

雅之は突然、冷笑を一つ残して立ち上がり、そのまま部屋を出て行った。

ドアがバタンと激しく閉まる音を聞いて、里香は思わず大きく息を吐いた。

もし雅之が止まらなかったら、どうなっていたんだろう？

里香にはどうすることもできなかった。昨晩のように、全く抵抗できないまま、成り行きに任せるしかなかったかもしれない。

たとえ、それが里香の望むことじゃなかったとしても。

雅之には夏実がいる。そんな雅之とこれ以上深入りしたくなかった。

今月が無事に過ぎれば、それでいい。そして、必ず離婚するんだ。

…

翌日。

仕事を終えて外に出た里香の前に、突然一人の男性が立ちふさがり、微笑みながら言った。「若奥様、私は二宮家の執事です。奥様が夕食にあなたをお招きしたいとのことです」

「奥様？」

里香は不思議そうに聞いた。「どうして急に？」

雅之はこのことを知っているのだろうか？

執事は笑顔で続けた。「坊ちゃんはしばらく帰っていないので、ご両親も大変お会いしたがっています。ですので、あなたをお招きしたいと。坊ちゃんはまだお仕事中ですが、終わり次第戻ってくるでしょう。さあ、ご一緒にどうぞ」

里香はスマートフォンを取り出し、「ちょっと待って」と言った。

しかし、執事は静かに微笑んで「若奥様、これは奥様の命令ですので、どうぞご遠慮なく」と促した。

里香は何か圧力を感じた。雅之には逆らえないのに、ましてや二宮家の人々には。

仕方なく里香は頷き、執事について車に乗り込んだ。

車の中で、里香は雅之にメッセージを送った。

ただ、メッセージを送ってもすぐには返事が来なかった。里香は唇を噛みながら、今回の二宮家への訪問が良いことではない気がしてならなかった。

前回のことが頭をよぎる。二宮家の人々は里香をあまり好いていなかった。むしろ、夏実の方が彼らには好まれていた。

今回、里香を招待する目的は一体何なのか？

不安を抱えながら、車は二宮家に到着した。豪華で立派な庄園が目の前に広がったが、里香にはその景色を楽しむ余裕はなかった。

別荘に入ると、客間には多くの貴婦人たちがいた。

里香は無意識に後ろを振り返ったが、執事はすでに姿を消していた。

少し驚きつつ、里香は立ち尽くした。

「そこの女中、私のバッグを取