第7話

本来、彼は彼女と結婚するつもりはなかった。しかし結婚した以上、彼女が大人しく言うことを聞いていれば、貧しい出身も気にしなかっただろう。どうせ金は十分あるのだから。

しかし、この女は何度も問題を起こし、今では隠す気すらなくなり、ついに本性を現した！

元々、彼は重荷を下ろしたような気分になるはずだったが、彼女がサインした離婚協議書を見ると、まるで綿を殴るような無力感を覚えた。

紗希の目の奥には悲しみが隠されていた。彼女は気にしないふりをし、最後に去る時でさえ、自尊心を地面に置いて彼に踏ませるようなことはしたくなかった。

詩織は不利だと察して、急いで言った。「紗希、そんなに急いで離婚協議書に署名をしたのは次の相手が見つかったからじゃないの？」

拓海は表情が冷たくなり、紗希をじっと見つめ、審査するような目つきだった。

紗希は拓海の不信感のある表情を見て、負けん気と答えた。「そうよ。新しい人が十分良ければ、前の人なんて忘れられるわ」

男の目に怒りが宿った。「俺の金で生きているくせに、外で男を囲っていたのか？」

紗希は地面の服を見た。「全部返すわ」

彼女は目立たない数着だけを取り、残りのブランドバッグや宝飾品は一切手をつけなかった。

拓海は地面の服を見もせず、彼女に目を向けた。「今お前が着ている服も俺が買ったものだ」

「それも返すわ」

拓海は目が冷たくなり、彼女をじっと見つめた。

詩織は目が輝き、興奮して密かに携帯を取り出し、この素晴らしい場面を撮ろうとした。

紗希はその場に立ち、覚悟を決めたかのようだった。

彼女はゆっくりとシャツのボタンを外し始め、美しい鎖骨と、かすかに見える曲線を露わにした。

男は目を鋭くした、彼女が本当に脱ごうとするとは思ってもみなかった！

彼の顔が青ざめた。「もういい！紗希、お前は俺が出会った中で最もろくでなしの女だ。出て行け、二度と会いたくない！」

そう言うと、拓海は大広間に向かって歩き去った。その後ろ姿は相変わらず冷たかった。

紗希は手が止まり、目に嘲りの色が浮かんだ。脱げと言ったのは彼じゃなかった？

彼女の手のひらは汗でびっしょり濡れていた。さっきは本当に覚悟を決めていたから。

詩織は少し残念そうに携帯を戻し、眉をひそめて高慢に言った。「自分から下賤になろうとして脱ぐなんて、誰かが金を出してくれるかどうかも考えない。そうでなければ、脱いでも無駄よ！生まれが良くないんだから、この人生はおとなしく庶民として生きていけばいい。枝に飛んで鳳凰になろうなんて思わないで」

紗希は汚ビニール袋を持ち、鼻をすすって、生まれながらに運の良い人が羨ましくなった。

彼女は虐められるたびに、家族が天から降りてきて、自分の代わりに仕返しをしてくれる空想をしていた！

しかし、そんな空想はドラマの中だけだと分かっていた。今、家族が見つかったとしても、そんな場面が起こるはずがない。

その時、空からブーンという音が聞こえ、ヘリコプターが威勢よく芝生に着陸した。

ヘリコプターから数人の黒服の大柄なボディガードが降り、威圧的に歩いてきた。

一方、拓海はヘリコプターの音を聞いて大広間の入り口に立ち、黒服のボディガードたちが紗希の前に立つのを目の当たりにした。

黒服のボディガードは恭しく口を開いた。「紗希様、お迎えに参りました！」