第5話

目を覚ますと、病院のベッドに横たわっていた。

手足を少し動かそうとしたが、全く動かない。

心の中で喜びが湧き上がった。もしかして、元の世界に戻ったの？

急いで目を動かし、父と母がどこにいるかを確認しようとした。ずっと会いたかったから。

攻略の世界での両親は利益を優先していて、私という娘はただ養っているだけの存在だった。

だから生き延びるために、他の友達も作らず、男を攻略することに全力を注いでいた。でも、それも無駄だった。誰も私を愛してはくれなかった。両親以外は。

「桜子、目が覚めたのか？」

突然、扉が開き、宏一が入ってきた。

彼は疲れ切った顔をしていたが、それでも私のベッドのそばに座り、優しく言った。

「心配しないで、今は動けないけど、必ず治してみせるから。」

私は体中が冷たくなり、血が逆流するような感覚に襲われた。

なぜ？なぜまだここにいるの？脳内でシステムを必死に呼び出した。

【ホスト、今回の事故は致命的なものではなく、さらに早めの治療で命が助かりましたので】

システムの言葉が途切れたが、その意味は理解できた。

今の私は自力で座ることすらできない。ましてや男に殺されることなんて、到底無理だ。

宏一は私が黙っているのを見て、悲しんでいるのだと思ったのか、さらに言葉を続けた。

「俺の医術を信じろ。すぐに元通りになるから」

口を開こうとしたが、長時間の乾燥で唇がひどく張り付いていた。

彼はすぐに綿棒を水で湿らせ、優しく私の唇を潤してくれた。

【ホスト、手術中に宏一はあなたが患者だと知った瞬間、手が震えてメスを落としそうになったんです。

それでも他の医師に交代するかと聞かれると、彼は拒否し、『自分にしか彼女を救えない』と言ったんです。

今こそ、彼を攻略するチャンスかもしれません。現在の彼の愛情度は80％です】

80％か......確かに高い。

以前、宏一を攻略しようとした時でも、彼の愛情度は85％が最高だった。

私が攻略した男性の中で、彼が一番低かったけれど。

でも、彼と美咲が幼稚園の行事に仲良く参加していた姿を思い出し、首を横に振った。

「もう誰も攻略したくない。ただ、家に帰りたいわ」

家に帰って、両親に最後の別れを告げて、それからずっと眠りたい。

男を攻略するこの20年間、私は疲れ果てていた。

その日の午後、