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第65話

紗希は何度も電話をかけたが、ずっと誰も出なかった。

彼女はLINEで彼にメッセージを送った。「設計のどこに問題があるの?」

長い間待っても返事はなかった。

すると、あの男が意地悪していると分かった!

でも、この苦情が取り下げられないと、事務所の信用度に影響するので、拓海に苦情を取り下げさせないといけない。

事務所に戻ると、奈美が皮肉っぽく言った。「賞をもらっても、能力がまだ足りない人もいるのね。何せよ設計図を描くのと実際の仕事は違うから。事務所に苦情があると、年末の信用度は確実に下がるわ」

紗希はその言葉を無視して、風間に直接言った。「先輩、この件はすぐに対処する」

「信じているよ。でも紗希、別荘の所有者と何かトラブルがあるの?設計図を見たけど、君らしくない感じだった」

紗希は少し落ち着かない様子で言った。「これはお客様の要望だが、私がそれを勘違いしたのかもしれない」

彼女は自分が意図的にやったことを認めるつもりはなかった。

ただ、彼女は拓海が苦情を出すとは思わなかった。今回は軽率だった。

紗希は一晩中待ったが、拓海からの返事は全然来なかった。

彼女は事務所で新しい設計図を描き直し、拓海にLINEを送った。「午後、別荘に行って新しい設計図を見せるから、何時に仕事終わる?」

拓海は会議中で、携帯を横に置いて、スクリーンが光るたびに手に取って見ていた。

やはり紗希からのLINEだった。

昨日は電話に出ず、LINEにも返信せず、一日中放っておいた。

彼には待つ余裕があるが、あの事務所はその苦情に耐えられないだろう。だから紗希は必ず再び訪ねてくるはずだった。

拓海はそのメッセージを見たが、結局返信しなかった。紗希は何をすべきか分かっているはずだった。

一方、紗希はさらに1時間待ったが、あの男はまだ返事をしなかった。

あれこれ考えた末、彼女はタクシーで新居の別荘に向かった。最悪の場合でも、もう一度修正すればいい。

他の注文には自信を持てないが、拓海の好みだったら誰よりも分かっている。

彼女は慣れた様子で新居の別荘に到着し、インターホンを押しても応答がなかったので、パスワードを試してみると、ドアが開いた。

パスワードが変わってなかった!

紗希は玄関ホールに入ると、そこに何もなかった、すべての装飾が取り外されていて、カーテンさえなかっ
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