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第472話

この案件が天皇に上奏された後、陛下は木幡刑部卿を特別調査使に任命。甲斐への調査団には青雀も同行することとなった。

再審、それも天皇直々の特別調査使の派遣――しかも刑部卿自らが赴くとなれば、怒りに燃える民衆の心にも、わずかな疑問の種が蒔かれることだろう。

深水青葉もまた、珍しくこの事件について論評を発表した。事件の疑問点を指摘する内容だった。それまでの学者たちは民衆の怒りに同調し、被害者への同情と、夫権への挑戦を許さないという立場から、激しい非難の声を上げていた。

しかし深水青葉が疑問点を指摘したことで、学者たちの論調も変化した。断定は避けながらも、特別調査使の調査によって真相が明らかになり、死者の魂が慰められることを願う――そんな慎重な物言いに転じていった。

燕良親王の屋敷では、誰もがこのような展開を予想していなかった。

彼らの読みでは、上級審での有罪確定か、再審という二つの道筋しか残されていなかった。どちらにせよ、影森玄武の評判は地に落ち、刑部卿の地位すら危うくなるはずだった。

しかし、刑部は特別調査使が調査に赴くことを決定した。

「見くびっていたようだな、影森玄武を」燕良親王は冷ややかに言った。

「ご心配には及びません。誰が調査に行こうと、あの婦人が『魂喰蟲』に感染していたという証拠など見つからないでしょう」

「もはや影森玄武とは無関係になったわけだ」燕良親王は言った。「あの婦人が最終的に斬首刑になろうとなるまいと、それは特別調査使の判断となる。そして、今回の特別調査使が誰か知っているか?刑部卿の木幡だ。彼が自ら赴いて有罪を確定させれば、影森玄武への報告すら必要ない。即座に死刑執行が可能となる。仮に後日、婦人が毒に冒されていたことが発覚したとしても、影森玄武には一切影響が及ばないというわけだ」

それに、木幡家との対立は避けたかった。後宮には定子妃淑妃という存在があり、木幡家の多くは代々官職に就いている。この事件を深く追及されれば、自分への追及も避けられまい。

物事は一歩一歩進めねばならない。これほどの年月を費やしてきたのだ。この一件で躓くわけにはいかない。

「『魂喰蟲』の件が発覚しなければ良い。少なくとも甲斐の府知事には累が及ばないはずだ」

心中の不満を押し殺しながら、ゆっくりと言葉を続けた。甲斐の府知事とのつながりも、長年かけて築き上
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