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第98話

琴音の声は、少なくともその場にいた将軍たちと玄甲軍には聞こえていた。

琴音は自らを率直だと自負し、人前でも遠慮なく物を言った。

しかし、この言葉は、もともとさくらを軽蔑していた人々の蔑みをさらに強めることになった。

議論の声は次第に罵声へと変わり、さくらに向かって押し寄せた。

沢村紫乃たちは顔を青ざめさせ、軍規に縛られていなければ、すぐにでも琴音に人としての道を教えてやりたいところだった。

さくらを見ると、さらに腹立たしかった。相手がここまで挑発しているのに、彼女には怒りの色が全くない。平然とした表情で琴音を見つめ、まるで口の利けない瓢箪のように、一言も言い返さなかった。

さくらは確かに何も答えず、表情さえほとんど変えなかった。ただ、瞳の色だけが一層深くなった。

「上原さくら!」影森玄武は尾張拓磨の手から長い棒を取り、さくらに投げた。「桜花槍は使うな。この木の棒を使え」

さくらは片手で棒を受け取り、桜花槍を玄武に投げ返した。彼を深く見つめ、「はい!」と答えた。

彼女は北冥親王の意図を理解していた。刃物は危険で、一旦深い恨みを抑えきれなくなれば、桜花槍が琴音の首を狙うかもしれない。

一方、琴音は深く侮辱されたと感じ、冷笑した。「棒だって?いいでしょう。そんなに自信があるなら、容赦しないからね」

少しでも高潔であれば、さくらが武器を使わないのを見て、自分も剣を捨てて木の棒を使うべきだった。しかし、彼女には失敗の余地が全くなかった。失敗すれば払う代償があまりにも大きすぎた。

これが彼女とさくらの違いだった。二人の間には、階級の不公平が存在していた。

最初から不公平があるのなら、剣で木の棒に対するのも問題ないと琴音は考えた。

広大な砂漠に一筋の煙が立ち昇り、夕陽が地平線に沈みゆく。茜色に染まった空が、まるで大地の血を吸い込むかのようだった。

篝火がすでに点されていた。四方の篝火は血に染まった夕暮れの下では、それほど目を刺すような輝きではなかったが、中央に立つ二人の姿をはっきりと見せるには十分だった。

多くの人々が、これが高度な技を競い合う華麗な一戦になることを期待していた。

また、琴音将軍が上原さくらを打ちのめし、武具を投げ捨てて地に膝をつき、玄甲軍を両手で差し出すように懇願する姿を期待する者もいた。

北條守も少し緊張した様子だった。さく
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