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第5話

この騒動は、植川政裕が1年間の減俸を受けることで終わった。

朝議が終わり、私は馬に乗って、皇帝から賜った将軍の邸宅に戻ろうとした。

後ろから「母上、母上、待ってくれ!」という大声が聞こえた。

振り返ると、植川昌文がよろめきながら走ってきた。

彼は数歩走っただけで息が切れ、私は彼を軽蔑する目で見た。

以前から何度も体を鍛えるよう忠告していたが、彼はそれを無視していた。

彼は「文官だから、粗野な武将と違う」と言っていた。

私はただの無知な婦人だと言われ、彼に教える資格がないとされた。

私は冷静な表情を保ちながら、彼を見下ろして言った。「何か用か?」

植川昌文は官帽を直し、口をもごもごさせたが、最後には小声で言った。

「母上と容子が嫁入り道具を全部持って行ったのは......」

私はやっと彼が何を言いたいのか理解した。嫁入り道具が無くなったせいで、植川家は中身が空っぽになり、見かけは華やかだが、実際には一文の金もなかった。

私は眉をひそめ、疑問を口にした。「離縁って何か知らないのか?」

「離縁とは、これから私と植川家が一切関係を持たないということだ」

その言葉を聞いた植川昌文は、いつもの表情を浮かべ、全く理解できないという顔をしていた。

「母上、そんなに意地を張らないでくれ」

「今、母上は60歳を超えていて、誰と縁を結ぶつもりか。これからどうやって暮らしていくつもりか?」

「父上は40年以上も母上と一緒に暮らしてきたのだから、渚殿が入ってきても母上の地位を脅かすことはないさ」

彼の理解できない顔を見て、私は腹を立てることなく、ただ笑うしかなかった。

彼と話すのは、牛に対して琴を弾くようなものだった。

私は手に持っていた長槍を回し、槍の先を植川昌文の喉元に向けた。「どいて」

一つの痩せたが力強い手が槍を払いのけた。振り返ると、植川政裕の困ったような眼差しが目に入った。彼の声はやはり、まるで子供をあやすかのように優しかった。

「雪子、もういいだろう。渚が嫌いなら、別邸に住まわせるから」

「それに、60歳を超えた婦人が戦場に出るなんてどうかしている」

そう言いながら、彼は肩に掛けていた羽織を解き、馬に乗っている私に差し出そうとした。

「寒いからこれをかけなさい」

私は彼の羽織の下にしわだらけの朝服を冷たい目で見た。

そして唇
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