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第3話

もしかすると、私の執念があまりにも深かったせいか、魂が謹言の家までついて行ってしまった。

「謹言、おかえりなさい!」

千絵はエプロンをつけ、柔らかくて可愛らしい笑顔を浮かべていた。その頬には小さなえくぼが二つ。

誰が見ても、彼女が二人を殺したなんて思わないだろう。

当時の傷害報告書には、千絵が最初に被害者を轢いた時、致命傷には至らなかったと記されている。

しかし彼女は、何度も車で被害者を轢き続け、最後には命を奪い、遺体を道路に捨てた。

私の依頼人は、ただの身代わりだったに過ぎない。

千絵を見ると、謹言の顔に自然と笑みが浮かんだ。

「千絵、今日は何を作ったの?」

二人は自然に抱き合い、まるで普通の恋人のように親密だった。

私はその家を隅々まで見渡した。

この家は、私と謹言が一緒に働き、3年間節約してようやく頭金を貯めて買ったものだ。

大きなソファやテーブル、小さな花瓶や箸まで、全部私が選んで配置したものだった。

私の思い出と感情を注いだこの場所で......

それなのに、私に関わるものだけが残酷にも全部消されていた。

リビングの真ん中に飾られていた私と謹言のカップル写真は、彼と千絵の結婚写真にすり替えられていた。

当時、私たちは結婚する予定だったのに。

彼は、婚姻届を出すために写真を撮りに行く時間さえ惜しんでいた。

「そんなのただの消費者の罠だよ。何万も払ってくだらない写真を撮るくらいなら、パソコン買った方がマシだ!」

「それに、君はそんなに美人でもないんだから、撮ってもしょうがないだろ?」

その時、謹言の言葉は私の心に鋭いナイフのように突き刺さった。

恋をしていると、相手の言葉にどうしても敏感になってしまうものだ。

私と謹言は大学で付き合い始め、卒業後、この街で一緒に頑張ってきた。

千絵が戻ってきたのは、私たちが結婚する年のことだった。

婚姻届を出す日、千絵は役所の前に現れた。

「謹言お兄ちゃん、私、帰ってきたの」

その時、私は「初恋」の破壊力を知った。

彼女のその一言だけで、謹言は役所で私を置き去りにしたのだ。

しかし、長年の付き合いが私に諦めきれない気持ちを抱かせた。

私は何度も妥協したが、それでも彼から返ってくるのは厭わしさとさらなる要求ばかりだった。

そして、すべての過ちを私に押し付けた。

「お前を見てみろ。弁護士として毎日残業してる。これじゃ結婚なんてできないだろ?」

「千絵みたいに、俺を支えてくれる存在になるって言うんだったら別だがな」

「いつも俺たちのせいにするんじゃなくて、もっと自分を見つめ直せよ!」

「お前は千絵には勝てない」という言葉は、謹言の「犬笛」のようなものだった。

彼がその笛を吹くと、私は無意識に反応してしまっていた。

彼に貶され続けるうちに、私は自分自身を疑うようになった。

私と謹言が付き合って七周年を迎えた日、私は彼と千絵のチャットを目撃した。

「謹言、私はいつまでも待ってるよ。昭子と別れたら、私たち結婚しようね」

謹言の返事は一言だけだった。

「うん」

その「うん」というたった一言が、私の自尊心を粉々に打ち砕いた。

その日のうちに私は家を出て、仕事に打ち込んだ。

周囲の好奇の目に耐えながら、雄太の案件を引き受けた。

そして、その日に、私は自分が妊娠していることに気付いた。

私は悩んだ末に、子供を産むことを決めた。

お金もあって仕事もある。たとえシングルマザーでも、私はこの子を立派に育ててみせると決意した。

だが、千絵は私から結婚、子供、そして命までもを奪った。

私は謹言と千絵のいちゃつく様子を眺めながら、心の中で叫ばずにはいられなかった。

どうして?どうしてなの?

彼らの幸せは、すべて私の痛みの上に築かれているんだ!

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