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第4話

病室で母親のそばにいる伶。

そのとき、病室の扉を叩く音が聞こえた。

扉を開けると、配達員が小声で言った。

「こんにちは、ご注文の花束をお届けしました」

伶は差し出された花束を見つめ、少し驚いた様子だった。

そういえば、最後に私は、病院で伶に会うのを避けようと、花をオンラインで注文していたのだった。

これは私からのささやかな気持ちを込めたもの。

その花束には、花屋に頼んで書いてもらったメッセージも添えてあった。

「古屋さんが一日も早く回復しますように〜」

しかし、そのメッセージを見た伶は激怒し、メッセージを握り潰すようにしてゴミ箱に投げ捨てた。

「お前が母さんにしたことは、たかが花束なんかで許されると思うな」

「母さんに謝罪する以外、俺は絶対にお前を許さない!」

怒りに任せて、花をゴミ箱に投げ入れた伶。

私は手を伸ばして花束を掴もうとしたが、透明な魂は花をすり抜けてしまい、ただ虚しく見つめるばかりだった。

苦笑が漏れた。

私だって、古屋おばさんが目を覚ましたら直接謝りたい。

「ごめんなさい」と伝えたい。

でも、もう私は死んでいるんだ……

直接謝る機会なんて、もうないんだ。

古屋おばさんは、養母以外で私に最も優しく接してくれた人だった。

年末年始や祝祭日になると、いつも豪華な食事を用意してくれ、伶と一緒に帰省するように誘ってくれた。

私が孤児だと知っていたから、いつも何かと私を優先してくれた。

伶が私を怒らせると、彼を叱りつけて私を笑顔にしようとしてくれた。

こんなに良い人が、私のせいで、病室のベッドに横たわっているなんて。

私は罪人だ。

深い罪悪感に襲われていると、電話のベルが響き、伶が電話を取るのが目に入った。

彼の表情がはっきりと変わったのがわかる。

電話の向こうからは、泣き声混じりの友音の声が聞こえていた。

「伶、私、今すごく辛いの……来てくれる?会いたいの」

伶は何も言わずにコートを掴み、すぐに出かけた。

道を歩きながら、感情を抑えようとしたのか、彼はできるだけ穏やかな声で言った。

「今どこにいるんだ?すぐに迎えに行く」

彼は急いで車を走らせ、いくつかのショートカットを利用して、最終的に車はあるバーの前で止まった。

伶はもともとこのような場所を好んでいなかった。

私が同級生たちと集まるときも、彼は私が悪意を持った人に狙われないか心配し、いつも迎えに来てくれていた。

それが今では、別の女性のために、同じことをしていた。

彼自身も気づいていないかもしれないが、友音に対しては、他の誰とも違う対応をしていた。

伶はホールを通り抜け、友音がいる個室を見つけた。

友音はゲームに負けて、飲酒を強要されている最中だった。彼女の周囲には、目つきの悪い男たちが取り囲んでいた。

伶は友音にコートをかけ、眉をひそめながら小声で言った。

「送っていくよ」

友音は伶の首にしがみつき、ぐったりと彼の胸に倒れ込んだ。

「来てくれたのね」

「私のことなんか、もうどうでもいいと思ってた……ねえ、少しは私のことを好きになってくれたの?」

伶はその問いに直接答えることなく、彼女を連れてその場を離れようとした。

その途中、部屋の中の男たちに囲まれた。

「古屋さんだよな?友音はゲームに負けたんだから、酒は飲み終わらせないとな!」

「うちには、タダで帰すなんてルールはないぜ……代わりに、あんたが酒を飲めば、帰してやってもいいけどな!」

彼らは面白がって見ているようだった。

伶の顔は暗くなったが、彼はテーブルの上に並んでいた六杯の酒を黙って飲み干した。

「これでいいか?」

冷たい声が響いた。

その後、伶は友音を抱き上げ、全員の前で堂々とその部屋を去っていった。

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