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第10話

紗希は養父母を見て、笑顔がすぐに消えた。「あなた達が私の恩人だって?当時私は家で飢え死にしそうだったのに、伯母さんが食べ物をくれたのよ。私を伯母さんに放り投げて、裏で育てていたのもあなた達よ」

伯母は少し驚いた。「どうやってここを見つけたの?私は誰にも言ってないのに」

養母は両手を腰に当てた。「お姉さん、よく言うわね。私達が紗希の養親なのに、あなたがその功績を独り占めするつもり?そうはいかないわ!」

養父は濃い痰を吐いた。「そうだ。紗希の家族はどこだ?こんな高級ホテルに泊まれるなんて、きっと金持ちだろう。俺たちに補償金を払わせろ」

当初拾った子供が、こんなにお金持ちの家庭を持っているとは思わなかった。俺たちの運が開けたぞ。

紗希は伯母を庇い、冷たい目で養父母を見た。「夢でも見てるの?あなた達に1円も払わないわ。当時伯父が喧嘩したのもあなた達のせいで、巻き込まれて事故に遭ったのよ。その上あなた達は借金を返さず、治療が遅れなければ、伯父は植物人間になって病院に寝たきりにはならなかったはずよ」

伯母はこれを聞いて目が赤くなった。そうでなければ、当時紗希も医療費のために、瀕死の男性と結婚する羽目にはならなかったのに。

養父は少し後ろめたそうだった。

しかし、養母は堂々と紗希に手を上げようとした。「くそやろう!あなたは天に逆らうつもりなの、今日はしっかりとお仕置きしてやるわ!」

「誰が俺の妹に手を上げる!」

鋭い声は響いた。

平野は大またで歩いてきて、全身から発せられる威圧的なオーラは少し怖く、さらに後ろには警護の一団が従っていた。

養父母は驚いた。養母は首をすくめた。「私の娘を叱るのに、あなたに何の関係があるの?」

平野は冷たい表情で言った。「彼女は私の妹だ。いつからあんたの娘になったんだ?」

養父は目が輝き、手をこすりながら貪欲そうに言った。「あなたが紗希の家族だね。私たちも彼女を育てるのは大変で、今、少しは経費を出すべきじゃないか? 私たちが育てなければ、彼女はとっくに飢え死にしていただろう」

「いくら欲しいんだ?」

「そんなに多くない。2000万円でいい」

養母は目配せをして、すぐに言い直した。「一億円」

平野は舌打ちした。「一億円は俺の妹の価値に見合わない。少なくとも20億円だ!」

たかが一億円で、誰をバカにしているんだ?

この平野の妹なんだぞ!

この数年、彼らは妹を探すために何百億も使って、妹が見つかりさえすれば、全財産を失っても惜しくない。

養父母は20億円という金額に頭がクラクラした。これは20億円で、一生使っても使い切れないだろう。

紗希は冷笑した。「本当に図々しいわね。20億円も欲しがるなんて!寄付するにしても、あなた達には1円も渡さないわ」

「当時あなた達は彼女を物置に閉じ込めて、食事も与えなかった。私が彼女を見たとき、飢えて息も絶え絶えだったのよ。よくもお金を要求できるわね?20億円だって!恥知らず!」

紗希は伯母の腕を取った。「怒らないで、相手にしなくていいわ」

養父は恥ずかしさと怒りで人を殴ろうとした。「紗希、このバカ娘め!よくも恩を仇で返すな!」

平野はその中年男性を蹴り飛ばし、冷たい表情で言った。「だがこの金は私の妹を育ててくれた人のものだ。お前達に何の関係がある?」

まさかこの養父母がろくでもない人間だった。

紗希は養父が地面に倒れて動かないのを見て驚いた。お兄さんはたった一蹴りで人を蹴り飛ばした。

どうやら兄は少し怖いみたい!

平野は振り返り、優しい口調で言った。「あなたと伯母は先に行って。ここは私が処理する」

「でも...」

「俺を信じろ。以前はお前一人だったかもしれないが、今は兄がいるんだ。いい子だ!」

紗希はまつ毛が震え、心に何かが触れた。これが家族に守られる感覚なのだろうか?

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