願い事を赤い布に書いた後、瀬川秋辞のを見て、中村逸は笑ってきた。本当に「新しい一年が無事になりますように」と書いてあった。橋にはほとんど恋人同士で、中村逸は橋の半ぐらい歩いたら、瀬川秋辞に向かって手を伸ばした。「手を繋いたら?みんなそうやってるし。じゃないと、ラブラブの雰囲気で俺だちが怪しく見えるんだけどなあ 」瀬川秋辞が何か言おうとした時、スマホが鳴り出した。チラッと見たら、辻本佐和子からの電話だった。彼女は眉をひそめて直接に切った。数分もしないうちに、辻本佐和子からボイスメッセージが届いてきた。怒り狂ったせいで声まで変わってしまった。「瀬川秋辞、相談もしてくれないで、黙ったままお祖
しゃがんで確認したら、ご遺骨がすでにお墓に納められてしまった。彼女は振り返って男をにらんだ。「クソ野郎、イカれてるの?だったら、さっさと病院に行け!」薄野荊州はこの言葉に眉をしかめた。「悪口でもいい加減に」よくもこんな下品な言葉を言えるものだ。「直接手を出していないで、ただ悪口だけなのは、もう十分に自制してる」彼女はもう少しで爆発しそうになった。「お墓を開けろ。祖父のご遺骨を連れて行くから」「もうお墓に納めたのに。まさかもう一度お墓を移すつもり?死んでも安らかになれない。それがあなたの親孝行?」薄野荊州は彼女を見る目に皮肉を込めて、声を出した。「まあ、鹿児島にいたときは祖父の墓地は環
テレビでは紅白戦が放送されていて、にぎやかな雰囲気だった。それに対して、家がまるで墓地のように寂しく見えてきた。彼女は少しめまいがして頭を振りながら、ソファーに置いたスマホを持ち上げて、薄野荊州に電話をかけた。しばらくして電話がつながった。男の冷たい声が受話器を通して彼女の耳に入った。松本唯寧は首を傾げてソファーに寄りかかった。「荊州、こっちに来てくれないの?私一人ぼっちで、彼女は私の電話に出ないし、きっと私のことまだ憎んでいるから…」話が少し混乱していたが、薄野荊州はなんとなく彼女の話がわかった。ちょっと黙ってから、また尋ねた。「お酒飲んだ?」「うん」「マネージャーを行かせる…」
相手の動きが速くて、彼女に唇に触れる寸前で、薄野荊州は手で遮った。松本唯寧はこれ以上続けなかった。遮られたことであろうと、彼女の自尊心であろうと、このように恥知らずなことを続けるのが許されなかった。アルコールによる勇気がただ一瞬なもので、目の中の曇りがだんだん消えてしまって、明晰に戻った。彼女はこのまま手を隔てて薄野荊州を見つめて、自嘲的な笑いが浮かんできた。「私じゃなくても、彼女とは絶対にだめだ」薄野荊州は彼女を押しのけて立ち上がってから、台所から氷水を持ってきて、彼女に投げた。寒さに震えた松本唯寧は思わず水を横に投げ捨てた。薄野荊州「目覚めた?」「…」「じゃあ、早く寝よう」
江雅子が急に倒れた理由が彼女はやっと分かった。瀬川秋辞はスマホを握りしめて、怒りが心にわき上がってきた。ちょうどこの頃、庭からエンストの音がしていた。佐々木さんがドアを開けようと台所から出てきたが、瀬川秋辞は「佐々木さん、私が行く」と呼び止めた。そう言ったら返事も待たずに、まっすぐ庭に向かって歩いて行った。帰ってきたのはやはり薄野荊州だった。だが、彼は一人じゃなく、側には松本唯寧も一緒だった。手を繋がなくても、二人は肩を並べて歩いていることからして、どう見ても仲の良く親密な恋人同士だった。彼らに向かって瀬川秋辞は大股で歩いて行った。彼女を見た瞬間、薄野荊州は思わずちょっと眉を顰めた。
「おばさんのためなら、謝りに行く私が、最後彼女に会えるかどうかは、あなたに関係なく、おばさん次第だ。もし荊州のことがまだ好きだったら、私は邪魔しないからすぐ離れるよ」と松本唯寧は言った。彼女の目の中にはかすかな得意がにじみ出ていた。瀬川秋辞は微笑みながら、彼女を見ていた。「この人は、教えてないの?私たち今の関係が...兄妹だよ」この前江雅子は彼女を養女として認めたいことがあるが、離婚の後に元旦那と兄妹になるのはいかにもおかしく感じたため、瀬川秋辞に断られた。薄野荊州は視線を取り戻して、無表情で松本唯寧を見た。「ここで待ってろ」部屋のドアが閉まっていなかったため、薄野荊州がまだ入っていな
しばらく黙っていた。彼女は話したかったが、怒りすぎて話もうまく出てこなかった。「薄野荊州、入ってきなさい!」階下の瀬川秋辞も彼女の声が聞こえた。薄野荊州がドアを開けると、目が赤くなって悔しい顔をして、自分を見つめていた松本唯寧を見た。詳しいことを聞いていないで、江雅子は歯を食いしばって先に口を開いた。「彼女と一緒に墓参りに行くの?」男は眉をひそめて、不機嫌そうに松本唯寧を見た。「……ああ」「お正月に女性と一緒に墓参りに行くって、それはどういう意味か、知ってる?」「母さん、なんと言っても、おじさんが亡くなったのは私にも一部の責任があるから。今日は彼の祭日……」「理由がどうであれ、と
松本唯寧はどさっと不安になってきた。今ではネットで彼女は薄野荊州との恋愛関係を炎上していた。このような話題性のあるニュースがあれば、彼女の人気は穏やかになってしまうだろう。しかし今、薄野荊州は声明を公表するように言っていた。主人公が直接にデマを打ち消すように声明を出したら、ある事実も一緒にバレる。つまり、今ネットで二人の幸福を祈っている大勢の人たちが、どう考えてもお金をかけた世論誘導による結果だ。松本唯寧は声を出した。「荊州、このような噂を本当に信じる人はいないよ。そのまま無視しても何日後消えるから。今のところ、声明を出したら、かえって関心を持たせるかも」電話がまだつながっていたため、