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第186話

とにかく紗希は、詩織には永遠に及ばないのだった。

——

渡辺グループを去った後、紗希は振り返ってその立派な高層ビルを一目見てから、その場を離れた。

夜、家に帰ると、伯母は彼女の手を取って言った。

「紗希、良い知らせがあるわ。私たちの古い団地が取り壊されるかもしれないの」

「取り壊し?本当ですか?」

紗希はあの場所が取り壊されるとは思わなかった。

これは運が向いてきたと言えるのだろうか?

彼女がお金を最も必要としている時に、立ち退き対象になるなんて。

伯母も興奮していた。

「本当よ。私は今日わざわざ戻って近所の人たちに会ってきたんだ。区役所の人も来て、数日後に戻って、会議に参加して意見を述べるように言われたわ。立ち退きには二つの選択肢があるらしいわ。一つの選択は新しい家をもらう、もう一つの選択は現金をもらう」

紗希は伯母の手を握りしめた。

「良かったです。どちらを選ぶか、その時にじっくり考えましょう」

「紗希、あなたの養父母は遅かれ早かれこのことを知るに違いない、また大騒ぎになるだろう。早く兄たちに連絡して、誰か暇があればこっちに来るように頼む方がいいわ。そうでないと養母が実家の人たちを集めてこっちに来て私たちをいじめてくるかもしれない」

伯母は長年、立場が弱くていじめられてきたので、今度こそはと立ち上がって立ち向かいたいのだろう。

その時、紗希の6人の兄が来て後ろ盾になれば、恐れて反抗してくるものはいない。

紗希は伯母の意図を理解し、頷いた。

「はい、後で兄たちに話してみます」

夕食後、紗希は身支度を整えてベッドに横たわり、LINEでの家族グループで古い団地の取り壊しについて報告した。

静香は最初に返信した。

「立ち退きは良いことじゃない。紗希は運がよくて福がついてるわね」

平野もも乗っかってお世辞を言った。

「うちの紗希は幸運の人なんだ。最近俺がたくさんの家を売れたのはきっと紗希のおかげだよ」

すぐに他の兄たちも加わり、お世辞の嵐が吹き荒れた。

紗希はこれらのメッセージを見て、思わず苦笑いした。

「それが重要なことじゃないんです。重要なのは、養父母がこの事を知ったら必ず面倒をかけに来るということ。それで、兄たちに時間があるかどうか聞きたくて、見張ってくれるかどうか確認したいです」

平野:「もちろん行くさ。どうせこ
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