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第5話

健二は警察署に行き、私の失踪届を出した。

「奥さんが失踪してからどれくらい経ちますか?」

警察は彼に尋ねた。

健二はドレッサーに畳まれた私の仕事着を思い出した。

「たぶん日曜日に失踪したと思います」

「たぶん?日曜日?今日は水曜日ですよ。そんなに時間が経ってるのに、どうして今になって届け出たんですか?」

警察の言葉は健二の胸に突き刺さるようだった。

「最後にどんな服を着てましたか?どこへ行ったか分かりますか?」

何を聞かれても、彼は「わからない」と首を振るしかなかった。

彼には本当に何も分からなかった。

私が家から出たから、一度も私を探そうとしなかったからだ。

その後、私の母親と健二の母親が私の失踪を知り、警察署に駆けつけてきた。

彼女たちは、彼よりも多くのことを知っていた。

「心寧を最後に見たのは土曜日よ。その日は、私が転んで、あの子が急いで病院に連れて行ってくれたの」

「母さん、どこを怪我したんですか?どうして僕に言わなかったんです?」

健二は母親の言葉を聞いて、慌てて尋ねた。

「心寧は、あんたが忙しいから言わなかったんだよ。私もお義母さんも具合が悪い時は、いつも心寧が病院に連れて行ってくれていたんだよ。ここバカ息子、心寧見つからなかったら、私を母親だなんて呼ばないでよね!」

彼の母親は彼をきつく睨んだ。

実の母親にそう言われ、健二は恥ずかしそうにうつむき、顔が熱くなるのを感じた。

彼は、私がこれほど多くのことを背負っていたことに気づいていなかった。

「母さん、心配しないでください。必ず心寧を見つけます。それに、実は心寧が妊娠していたんです」

その言葉を聞いた私の母親と彼の母親は、驚きと喜びで手をぎゅっと握りしめた。

警察も、私が妊娠していたことを手がかりに捜査を始めた。

しかし、日が経つにつれて、私の行方は一向に掴めなかった。

公共交通機関を利用した記録もなく、私はまだこの町にいると推測されていた。
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