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第100話

琴音は血を吐いた。あの一蹴りで内臓がずれたかのようで、しばらく声も出せないほどの痛みだった。

顔色は灰白で、無意識に手を伸ばして首筋に触れると、指に血が付いた。全身が制御できないほど震えていた。恐怖からではなく、この結果を受け入れられなかったからだ。

彼女は信じられない様子でさくらを見つめた。こんな武芸は生まれて初めて見た。

どうしてさくらがこれほどの武芸を身につけているのか?以前、さくらが和解離縁して屋敷を出る時、守がさくらは花や葉を飛ばして人を傷つけられると言っていたが、当時は笑い話程度にしか思っていなかった。今、その実力を目の当たりにし、嫉妬と憎しみが心を掴んだ。まるで何百匹もの蟻に噛まれているような感覚だった。

このような素早い敗北は、琴音の面目を完全に潰した。彼女は以前、援軍の中でさくらが縁故で押し上げられたと言い、その結果何人かの将軍が杖打ちの刑に処された。

さらに、戦いの直前にもさくらを大声で非難し、群衆の怒りを煽った。

そして今、さくらは実力でその言葉を否定した。

この女は最初から最後まで、「続ける?それとも降参?」という一言しか琴音に言わなかった。一度も弁解しなかった。

北條守は急いで琴音を支えに来て、心配そうに尋ねた。「怪我は?大丈夫か?」

琴音は守の手首を掴み、ゆっくりと立ち上がった。胸の痛みはまだ激しく、必死に耐えていたが、目に浮かぶ涙を抑えきれなかった。

彼女は無比の恥辱を感じていた。しかし、恥ずかしさ以上に受け入れがたかったのは、これからどんなに邪馬台で敵を倒そうとしても、もはや軍功を立てられないということだった。

いや、それだけではない。最悪なのは、大和国第一の女将の座を上原さくらに譲らなければならないことだった。

周りは耳をつんざくような歓声に包まれていたが、琴音の頭の中はただ「ブーン」という音だけが響いていた。そしてその音の中から一つの思いが浮かび上がった。納得できない。

納得できなかった!

自分の出自はさくらに及ばない。さくらのような優れた師匠もいなかった。さくらがこれほどの武芸を身につけられたのは、家柄が良いからだ。武林の超一流の達人たちは、さくらの父や兄の名声に畏れをなし、簡単に彼女を弟子に取ったのだ。

自分はさくらに負けたのではない。出自に負けたのだ。

自分にはさくらのような恵まれた生まれがな
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