第200話

美乃梨の気遣いに、桃は心が温かくなった。「ううん、仕事探しは順調だったよ。それに、この会社は寮も提供してくれて、会社に近くて便利なんだ。今、寮にいるの」

美乃梨を心配させたくない桃は嘘をついた。

今の状況は複雑で言いづらく、どう説明すればいいのかもわからなかった。

「本当？それは良かったね。じゃあ、仕事を頑張ってね。週末にまた会って、一緒においしいものを食べに行こう」

美乃梨は特に疑うこともなく、桃が満足のいく仕事を見つけたことを喜んでいた。

二人は少し話を続けてから電話を切った。

桃は携帯を置き、顔の笑みはすぐに消えた。

雅彦に接近することはできたが、彼の行動を知るための情報が必要だった。そうでなければ、歌が黙っているはずがなかった。

しかし、どうすればいいのか。雅彦はまだ怒っているだろうし、彼が教えてくれるかどうかもわからなかった。

不安を抱えながらも、桃は思い切って雅彦に電話をかけた。

雅彦は清墨に会いに行く途中だった。

今日の出来事で、雅彦の胸には憤りが溜まっていた。

あの女は以前のように逃げ出そうとはせず、むしろ近づいてきたが、彼は少しも喜びを感じず、ただイライラしていた。

電話の着信音が鳴り、桃からの電話だとわかった雅彦はさらに苛立った。

電話に出ると、不機嫌そうな声で答えた。「何の用だ？」

「今夜帰ってくるのか聞きたくて。夕食の準備をしようと思って」桃は慎重に尋ねた。

雅彦は眉をひそめた。この女は以前、料理を作ったことなどなかった。今になって離婚してからこんなことを言い出すなんて。

「必要ない。今日は忙しい」雅彦は冷たく答えた。

「そう。じゃあ、海にあなたのスケジュールを渡してもらえないかな？いつ帰ってくるかわかるように」

桃の媚びたような口調に、雅彦はますます気分が悪くなった。

こんな桃に彼は見慣れず、むしろ以前のように喧嘩したほうがましに感じた。

「離婚した途端、随分と賢くなったな。海にスケジュールを送らせるが、余計な期待はするな。何をしても、僕はお前が好きにはならない」

そう言って電話を切った。

雅彦の言葉に、桃は悲しげな表情を浮かべた。

これらの言葉は主に雅彦の行動を知るためのものだったが、彼の態度は彼女を傷つけた。

彼らの間には、もう可能性はないのだと感じた。

海は会社で仕事をしていたが、雅