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第469話

雅彦はそれを聞いて、すぐに口を開いた。

「僕も一緒に戻る。この件、僕がきちんと説明する」

桃は腕を抑えていた彼を一瞥した。以前なら、彼のこうした姿を見て少しは心が動かされたかもしれない。

しかし、今の彼女の心は鋼のように固く、微塵も揺るがなかった。

「そんなふりはやめてよ。あんたとあんたの母親はグルなんでしょ?今回はたまたま彼女が悪役を引き受けただけで、本当はあんたがやりたいでしょ?直接手を出さないだけでしょう」

桃は雅彦を鋭く皮肉ってから、振り返り、ためらうことなく立ち去った。

雅彦の顔は灰色がかったように青ざめ、桃の態度はまるで自分が彼女の最も憎む仇のようだった。

いつの間にか、二人の間はこんなにも遠くなってしまったのかと、雅彦は悲しさを感じたが、それでもすぐに後を追った。

一方

翔吾を連れ去った者は、菊池家が手配した専用機に乗り、直接美穂のもとへ翔吾を届けた。

美穂は翔吾が連れてこられたのを見ると、すぐに小さな体を抱きしめた。その顔が雅彦の幼少時代と7、8割似ていたのを見て、しばらくぼんやりとした表情になった。手を伸ばし、翔吾の頬を何度も撫で、夢ではないかと確かめるかのようだった。

永名もまた、翔吾をじっと見つめ、心の中で血縁の不思議さを感じていた。この子供は一目見ただけで、菊池家の者だと分かった。

「僕にも抱かせてくれ」

永名は手を伸ばし、孫を抱こうとしたが、美穂は鋭く彼を見つめ、「触らないで!」と警戒した。

彼は彼女の様子を見て、内心ため息をつかずにはいられなかった。

どうやら、昔失った子供の痛みが彼女の中で深い傷となっており、彼女は翔吾をあの時失った赤ん坊の代わりに見ているようだった。翔吾を連れ戻すことが彼女の心の傷を少しでも癒やすことになるのか、それは彼にも分からなかった。

美穂は翔吾を抱きしめてずっと見つめ続けていたが、しばらくしても小さな彼は目を覚まさず、そのまま眠り続けていた。彼女は焦りを感じ、

「どうして起きないの?彼の体に何か問題でもあるの?」

と問い詰めた。

「彼を目立たずに式場から連れ出すために、少し眠り薬を使っただけです。普通ならそろそろ目を覚ますはずなんですが」

美穂はその言葉に眉をひそめ、怒りを抑えきれなかった。

「薬のせいで、彼の回復したばかりの体をまた悪くしたの?」

それを見た永名はす
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