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第110話

しかし次の瞬間、再び詩織からメッセージが届いた。その内容を見た後、彼は寝室を出て行った。

紗希は彼が寝室を出て行ったことに気づき、ゆっくりと目を開けた。その目には皮肉の色が満ちていた。

彼女は自分のお腹を撫でて、気持ちを整えてすぐに眠りについた。

翌日、紗希は家に戻って荷物をまとめ、学校への入学手続きに行く準備をした。

伯母は心配そうに彼女の手を取って言った。「本当に寮に住むの?毎日帰ってきてくれれば、おいしい料理を作ってあげられるのに」

「私はもう子供じゃないから、自分のことは自分でできます」

紗希は絶対に寮に住むつもりだった。そうしないと、渡辺家に住んでいることを伯母に知られたら、絶対に心配するし、もしかしたら兄の前でばれてしまうかもしれない。

彼女は余計な問題を起こしたくなかった。どうせ一週間後におばあちゃんの手術があるのだから。

この一週間の芝居が終われば、彼女は安心できるだろう。

紗希がスーツケースを持って出かけようとした時、北がドアを開けて入ってきたのを見た。北は彼女の手のスーツケースを見て、ようやく理解した。「紗希、今日入学なら、どうして私たちに一言も言わなかったの?学校まで送ってあげられたのに」

「北兄さん、あなたたちはいつも仕事で忙しいから、入学式なんて大したことじゃないと思って言わなかったの」

北は彼女のスーツケースを取り、彼女の頭を撫でた。「仕事がどんなに忙しくても、お前を学校に送る時間はあるよ。さあ、行こう」

紗希は北の目の下のクマを見て、北が明らかに徹夜明けで、手術から戻って休みの準備をしていたと察した。 彼女は断っても無駄だとわかっていたので、早めに学校に送ってもらって、北兄を早く帰らせて休ませようと思った。

二人は一緒に学校に行った。

北は車を運転している間、携帯電話が何度か鳴った。その発信者は詩織だった。北は何気なく電話をサイレントモードに切り替えた。

紗希は助手席に座って尋ねた。「北兄さん、最近忙しいの?」

「私が暇なときがあるかどうか聞いてみたら?」

北は運転しながら言った。「紗希、安心して学校に行きなさい。仕事のことも、学費や生活費のことも心配しなくていいからね」

「分かった。今、私はスタジオでアルバイトしているから、毎月収入もあるし、そのお金は学校での費用には十分だよ」

北は少し息を吐き、
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