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第2話

玲奈はお母さんが私に対して嫌悪感を持っているのを聞いて、微笑みを浮かべた。

少しして、玲奈は顔を上げて、わざと無邪気に質問した。「お母さん、もし私が誘拐されたらどうする?」

その言葉を聞いたお母さんは、すぐに手に持っていたものを置いて、玲奈の前に歩み寄った。

彼女は真剣な顔をして、一言ずつ約束した。

「絶対にそんなことはさせないわ。もし本当にそんなことが起きたら、お母さんは一番に犯人の顔を描いて、必ずあなたを助け出すからね」

玲奈はお母さんの腕を抱きしめて、顔を上げて甘えたように言った。「お母さんは最高!でも、何があっても、お姉ちゃんもお母さんの娘なんだし、今回はお姉ちゃんが嘘をついたことを許してあげてよね?」

彼女の顔は、いつも心からそう思っているように見えた。

三年前、私はとても大切なピアノの大会があった。どうしてもお母さんに来て欲しかった。

私はお母さんに自分の優秀さを見せたかったし、お母さんにも私が役立つことを証明したかった、私は不幸な星の下に生まれたわけじゃないって。

何度も言葉を考え直してから、家に電話して、慎重にお願いをした。

お母さんは了承してくれた。

私は携帯を持って飛び跳ねて喜んだ。

けれど、その日の朝、お母さんから電話があって、来られなくなったって言われた。

「玲奈が病気になって心配だから、その大会は自分で何とかして」

動画の中で、玲奈は顔がちょっと白くなっていて、申し訳なさそうに私を見てる。

「お姉ちゃん、ごめん、ちょっと体調が悪いんだ……お姉ちゃんはいつも一人で頑張ってるけど、私、お母さんがいないとダメなんだ。

お姉ちゃん、頑張ってね!」

私は、子どもと一緒にいる両親を見て、急に涙が出てきた。

両親は花を持っていて、顔には笑顔があふれてる。

それは子どもへの期待と応援だった。

でも、私のお母さんは、私が何の試合に出てるのかすら覚えてない。お母さんにとって、私はずっと大事じゃなかった。

試合が終わった後、私は携帯を取り出して、ちょうど玲奈がタイムラインに投稿してるのを見た。

「実はちょっとした風邪だったけど、お母さんがすごく心配して、ずっと私のそばにいてくれて、本当に幸せ!」

投稿の写真は、お母さんが彼女にスープを作ってくれてる後ろ姿だった。

痛みが波のように押し寄せてきて、心臓にぐっと広がっていった。

玲奈はいつも、私が渇望していた「お母さん」の愛を簡単に手に入れていた。

でも、私は一生懸命頑張っても、どんなに努力しても、少しも私だけの愛情をもらうことができなかった。

私は最初から最後まで、愛されていない人だった。

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