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第7話

健二は、すぐに警察が自分にやってくるだろうと感じていた。

だから警察が来る前に、早く私を見つけなければならない。

その日、彼は実験室で助手と会った。

助手は、彼を見て何かを思い出したように言った。

「力田博士、奥様が前にあなたに鶏スープを持ってきてくれたんですが、彼女は何かを見てしまったようで、そのままスープを私に渡して行ってしまいました」

「そのスープ、私が飲んだんだけど、本当に美味しかった」

助手は頭を掻きながら続けた。

「奥様にそのスープはどうやって作るのか教えてほしいんです。彼女に作ってあげたいので」

助手の言葉を聞いて、健二は思い出した。

私と彼が大喧嘩をして、家から出て行った後、実は一度だけ実験室に来たことがあった。ただ、その時彼は明菜と話していて、私に構ってくれなかった。

彼は急いで実験室の監視カメラの映像を確認した。

映像には、日曜日の夜に私が彼の実験室を訪れた様子が映っていた。

その朝、彼はオンライン会議中だ。会議が終わると、明菜が自ら彼を食事に誘いに来た。

助手は私が彼を訪れたことを伝えたが、彼はそのことを気にせず、逆に明菜と楽しそうに会話をしていた。

監視映像には、私がスープジャーを持って静かに明菜と健二の会話を見ている姿が映っていた。

その後、私はスープジャーを助手に渡し、振り返って立ち去った。

そして、明菜は私の去った方向を追いかけてきた。

健二は映像を見終わり、考え込んでいた。

彼はその日の状況を思い出し始めた。もともと、明菜は彼と一緒に食事に行く予定だったが、突然電話がかかり、急いで出て行った。

監視映像を見ると、彼女が去った方向は私と同じだった。

健二は、もしかしたら明菜が私の居場所を知っているのではないかと考え始めた。

そう思いながら彼は明菜を探しに行こうとしたが、警察が先にやってきた。

二人の警官が手帳を見せて、こう言った。

「力田健二さんですか?今、あなたが一件の殺人事件に関与している疑いがありますので、署に来てもらえますか?」
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