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第407話

さくらは「ふーん」と言った。「普通の女性ならそう考えるのも分かるわ。でも、沢村家は関西の名家で、百年以上衰えることなく続いてきたのよ。あなたの叔母さんのことで結婚が少し難しくなっただけで、元々が高貴な家柄なのに、どうしてわざわざ高い地位を求める必要があるの?少し身分の低い家に嫁いで、夫の家で実権を握った方が、生活は楽になるんじゃない?」

「だから彼女が愚かだって言ってるのよ」紫乃はさくらに伊勢の真珠の耳飾りを付けた。「燕良親王が沢村家を狙っているのは、単純な話じゃないわ。今朝早くに彼は都を離れたわ。あなたの叔母さんの葬儀をどんな風にするつもりなのか、分からないわ」

「見張りは付けたの?」さくらは尋ねた。

「ええ、付けたわ」紫乃はさくらの頬を摘んだ。「笑って。この数日、あまり笑ってなかったわね。もし私に子孫がいたら、私が死んだ後も、毎日笑っていてほしいわ」

さくらは紫乃の手を払いのけた。「あなた、まだ夫もいないのに、どこから子孫が来るのよ」

「三本足のヒキガエルは見つけにくいけど、二本足の男なんて見つけるのは簡単でしょ?」紫乃はそう言いながらも、興味なさそうだった。

彼女は少しも結婚したくなかった。

さくらの結婚は悪くないが、皇族には面倒なことが山ほどある。さくらが安心して暮らせるとは思えない。

そして、沢村紫乃は......そう、彼女に釣り合う男などいない。間違いなく。

新年は宴会や招待の中で水のように流れ去り、正月十五日の上元節を迎えた。祝賀行事が多く、玄武は夜遅くに花火を見に連れて行くと約束していた。

しかし、昼頃になると突然凍雨が降り始めた。

雪ならまだ何とかなるが、凍雨となれば災害だ。

花火は見られそうもない。災害救助と人命救助に走り回ることになりそうだ。

玄武は刑部卿でありながら、禁衛府の将でもあった。独楽のように忙しく動き回りながらも、さくらに使いを送り、決して外出しないよう伝えた。

天気は骨身に染みるほど寒く、水滴は瞬時に凍りついた。

後庭では、以前恵子皇太妃が移植させた梅の木が数本、凍雨の重みで倒れた。東南の角にある槐の木も半分倒れ、塀の一部を押し潰してしまった。

屋敷内も大忙しだったが、幸い有田先生の的確な指示のおかげで、枝や壊れた煉瓦の片付けは整然と進められた。天候が回復次第、修復作業に取り掛かる予定だ。

長らく
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