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第109話

「祐介さん、この服どうかな?」

里香は祐介が写真を撮っているのを見て、少し下がりながら尋ねた。

祐介は口元を緩めて、魅惑的な笑顔で「いいね」と答えた。

「じゃあ、これに決めるね」と言いながら、里香はカードを取り出して支払いを済ませた。

祐介は止めることなく、そのままじっと里香を見つめていた。

支払いが終わったその瞬間、里香のスマートフォンが鳴り始めた。画面を見ると、マネージャーの山本からの電話だった。

「もしもし?」

山本の声は少し緊張していた。「里香、今忙しい?データの一部が間違ってるみたいなんだ。結構重要なデータだから、ちょっと戻って確認してもらえないかな?」

里香は眉をひそめた。「私が担当したデータですか?」

「そう、君が最後にチェックしたやつなんだ」と山本が答えた。

里香は疑問に思った。昨日、仕事が終わる前に全てのデータをチェックして提出したはずなのに、どうして今になって問題が出たんだろう?

「わかりました。すぐに戻って確認します」

「ありがとう。安心して、無駄足にはならないから。今回の残業はちゃんと手当ても出るよ」と山本が付け加えた。

「わかりました、ありがとうございます」と里香は答えて電話を切ると、祐介とかおるの方を向いて、「残業しなきゃいけないみたい」と言った。

かおるは「土曜日に残業なんて、そんな会社さっさと辞めちゃいなよ」と呆れた様子で言った。

祐介も「俺もそう思うよ。うちの会社に来ない?条件なんかも相談に乗るからさ」と提案した。

かおるは目で里香に合図を送ったが、里香はそれに気づかないふりをして、「お気遣いありがとう。でも今は、この仕事を終わらせなきゃ。終わったら考えるね」と笑顔で答えた。

祐介は優しく微笑んで、「大丈夫、時間はたっぷりあるから、ゆっくり考えて。決まったらいつでも連絡してね」と言った。

里香はこれ以上話を続けると、本当に押し切られてしまいそうで、「じゃあ、先に行くね」と話を切り上げた。

かおるは「車で送るよ。喜多野さん、次の予定は?一緒に送ろうか?」と提案したが、祐介は「大丈夫だよ。ちょうど近くに友達に会いに行くつもりだから。二人とも運転には気をつけて」と答えた。

「わかった、じゃあね」

「さようなら」

車に乗り込むと、かおるは「どうしたの?」と聞いた。

里香は「残業しに戻るだけ」と淡
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