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第3話

両親は早くに亡くなり、私たち二人はお互いに支え合って成長してきた。妹は私にとって、まさに手のひらの中の宝物だった。指先を少しでも切ってしまえば、私はそれだけで何日も心配してしまうほどだった。

それなのに、私が愚かだったのは構わない。しかし、よりによって中村直樹を紹介してしまい、結婚させるなんて!

結局、私たちは全てを捧げ、真心を注いで、新しい命のため身を削って育んだのに、全てがこの二人の男たちが佐藤唯の不安を煽るための道具に過ぎなかったんだ!

「......ふふっ......」

妹が突然冷たい笑い声を漏らし、その後の嗚咽はさらに激しくなった。

私は顔を上げると、彼女がスマホを手にしているのが見えた。

そこに映っていたのは、一枚の写真だった。

高橋翔太は上半身裸で、引き締まった腰にロープを巻いていた。

その腕の中には、しっかりと抱きしめられた佐藤唯がいた。彼女は彼の胸に顔を埋め、守られるようにして地面に降り立っていた。そして、一人の警察官の制服を着た中村直樹が慌てて二人の元に駆け寄る姿が写っていた。

まさに、物語の一幕のように切り取られた瞬間だった。

佐藤唯は、どんな恐怖に襲われても、必ず騎士に守られるお姫様のようだった。

そう、これは彼女が今投稿したばかりのツイートだった。

しかも、そこにはこんな意味深なキャプションまで添えられていた。

「もしもう一度チャンスがあるなら、消防士か警察官......どちらを選べばいいのかな?」

コメントも大盛り上がりだった。

「子供じゃあるまいし、選ぶ必要なんてないよね!大人の私は全部欲しい!」

「もうやめて、バッドエンドの展開は耐えられない!キャプションだけで1万字の悲劇が頭に浮かんできた!」

「執事さん、5分以内にこの3人の結婚式を用意してくれ!」

私は苦笑しながら、胸の奥がさらに痛んだ。

なぜなら、写真の中で佐藤唯が首にかけていたネックレスのペンダント、その指輪が高橋 翔太と中村直樹の結婚指輪と、ペアのデザインだったからだ。

「私はね、結婚式で4人の指輪が同じデザインだったのは、みんな仲が良い証だと思ってた

でも、私たちの指輪も実は男物だったなんて。

お姉ちゃん、これって、あまりに馬鹿げてない?」

妹の涙がまた一粒、ぽろりと落ちた。声は悲しさで震えていた。

私は体を起こし、彼女のスマホを取り上げた。

そして、昔のように彼女の隣に寝転び、そっと背中を撫でながら言った。「もういいから、こんなこと考えないで。今は体を大事にすることが一番大切だよ。早く見切りをつけたほうが、長く苦しむよりずっといいんだから」

そう言えば言うほど、自分の声もだんだん詰まってきた。

何のためだろう?

結婚前、私も妹も佐藤唯の存在なんて知らなかったのに、どうしてこんな酷い目に遭わなきゃいけないの?彼らの「プレイ」に巻き込まれる一部にされるなんて!

もっと馬鹿げているのは、私も同じように高橋翔太にブロックされていたことだ。

「お姉ちゃん、私たちって、どれだけ嫌われてるんだろうね?

まるで疫病みたいに避けられてる......」

数日間休んだおかげで、妹は少し元気を取り戻していたが、その瞳には涙が溜まり、冗談めかしても自嘲が滲んでいた。

「心配しないで。絶対に方法を見つけて、ここを出よう」

好きなように生きよう。もう男なんかいらないし、二度と子供も産まない......」

私は心が締め付けられるように痛み、妹の髪を優しく撫でながら、声を詰まらせた。

あれこれ考えた結果、弁護士に離婚を委任するのが一番確実な方法だと思った。これなら、高橋翔太たちも、私たちが本気で離婚を望んでいることを理解するだろう。

私たちが「無茶を言っているだけ」なんかじゃないってことを。

しかし......

「川崎さん、すみませんが、今回の依頼は受けられません!

どんな男を相手にしてるんですか?まともな言葉一つ言えないんですかね。あなたたちが依頼人だと分かった瞬間、まるで狂犬みたいに椅子を蹴り壊してましたよ!

こんな奴が公務員だなんて、土匪か暴徒の間違いでしょ!

すでに費用は返金しましたので、もうお引き取りください!」

弁護士は怒りをぶちまけると、そのまま電話を一方的に切った。

すぐに、再びスマホが鳴った。

なんと、あの高橋翔太が私をブラックリストから外して連絡してきたのだ。

「川崎遥、お前、もうちょっと正気にできないのか!?なんでお前をブロックしたか、自分で分かってないのかよ!

世の中の女がみんなお前たちみたいに嫉妬深かったら、いっそのこと全員死んじまえってんだ!

よくもまあ、弁護士まで使って俺と直樹の職場で騒ぎを起こせたもんだな!

俺たち、前世でどれだけ悪いことをしたら、お前ら姉妹みたいなのを嫁にもらう羽目になるんだ!」

相変わらず、ありったけの侮辱の言葉をぶつけられた。

私は悔しさで歯を食いしばり、今にも噛み砕きそうなほどだったが、思わず笑ってしまった。「ふふ......」

怒りが頂点に達すると、人は笑うんだって、本当にあるんだな、と思った。

私が笑ったのを聞いて、高橋翔太はさらに苛立った。「何笑ってんだよ!お前、妊娠してるからって、俺が本当に離婚しないと思うなよ!」

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