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第112話

雅之は、二宮おばあさんが突然この話を切り出した理由がわからなかったが、今は黙って耐えるしかなかった。

「わかったよ、おばあちゃん。ちゃんと嫁を大切にするから」

二宮おばあさんは冷たく鼻で笑い、「それならまあ、いいわね」と言って、ようやく雅之の耳を離した。しかし、雅之の耳はすでに赤くなっていた。

その様子を、里香は木の茂みの陰からじっと見ていた。最初は嬉しかったが、すぐに気分が沈んでしまった。やはり二宮おばあさんは雅之の祖母だし、孫を叱ると言っても本気で痛めつけるわけじゃない。雅之が何を言っても、里香自身もそれを信じてはいなかった。

まあ、いいか。意味がない。

里香がその場を立ち去ろうとした瞬間、「おばあちゃん」という優しい声が聞こえた。

里香はハッとして振り返ると、夏実が入口から入ってくるのが見えた。彼女は足首までのベージュのロングドレスを着ており、もう一方の脚には目立つ義足があった。長い髪が肩に流れ、淡いメイクが施された顔立ちは、全体的に優雅で上品だった。

二宮おばあさんは彼女を見て、「あなたは誰?」と尋ねた。

夏実は手に持っていたお菓子の箱を開けて差し出し、「おばあちゃん、私ですよ、夏実」と言った。

二宮おばあさんはお菓子に気を取られて、「ああ、あなたね」と言いながら一口食べ始めた。

夏実は微笑んで、「おばあちゃん、このお菓子、やっぱり好きなんですね。前によく作ってあげましたよね」と言った。

二宮おばあさんはお菓子を食べながら笑顔になり、「お菓子を作るのが得意なのね。じゃあ、これからも作ってくれる?」と嬉しそうに尋ねた。

夏実は頷き、「もちろんです、おばあちゃんが気に入ってくれるなら、いくらでも作りますよ」と優しく答えた。

二宮おばあさんは「それは嬉しいわ」と言い、さらに笑顔が深まった。

その時、夏実は雅之に目を向けて、「奇遇だね、雅之も来てるなんて思わなかった」と言った。

雅之は彼女を見つめ、「ここにはよく来るの?」と尋ねた。

夏実は「はい、おばあちゃんが一人でいると寂しいかと思って。雅之が忙しいから、その代わりに私がおばあちゃんのお見舞いに来てるの。でも、大抵私が来るときはおばあちゃんが寝てることが多いんです。今日は起きてて良かった」と答えた。

雅之は淡々とした表情で返事をし、再び二宮おばあさんに目を向けた。彼女の口元にはお
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