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第6話

中村翔太の助手が慌てて彼を支え、蛇口をひねってを彼の手を洗い始めた。助手は上司に電話をかけ、次の血液採取やガスの抽出、消毒防腐剤の注入のために別の遺体化粧師を手配するよう申請した。

中村翔太は大の男なのに、まるで涙が止まらないようだった。

徹夜した祖母は椅子にもたれて目を閉じて休んでいたが、中村翔太が出てくると、指を震わせ、顔には憎しみが満ちていた。「なぜあんたがここにいるの?顔向けできなくて千鶴と葵に化粧するのをやめたのね?」

中村翔太は顔に後悔の色を浮かべ、泣きながら祖母に何度も謝った。

祖母も泣きながら、激しく息をついた。「ごめんね。ごめんねって何の役に立つの。警察は事件現場にいた中村優斗の部下から、葵が音声通話であんたに助けを求めたんだ。それなのに、あんたは千鶴が穂穂に言わせたって言ったことを知っている。

あんたに言ったわ、私の孫娘があんたを取り戻そうとしたのは子供のためだったって。彼女はあんたが本当の御曹司か偽の御曹司かなんて気にしてなかった。今やっと望みが叶ったわね、千鶴を捨てて本当のお嬢様を探した。

今は誰もが千鶴をいじめに来る。中村優斗という薬物中毒者までが千鶴を攻撃しに来た。でも中村優斗とあんたたち中村家の因縁は千鶴には何の関係もないわ。中村優斗の彼女を奪ったのはあんたであって、千鶴じゃない!

千鶴と葵はもういない。彼女たちは何度も刺されたのよ。もしあんたが電話を受けてすぐに駆けつけていたら、彼女たち母娘は無念のまま命を落とすことはなかったのに」

祖母は一気に私のために言葉をまくし立てた。

中村翔太は体全体が震えていた。

彼は泣きすぎて声がかすれていた。「ばあちゃん、千鶴には本当に申し訳ありません。千鶴の代わりに孝行して、ばあちゃんを養います」

祖母は軽蔑したように言った。「国が毎月私に年金をくれるから、あんたに養ってもらう必要はない。

それに、あんたが少し恩を施すだけで私が受け入れると思うのか?千鶴に対してもそう思っていたんだろう。あんたたちは彼女を『偽の令嬢』と侮辱して、欲深くて徳がないと嘲笑していた。

中村翔太、あんまり人をいじめないでください。

千鶴には元々悪いことを何もしていなかったのに、どうしてそこまでいじめるの、どうしてなの!」

そう言い終えると、祖母は苦しそうに目を閉じ、涙が静かに流れ落ちた。

中村翔
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