第8話

中村翔太は遺体化粧師の仕事を辞めたものの、中村グループに入ることに消極的だった。中村翔太の母は心配でたまらず、未来の嫁の本田楓を呼び出した。

本田楓が中村翔太の部屋に入った瞬間、翔太はまるで敵を見るかのように彼女を見つめた。

なんて皮肉だろう。かつて彼は私にも同じような態度を取っていた。

本田楓は鼻を覆いながら、信じられないといった表情で二つの木彫りを見て言った。「翔太、あなた......」

翔太は苛立って言葉を遮った。「大人の世界では、3日以上連絡を取らなかったら、それはもう別れたってことだ。私たちはもう1ヶ月以上も前に別れたんだ。何しに来たんだ？」

中村翔太は一歩横に移動し、本田楓が木彫りを探ろうとする視線を遮った。「出て行け」

本田楓は悔しそうに涙を流しながら言った。「どういうつもりなの、メッセージを送ったり電話をかけたりしても無視するなんて信じられないわ。お父さんもお母さんも、あなたに家業を継いでもらいたいのよ。どうしてそんなに落ち込んでいるの？」

「君がここで僕に説教する資格はない、君は何様だ？」

　本田楓は怒りに任せて中村翔太を殴り、目を真っ赤にして言った。「あなたは本田千鶴と離婚したら私と結婚すると言ったじゃない。どうしてこんなことができるの。私は本田家の一人娘なの、ちゃんと見てよ。本田千鶴も中村優斗も、あいつらは同じような偽物なのよ。私たちの人生の前半を盗んだんだ！」

「翔太、私の元に戻ってきて。私たち本田家と中村家は権力と財力があり、力を合わせればもっと強いじゃない？もう一度考えてみてよ」

中村翔太は苛立たしげに言葉を遮った。「出て行け。僕ははっきりしたんだ、僕が愛しているのは本田千鶴だ。彼女は偽物なんかじゃない、彼女は僕の妻だ」

本田葵は泣き笑いして「いいよ」と言った。

彼女が諦めたのかと思ったその瞬間、彼女は駆け寄って二つの木彫りを倒し、ポケットから灯油とライターを取り出して火をつけた。

中村翔太は狂ったように廊下に駆け込み、消火器を持ち出したが、火を消したときには、すでに木彫りは原形をとどめていなかった。

本田楓は嬉しそうに翔太を見つめた。「これらはすべてお母さんの指示よ。今のあなたのすべては中村家が与えたものだ。何が不満なの？あんな死体みたいな木彫りを守るなんて信じられないわ」

中村翔太は地面にひざまずき、頭を