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店員と常連客-04

last update Last Updated: 2024-12-10 18:14:24

紗良は海斗の叔母にあたる。

今から二年前、海斗が二歳のとき、海斗の家族は交通事故に巻き込まれて亡くなった。海斗も事故に巻き込まれたけれど奇跡的に助かって、けれど海斗はひとりぼっち。

海斗の母親の実家――、つまり紗良の母は、早くに離婚して一人で暮らしており持病持ち。父親の実家は遠く離れているし両親は高齢。

そのため海斗を育てる環境がなく必然的に施設へ預けるように話は進んでいったのだが。

まるで邪魔者扱いのように話される会話が紗良にはどうしても納得できなかった。

紗良の姉はよく海斗を連れて実家に遊びに来ていたため紗良とも日ごろからよく交流があったし、海斗も紗良に懐いていた。

だから紗良はその場の勢いと怒りで「私が育てます」と引き取って、今に至る。

紗良の考えが浅はかだったことは否めない。

一人で初めての子育てはあまりにも無謀すぎたけれど、紗良の気持ちを汲み取った母が一緒に育てると協力を申し出てくれたおかげで、今はどうにかこうにか暮らしていけている。

紗良が子供の頃に両親は離婚していて、さらに母は数年前に脳梗塞を患っている。そのため持っていた運転免許も返納済みで定期的に通院もしているからあまり母には負担をかけさせられない。

とはいえ、子育て未経験、ましてや出産未経験の紗良にとって、海斗の子育ては未知との連続だった。

母がいなかったらとっくに音を上げていたに違いなかった。

「明日はプール教室だから、お昼は外で食べてくるね」

「わかったわ。海ちゃんプール楽しそうね」

「お友達と行ってるから楽しいみたいよ」

保育園で知り合ったママ友から誘われて、海斗は四月からプール教室に通い始めた。

年中から通えるプール教室はまだほとんど水遊び程度。けれど楽しそうにしている姿を見ると、やらせてあげてよかったなと紗良は嬉しくなる。

一通りの家事を終え明日の準備を整えて、ようやく紗良も寝室へ入った。

隣でぐーすか寝ている海斗の寝顔はやっぱり可愛い。

自分の子供ではないけれど、もう二年も一緒に生活しているのだ、可愛くてたまらない存在には違いない。

海斗の寝息を聞きながら、紗良もすぐに眠りに落ちた。

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  • 泡沫の恋は儚く揺れる〜愛した君がすべてだから〜   番外編① 泡沫の恋心-04

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