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第5話

琴美の顔色が変わり、怜司も立ち上がった。

場の空気があまりにも緊張しているように感じた私は、軽く笑ってステーキを一口切り取って食べながら言った。「冗談だよ」

琴美はホッとため息をつき、周りの人たちも徐々に場の雰囲気を和らげ始めた。

私はスマホを確認し、そろそろ時が来たと思い、提案した。

「このホテルは、私たちが契約した『飛鳥グループ』が所有しているんだけど、聞くところによると、藤田たちが大きなプロジェクトを獲得したお祝いで、今夜ここで祝賀会を開いているみたい。隣の部屋だよ。早川さん、顔を出しておけば、プロジェクトのスタートに向けていい準備になるんじゃない?」

私は余裕の笑みを浮かべながら琴美を見た。彼女の顔には硬い笑みが貼りつき、どうしていいか分からない様子だった。

すると、怜司が私を助ける形で口を開いた。

「琴美、このプロジェクトをまとめたのは君なんだから、顔を出しておいても損はないだろう」

琴美は私を鋭く睨みつけ、引きつった笑みを浮かべながら言った。「彼らは彼らの祝賀会を楽しんでいるんだから、今行って邪魔するのは良くないわ。プロジェクトが始まる前に挨拶に行けば十分よ」

彼女がそう言い終わると、包厢のドアがノックされ、現れたのは藤田だった。

藤田は丁寧に頭を下げながら、プロジェクトの責任者に会いたいと言い、私たちを邪魔していないか気遣った。

怜司はすぐに立ち上がり、琴美を紹介した。琴美も仕方なく前に出て挨拶した。

藤田は少し困惑した表情を浮かべながらも礼儀正しく応対した。

しばらく社交辞令が続いた後、藤田はとうとう少し苛立った様子で尋ねた。「プロジェクトの責任者はどこ?今日来ていないの?」

皆が顔を見合わせる中、琴美の顔は真っ青になっていた。

怜司は眉をひそめて答えた。「こちらが責任者だ」

藤田は一瞬驚いた表情を見せ、すぐに笑い出した。「そうじゃない。会いたいのは、貴社の元社長、秋川青山の娘で、このプロジェクトを実際にまとめた人物、秋川夕子だ」

部屋中がどよめき、全員の視線が一斉に角に座っている私に向けられた。

私は立ち上がり、藤田に礼儀正しく握手をした。「叔父さん、お久しぶり」

藤田は私の肩を優しく叩きながら、感慨深そうに言った。「この数年、うちの会社はずっと海外で活動していて、あなたたちのことはあまり分からなかったけど、ま
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