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第2話

気持ちを落ち着かせるために、真紀はリモコンを手に取ると、バラエティー番組を見始めた。

デザートを食べながら、二人でバラエティ番組の内容について色々言い合った。

「この人は見た目が悪いよね。猿みたいな顔してるから、絶対お笑い芸人に決まってる」

「このシーンは大袈裟すぎるから、絶対脚本がある気がする」

ところが、私たちの顔から一瞬にして笑顔が消えた。

なぜなら、突然テレビ画面に、芸能業界トップの博が現れたからだ。

真紀の表情は暗くなり、「気分悪い、別のチャンネルに変えよ」と言い始めた。

だがその時、テレビから聞こえた博の声が私の視線を奪った。

ちょうどバラエティー番組の例の扇情的部分だ。

博はカメラの方を見ていて、その花のような目には感情があふれている。

「僕がもっとも残念だと感じていることは、あの時、一人の女の子に打ち明けなかったことだ......」

周りの人たちから多くの質問が投げかけられているのに対し、真紀は強く拳を握りしめている。

私は彼女の腕を軽く叩いてなだめたが、心には苦みが溢れていた。

博は既に真紀と婚約したが、それを公表したことは一度もなかった。

「もし婚約を公表してしまったら、人気が落ちて仕事に影響が出る」とばかり言っている。

博にとって、家庭をもつことも、芸能界に入ることもただの暇つぶしに過ぎない。

真紀が言い過ぎると、博は怒って、何で理解してくれないんだとか、彼の仕事に協力しないなどと言って、絶えず彼女を𠮟り続けている。

しかし、彼は知らない。

彼が炎上したとき、真紀は徹夜して彼のために㏚を行っていたことを。

彼の新しいドラマが発表されるたびに、真紀がどのように彼を応援するのかを。

真紀は私に、「芸能界に出るのは博の夢なの」と言ったことがある。

だからこそ、彼女は全力を尽くして、博がトップに推し進めるように応援している。

だが、博にしてみれば真紀の全ての行動は所詮彼を引き留める手段であり、ただの嫉妬に過ぎない。

彼はこの世界で誰よりも彼を理解してくれる人は成喜と幼馴染の柔子しかないと思っている。

私の心配そうな顔を見て、真紀は無理に笑った。

「大丈夫よ、まゆみちゃん、私たちはもう婚約破棄すると決めたじゃない。

後は双方の両親に知らせるだけよ。そうすれば、終わる。私たちも自由になる」

私は涙目に頷いた。

ところが。

夜、成喜が電話をかけてきた。

彼は不満気にこう言った。

「まゆみ、お前は今回すごいわがままだな。柔子が風邪をひいたから、俺はただ彼女を看病しに行っただけだ!そんなに思い込むことか!?そんな小さなことで、既に決まった宴会にも来ないつもりなのか!?

今、両家の両親全員揃ってるぞ。みんなお前を待っている。まゆみ、わがまま言わないでくれ。俺を煩わせるな!」

普段、成喜にそう冷たい態度で𠮟られるたびにがっかりする。しかし今、彼の憤る罵りに、平気で

「成喜、婚約破棄になったんだから、この宴会に出る必要はないわ」

と言った。

「婚約破棄」という文字が再び成喜の怒りを買った。

怒った彼は、

「知ってるか?お前の行動は全部嫉妬のせいだ!まゆみ、俺は今までまったく知らなかったよ!お前がそんなに理不尽な女だってことを!お前に電話をかけてるのに、階段を降りて来るのがそんなに難しいのか?

みんなここで待ってるんだ。情けないにも程がある。今日お前は何があっても来なければならない!どこにいるのか教えろ。今迎えに行く!」

と罵った。

私は病院の名前が書かれている布団を見て、突然疲れ切った気がした。

「立花病院。迎えにきて」

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