共有

第2話

宏一と美咲は幼稚園で私の息子と一緒に子どもの日を祝っていて、誰が見ても仲良し家族に見えた。

海斗は彼らを責めず、私を責めてきた。

心の底から湧き上がる、どうしようもない苛立ち。

海斗は私が攻略しようとした最初の相手だった。

彼は私より三つ年上の兄で、小さい頃から私を大切に可愛がってくれた。

私が十歳の時、システムは彼の私に対する好感度が90%に達したと驚いて教えてくれた。もう少し頑張れば、家に帰れると思ったのに、美咲が現れた。

彼女は家政婦の娘で、私との争いの中で階段から転げ落ち、全身にあざができた。

海斗は玄関に立って、見たことのない冷淡な目で私をじっと見つめた。

「桜子、お前の気の強いお嬢様根性はいつになったら直るんだ?大きくなるにつれて、どんどん意地悪になっていくな」

その言葉は鋭い刃のように私の心に突き刺さり、痛みを引き起こした。

システムは愛情値が50%に下がったと告げ、これ以上攻略しても成功の可能性は低いと言った。

システムの言う通りだった。その日以来、海斗の私への態度はますます冷たくなり、愛情値もどんどん下がっていった。

彼は両親に私を寄宿学校に送るよう勧めて、美咲を傷つけないようにしようとしていた。

「海斗、どうしてここにいるの?」

本当にあの地獄のような技術学校に送られてから、私は彼を「兄」と呼ぶことはなかった。

「お前の小細工は本当に下手だな。このホテルが佐藤家のものだって忘れたのか?」

「ここで部屋を取ったのは、私を呼び寄せるためだろ?」

「そんな人間は早く死んでくれ。妹の名前を利用するなんて!」

もう彼を攻略することは諦めていたのに、彼の嘲笑や軽蔑の口調は今でも私を傷つける。

けれど、子供の頃の彼の優しさを思い出すと、私のことを見守ってくれていた兄として、まだ少しは私に気持ちが残っているんじゃないかと期待してしまう。

それで、子供の頃のように彼の衣服を引っ張りながら、最後のお願いをしようとした。

「兄ちゃん、私を殺してくれないかな......」

言い終わると、彼に嫌悪感を持って押し返されてしまった。

防御もせずに倒れ、しばらく呆然としていた。

「お前みたいな奴はとっくに死んでいてもおかしくない。でも、遠くで死んでくれ。俺はお前の遺体なんか片付けたくない」

私の勘違いだった。

海斗が私に感情を持っているわけがない。

私は支えながらゆっくり立ち上がり、海斗を恐れずに見つめた。

彼を真剣に見たのは久しぶりだった。

以前は優しくて私を大事にしてくれた兄だったのに、今はその面立ちが鋭くなり、冷たさだけが残っている。

突然、彼の顔に思い切り平手打ちをした。

彼を攻略するために、私は両親が残してくれた遺産を手放し、彼に出世のチャンスを与えた。

しかし、彼はただ冷たく「これはお前が俺に借りていたものだ」と言うだけだった。

誰に借りがあっても、彼にだけは絶対にない。

そう考えながら、再び手を上げて彼に平手打ちをしようとしたが、彼に止められた。「桜子、お前、本当に狂ってるな!」

彼は怒りで目が燃え上がりそうだった。

昔は彼が怒ると怖かったけど、今は思わず笑っちゃった。

「そうよ、私は狂っている。あなたはどうするつもり?できるもんなら、殺してみろよ!さあ、やってみな!」

私は詰め寄ったが、彼は怯んで後ずさった。

海斗は目を見開き、私の手を放した。

「お前、本当に最低だ。死ぬとしても、俺を巻き込みやがって」 彼は逃げるように去っていった。

手首に残った赤い跡を見つめ、私は思わず苦笑い。

彼が私を家に帰してくれると思っていたのに、違ったんだ。

気を取り直して、藤崎涼介のボクシングジムに向かった。

涼介は偽の坊ちゃんで、高校のクラスメートだった。

寄宿学校に送られてからの唯一の光だった。

昔の彼は、私がいじめられていると必ず助けてくれたし、女の子トイレに飛び込んで助け出してくれたこともある。先生に立ち向かってくれたり、私のために地下ボクシングをやっていることまでバラしたんだ。

「桜子、わからないけど、お前のこの顔を見てると、守らなきゃって気持ちが湧いてくるんだよ。ずっと妹が欲しかったんだ。だから、俺がお前を守ってやるよ、いいだろ?」

私は彼を攻略できると思っていた。

だけど、好感度が95%に達した頃、林依が転校生として現れた。彼女が私と攻略相手の前にまた姿を現したんだ。

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status