第60話

　その恐ろしい光景を想像して、桃は自分がイライラしそうだと感じた。「その分野の経験がないので、お義父さん、ご迷惑をかけたくないです…」

　彼女が断ろうとすると、永名は急いで言った。「心配しないで、何かわからないことがあれば学ぶことができる。雅彦が教えてくれるし、そして、給料については、今の仕事の三倍でどうだ？」

　これで桃は本当に困ってしまった、どうして断ればいいのか分からなかった。

　永名の言葉はとても真剣で、給料なども考えてくれている。もしこのまま言い訳ばかりしていたら、ちょっと気まずくなるかもしれない。

　桃は仕方なく、雅彦に助けを求める眼差しを送った。

　彼女は、雅彦が自分に対して抱く嫌悪感を考えれば、24時間一緒にいたいとは思っていないはずで、もし彼が言ってくれれば、永名も再考してくれるだろうと考えた。

　雅彦が桃のウインクを完全に無視した。「この件に私は異存はありません。おっしゃる通りにします」

　桃はショックで目の前が真っ暗になりそうだった。この雅彦、一体何を考えているのか？

　彼女が困った顔をしているのを見て、雅彦は朝早くから振り回された気持ちが少し和らいだ。

　「早く朝食を取って、少し後出発しよう」

　雅彦は口元をかすかに上げて、そう言って立ち去った。

　桃は仕方なく、永名がとても喜んでいる顔を見て、彼の気持ちを無駄にするのも気が引けて、仕方なく従うことにした。

　朝食を済ませた後、桃は雅彦について車に乗り込んだ。

　朝から色々考えた末に、彼女はもう運命を受け入れることにした。どうせ変えられないのだから、受け入れるしかないのだ。

　唯一の慰めは、給料が大幅に上がったことだ。お金の面では何の損もない。

　そう考えると、桃の気持ちも少し楽になった。せめてお金を貯めるつもりでここに来るんだと思えばいい。雅彦が何を言おうと、気にしなければいいだけだ。

　雅彦は車を運転しながら、桃の表情が何度も変わるのを見て、微妙に眉をひそめた。

　この女、一見平凡な仕事にそれほど執着するなんて、足を引きずってでも行こうとするなんて。

　今では、彼の助手になることをまるで死刑宣告を受けたように感じている。

　彼女は知っているのだろうか？毎年どれだけの名門大学の卒業生が菊池グループで働くことを望んでいるのかを。

　「先に言っておくが、お