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第10話

伶が潜入捜査を始めて十年が経った。

今や、各大警視庁の指名手配ポスターには彼の写真が貼られていた。

古屋伶という名前の過去を覚えている者はいなくなった。

今やその名前が出るときには、汚れた罪悪が思い浮かべられるだけだった。

彼は完全に犯罪の象徴となっていた。

そんな悪名高い大悪党のはずの彼が、誰も知らない場所でただ一人、一人きりで戦っていた。

周囲の信頼を全て勝ち取り、最終的には誰も予想できなかった方法で、国内のすべての拠点を壊滅させた。

警察が現場に到着したとき、彼もまたその惨たらしい戦いの渦中で姿を消していた。

世間では、このような癌がついに取り除かれたと歓呼の声が上がっていた。

ただ、警察内部では彼の無事を祈っていた。

彼が無事に戻ってくることを願って。

翌年の秋、古屋おばさんは私の墓前で伶に会った。

その時の彼は、一人で墓の前にしゃがみ込み、惨めな姿で、ただ墓前のその白黒の写真をじっと見つめていた。

そして、ぼんやりとした笑みを浮かべて、「言花……」と呟いた。

伶は完全に気が狂ってしまった。

病院に運ばれたとき、医者は彼に重度の精神疾患があると診断した。

誰も彼を見放そうとはしなかったが、彼は自らを見限り、人がいない隙に病院を抜け出し、私の墓前で命を絶った。

死んだとき、彼の口元には微笑みが浮かんでいた。

それで私はずっと昔に言った言葉をふと思い出した。

「裏切り者は万死に値する」

輪廻への道に、彼がいることが残念だった。

伶、死んでもなお私を解放してくれないのか……本当に不愉快だ。

【おしまい】
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