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第8話

この時、遼は私を見つめて言った。「遺骨は返す。ただ君だけは、どうか離れないでくれ」

「あなたにそんなことをお願いする資格があるの?私を傷つけ、母を死なせたのに、私は決して許さない」

「遼、私はもうあんたなんか愛していないのよ」

そう言って彼を振り払い、ベッドから降りた。遼は焦り、「君は体が弱いんだ、無理はしないでくれ。僕が出て行くから、君は休んでほしい」と言い、

慌てて後退した。その姿は、かつての冷徹で強引な彼とはまるで違っていた。

私は微笑み、「遼、もう二度と会うことはないよ」と言った。

警察がすぐに到着し、遼に遺骨を返還するよう命じ、私は母の遺骨を無事に埋葬した。埋葬が終わり、ようやく私は深いため息をつくことができた。

墓前にひざまずき、何から話せばいいのか分からず、しばらくしてから静かに言った。「お母さん、安心してください。これからの私はもう誰にも傷つけられない。遼も愛していないし、彼に縛られることもない」

微かな風が頬を撫で、まるで母が私の気持ちを聞きに来てくれたようだった。

母は私が傷つく姿を見るのが一番つらかっただろう。今、私がこうして一人でいることを見て、きっと母は私のそばにいるに違いない。

気がつくと、目がじんわりと潤んでいた。

かつて遼と一緒にいた頃、私は彼が唯一の人だと信じていた。美咲がそばで陰険な態度を取っても、気にも留めていなかった。

結局、遼が選んだのは私だったから。しかし今思えば、彼の愛は枷だった。いや、愛とは呼べない、それは単なる取引に過ぎなかった。

彼は感情を物のように扱い、すべてを等価交換で考えている。

遼は商売人だから、損する取引は決してしない。この不平等な関係の中で、明らかに私が得をしていると思っているからこそ、当然のように私により多くの負担を求めるのだ

だが、愛は取引ではなく、互いに相補い合うものだ。それを理解していないのは、遼の方だった。

私が彼を無視していた。

遼は電話をかけてきたが、私は出なかった。ネット上では遼と美咲に対する非難が止まらなかった。

私のSNSアカウントも見つかり、電話番号まで流出した。毎日何百通ものメッセージが届いたが、私は何も返さなかった。

冷静でいることが多くを解決する時もある。私が返信しないため、ネット上では遼が私を軟禁しているのではないかと心配する声が増えて
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