第69話

紗希は表情が一瞬間に固まった。彼女は今日詩織と喧嘩して、あの女の爪で口角を傷つけられたことをほとんど忘れていた。

「紗希、誰に殴られたんだ？俺に言え、すぐにそっちに行くぞ！」

平野の怒りは一気に燃え上がった。

くそ、誰が彼女の妹を殴ろうとするんだ！

紗希は急いで説明した。「平野兄さん、落ち着いて。誰も殴ってないよ。今日現場を監督してる時に、ファイルを持ち運んでいる時に不注意で口元をぶつけられた」

「本当か？」

「本当だよ。大丈夫」

紗希は兄たちにこんなことを話すつもりはなく、兄たちをこんな事に巻き込みたくなかった。詩織は大京市の人だし、兄たちを攻撃しようと思えば簡単にできるからだった。

兄たちにトラブルに巻き込まれてほしくなかった。

平野もそれ以上聞かなかった。「紗希、本当に誰かにいじめられたら、必ず家族に言うんだぞ、分かったか？」

「分かった」

「紗希、部屋のことは心配しないで。明日見つかったら送るよ。お金は足りてるか？」

紗希は思わず笑いそうになった。「お金はあるよ」

義姉の静香は口を開いた。「紗希、私はあなたが伯母のために病院の近くの部屋を買おうとしているのを知っていたが。でも、環境のいいところは安くないわ。私たち6人でお金を集めたから、あなたはまず部屋を買って、将来稼いだら私たちに返すのも同じだよ。買うなら、良い部屋を一気に買った方がいいわよ」

紗希は少し迷ったが、義姉の言葉はとても彼女の心を動かした。

平野は勢いに乗って言った。「紗希、受け取れよ」

紗希は頷いて同意した。「分かった。私は頑張って稼いで早く返してくれるよ」

紗希は兄嫁と少し話してからビデオ通話を切り、少し興奮した気持ちでいた

彼女は洗面所で鏡を見ながら、口角に触れ、実は頭皮が一番痛かった。

でも詩織もあの小娘も良い思いはしてないはずだった。彼女が掴んだ分、詩織はあとでひどい目に遭っただろう。

彼女は鏡を見て笑顔を浮かべた。「頑張って稼いで、新しい部屋を買う」

翌日の午後、紗希はLINEで平野から部屋の情報を受け取った。不動産屋から来たものよりずっと良く、価格もやすい。

紗希は興奮して兄に電話した。「この部屋の情報はどこから来たの？」

「えーと、青阪市で家を売ってる知り合いがいて、こっそり勧めてくれた。そしてこの家の取引も彼が担当するよ」

「あり