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第128話

「それで、どうしたっていうの?」

雅之は背もたれに寄りかかりながら、まわりに冷ややかなオーラを漂わせていた。その端正な顔には感情を読ませない冷たい表情が浮かんでいた。

かおるは歯を食いしばりながら、何も言えずにいた。

本当に恥知らずだ!

里香はかおるの手を握りしめて、「大丈夫、大丈夫…」と優しく声をかけた。

まるで、かおるだけじゃなく、自分自身にも言い聞かせるように。

そして、雅之をまっすぐ見つめて言った。「文句があるなら、私に言えばいい。かおるを巻き込まないで」

そう言うと、里香はかおるの手を引き、さっさとその場を離れた。

雅之は冷たく里香の背中を見つめ、その目には徐々に複雑で深い感情が広がっていった。

二人が去った後、部屋には息苦しいほどの重苦しい空気が漂っていた。

月宮は舌打ちしながら、「もっと素直になればいいのに」とぽつりと漏らした。

雅之は彼を冷ややかに見て、「お前に何がわかる」と答えた。

月宮は笑いながら、「俺がわからないと思ってるのか?お前、ここに入った瞬間から彼女から目を離してなかっただろ。さっきも、彼女に甘えてほしかっただけだろ?ただ、あっちも頑固だから、どんなに辛いことがあっても甘えたりしない。どっちも素直じゃないから、最後まで我慢した方が勝つってわけだな」と言った。

しかし、雅之は冷たく言い放った。「お前、考えすぎだ。里香なんて俺にとって、何の価値もない」

月宮は雅之をじっと見つめ、「お前、本当に夏実が好きなのか?」と問いかけた。

雅之は何も答えず、酒瓶を手に取り、一杯注いで一気に飲み干した。

その時、東雲が近づいてきて、自分の手のひらの傷を見せながら、ためらいがちに尋ねた。「社長、狂犬病のワクチン、打っといた方がいいですか?」

雅之は「消えろ」と冷たく一言。

東雲は返す言葉もなった。

バーを出ると、冷たい風が体を吹き抜け、里香は一瞬、吐き気を感じた。

急いでゴミ箱のところへ行き、嘔吐した。

かおるは里香の背中をさすりながら、心配そうに言った。「里香ちゃん、なんでそんなに飲んだの?雅之は私たちにわざと嫌がらせをしてるんだよ。あいつ、夏実のためなら何だってするんだから!」

里香はしばらく吐き続け、胃の中が空になって少し楽になった。

「水、一本買ってきてくれる?」

「わかった」

かおるはそう言って、
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