第68話

拓海の厳しい視線に直面して、詩織の視線は少し揺れた。「本当にそうなの。信じられないなら由穂に聞いて、彼女はずっとそばにいたから」

拓海は由穂の方を向いたが、由穂は詩織の警告の眼差しに気づき、すぐに頭を下げた。「ご主人様、私は実は台所にいて、何が起こったのかはっきり見ていませんでした」

詩織の目つきが冷たくなった。この由穂は自分の意図に反する発言をした。

詩織はすぐに説明した。「拓海、私は紗希さんが新しいデザイナーだとは思わなかったわ。だってあなたのために何人も見つけたけど、あなたは気に入らなかっただろう。以前、紗希さんは家の改装を担当していたから、彼女のデザインならあなたも満足するんじゃないかと思った。だから勝手に決めてしまった」

拓海は冷たい表情でソファに近づき、そのデザイン図を手に取った。

彼は軽く目を通し、今回はかなり目に入るものだった。

最初のページにある写真壁の注釈を見て、眉をひそめた。「これは何だ？」

「拓海、ここに写真壁をデザインするのはいいと思うんだけど、どう？」

「そこは遺影を飾るのに適している場所だ」

詩織は言葉を失い、最後には無理な笑顔で答えた。「じゃあ、やめておくわ」

拓海はデザイン図を置き、彼女を見上げた。「何しに来たんだ？」

詩織は少し無理な笑顔で答えた。「新鮮な魚介類を買ってきたので、あなたに作ってあげようと思った。おばさんの方にも送っておいたわ」

「必要はない。これからそんなことをしないで」

詩織は2階に上がっていく男の背中を見て、目に不満の色を浮かべた。

彼女は振り返って由穂の前に行き、直接台所に連れていき、平手打ちをした。「さっきの言葉は何の意味なのか？お前は私が何を言っているか分からなかったのか？もし次にこんなことがあったら、お前は終わりだぞ！」

詩織は全ての怒りを由穂にぶつけた！

今日、紗希は彼女に手を出すなんて、絶対にこのままにはしておけない。

——

紗希は家に帰る後、自分の唇の端にも傷があることに気づいた。

伯母はそれを見て心配そうだった。「怪我したの？誰かに殴られたの？」

「違うの、ちょっとぶつけただけ。大したことじゃないわ」

紗希は唇の傷を消毒してから、伯母に向かって言った。「いくつか家を選んだんだけど、伯母はどれがいいと思う？」

「紗希、あなたの平野兄さんは不動産を売る仕事