第3話

景輝は母親を落ち着かせた後、担任に向かって深々と頭を下げた。

「先生、お騒がせして申し訳ありません。この件はこれで終わりにしましょう」

それから彼は私の方を向き、笑みを浮かべた。

「奏ちゃん、もうやめよう。君の責任を追及するつもりはないんだ」

チッ、前世ではこんなに演技が上手いとは気づかなかったな。

吐き気を覚えた。

「景輝、よくも私の責任を追及する顔ができるわね」

「それに、誰が自分の潔白を証明しようとしてるって言ったの？」

私はためらうことなくすぐに電話をかけ、相手に状況を説明した。

「警察の方、学校で襲われました。助けを求めます」

私の言葉が終わるや否や、謝野の母は信じられないという表情で私を見つめた。

彼女の顔色が青白くなり、ひどく怒っているように見えた。

「星野奏音、どうしてこんな風になってしまったの？」

この言葉、前世でも彼女に言われたっけ。

前世で景輝が許野氏を押しつぶした後、私が謝野氏に乗り込んで彼女の助けを求めた時だ。

でも彼女は昔の縁など微塵も考えず、冷たく言った。

「あなたのせいで景初は好きな人を失ったのよ。彼はあなたを憎んでいる。だから私も助けられないわ」

「それに、奏音、どうしてこんな風になってしまったの？」

「人の家に無断で押し入るなんて、礼儀知らずね」

今世では、怒りに満ちた表情の謝野の母に向かって、私は軽く笑った。

「叔母さん、悪いことをすれば代償を払わなければならないんですよ」

警察署を出ると、父が慌ただしく駆けつけてきた。

人生をやり直せたのだから、感情を隠せると思っていた。

でも、父の姿を見た瞬間、堰を切ったように涙があふれ出した。

私が泣いているのを見た父は、警察署の前で景輝を殴ろうとした。

私に止められると、父は目を赤くして心配そうに言った。

「奏ちゃん、顔は大丈夫か？痛くないか？」

そう言いながら、傍らでうずくまる謝野の母を睨みつけ、怒鳴った。

「正気か？よくも私の娘を殴れたな！」

「覚悟しろ。すぐに謝野氏との取引を解消してやる！」

景輝は慌てて母の前に立ち、真剣な面持ちで父に言った。

「おじさん、どうか落ち着いてください。母は心配のあまり、取り乱してしまったんです」

「奏ちゃんが先に人を雇って僕を殴らせたと聞いて、母も僕のことを心配して......」

続いて、景輝は私の前に歩み寄った。

腕の傷を見せながら、深いため息をついて言った。

「奏ちゃん、ほら、僕もこんなに傷ついているんだ。もう怒るのはやめよう」

景輝は父の表情をちらりと窺い、続けた。

「君が僕のことを好きすぎて、つい衝動的になってしまったのは分かる」

「でも、僕と月......浦月とは普通の同級生関係なんだ」

「クラス委員長として、先生に頼まれて彼女の勉強を手伝っていただけで、少し親しくなっただけさ」

「どんなに嫉妬しても、人を雇って僕たちを殴らせるのはやりすぎだよ」

ほら、なんて高度な話術だろう。

数言で私を身勝手なお嬢様に仕立て上げている。

殴りたい衝動を抑えながら、私は眉をひそめ、意味ありげに彼を見た。

「誰があなたのことを好きだって言ったの？自惚れも程々にしてよ」

景輝は一瞬驚いた様子を見せた。

「何を言っているんだ？」

すぐに普段の態度に戻り、私の言葉を怒りのせいだと思ったようだ。

彼は首を振りながら、困ったように笑った。

「もういいだろう、奏ちゃん。君はずっと僕のことが好きだったし、それに僕たちには婚約が......」

私は顔を引き締め、冷たく彼の言葉を遮った。

「ごめんなさい、景輝。私たちの婚約は解消させてもらうわ」

言葉が終わるや否や、彼は信じられないという顔で目を見開いた。

数歩近づき、私の腕をきつく掴んだ。

「奏ちゃん、一体何を言っているんだ。彼女とは友達だと言っただろう」

私は笑みを浮かべながら、ゆっくりと手を抜き、逆に彼の傷口に手を当てた。

そして突然力を込めると、景輝は痛みで顔色を変えた。

私はさらに明るく笑いながら言った。

「よく聞いて、景輝。私はあなたのことが好きじゃないし、結婚もしない」

「あなたたちを殴らせた人間は私じゃない。浦月に聞いてみることをお勧めするわ」

「彼女に伝えて。もし私に濡れ衣を着せようとするなら」

「弁護士を連れて直接会いに行くことも辞さないって」

私は彼を上から下まで見渡し、一言一句、怒りを込めて言った。

「そしてあなたは......」

「この先ずっと、その愚かな恋に縛られ、腐り果てて死ぬがいいわ！」