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第6話

警視庁に到着したとき、解剖台の上にはあの遺体が横たわっていた。

法医学者はすでに遺体の顔の骨を組み立て終えていた。

課長は心配そうに伶の肩に手を置いた。

「今夜はやめにして、明日また続けたらどうだ?」

「お前が回復してからやるのも構わないぞ」

しかし、伶は首を振って拒否した。

「早く終わらせた方が、遺族のためにもなる。大丈夫だ」

伶はいつもこうだ。仕事に対しては冷静沈着で、まるで氷のようだ。

課長も仕方なく、部屋を彼に貸すしかなかった。

伶の専門技術を疑う者は誰もいなかった。

私ですら、彼が骨だけで生前の顔の輪郭を再現するのを目の当たりにして、思わず驚嘆してしまった。

伶は部屋に閉じこもり、丸一日と一晩かけて、休む間も惜しんで対比を繰り返した。

その間、休憩はわずか4時間ほどしか取らなかった。

最終的に彼の目は赤く充血し、筆を握る手は震え、額には細かい汗が浮かんでいた。

画に描かれた人物を見つめる伶の表情は動揺し、ペンを手から落とした。

見覚えがあるだろう?そうだ、見覚えがあるに違いない。

だって画の中の人物は、私だから。

あなたが一番嫌っていた、私だ。

伶は信じられず、無数の紙に描き直し続けた。

結局、壁に掛かっている画は私と八割方似ている結果になった。

そして彼は耐え切れなくなり、部屋を飛び出した。

捜査一課の課長が伶を捕まえて、不思議そうに尋ねた。

「どこへ行くんだ?」

伶は目を閉じ、頭を振り続けた。

まるで独り言のように、「あり得ない、そんなはずは……」と。

目の前に裸々な真実が突きつけられても、伶は信じられず、逃げ出すことを選んだ。

彼は警視庁を飛び出し、震える手で私の携帯番号を見つけ出し、電話をかけた。

だが、しばらく待っても相手側からは機械的な応答だけが返ってきた。

彼は完全に取り乱し、壁に拳を叩きつけ、震える声で叫んだ。

「電話に出ろ!聞こえないのか!」

「言花、今出れば、許してやる!怒るのもやめるから……」

伶は崩れ、頭を抱えて地面にうずくまった。

私の目の前で、いつも傲慢だった彼が、こんなにも惨めに泣き崩れる姿を見たのは、

前回は彼の母親が集中治療室に入った時以来だった。

あの時の冷酷な言葉が、今でも私の頭に鮮明に残っている。

「お前のことを憎んでいるよ。死んでくれればよかった
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