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第8話

動画が終わると、現場はすっかり混乱していて、犯人の残忍さを非難している声が飛び交っていた。

そして、お母さんはただ座ったままで、動かなかった。

まるで時間が止まったみたいだった。

私は苦笑いをしながら頭を垂れた。やっぱり、そういうことだったんだ。

だから、誘拐犯は最初からお金を求めていなかった。お母さんを手に入れれば、復讐が目的だってことか。

この瞬間、私は何とも言えない気持ちだった。悲しさもあれば、どこかでホッとする気持ちもあった。

悲しかったのは、お母さんが私のことを全然気にかけてないこと。

でも、ホッとしたのは、お母さんが来なかったこと。

お母さんは私を愛していなかったけど、仕事に関しては真剣だった。

男の兄貴に絵を描くことを断ったのも、何かしらの理由があったのかもしれない。

私はお母さんを恨んでいたけど、彼女が死ぬのは見たくなかった。

結局、彼女はお母さんなんだから。

どこかで、期待してたんだ。

いつか、お母さんが私を愛してくれるんじゃないかって、ずっと思ってた。

たとえ、ほんの少しでも。

でも、もうそれも無理だ。

......

お母さんは何度もその動画を見返していた。

そして、スクリーンショットを撮って、それを何度も拡大していた。

「理仁だ、復讐に来たんだ!

早く、隊長に捕まえるように指示を出して!絶対に逃がさない!」

私は警察署のベンチに座って、静かにお母さんが忙しくしているのを見ていた。

でも、なんだか胸の中で少し誇らしい気持ちが湧き上がってきた。

さすがお母さんだ。

容疑者を見つけてから、たった1日で捕まえちゃった。

母さんはまた私の前に立った。

優しく私の顔の血を拭ってくれていた。

でも、どんなに拭いても、顔はひどく醜かった。

普段、手が汚れてると家に入れさせなかったお母さんが、

今回は嫌な顔一つせずに、私を抱きしめてくれて。

彼女は私の遺体を抱きしめながら、優しく子守唄を歌ってくれた。

その歌は、私が子供の頃、玲奈の部屋のドアの前で何度も聞いたことがあった。

ずっと願っていた、心の中で何度も望んでいたこと。

今日、やっと叶った。

でも、私はどうしてか、嬉しくなかった……

お母さんは歌い終わると、大声で泣き崩れた。

彼女は私の遺体を抱きしめながら、「和花、ごめんね、お母さんが悪
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