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第410話

しかし、中には「さくらは北冥親王妃で、元々太政大臣家の嫡女だ。家柄も豊かで銀子も無尽蔵だろう。数万両の寄付など大したことではない」と言う者もいた。

一方で、「将軍家は貧しく、老夫人も長く病気だった。寄付する銀子がないのも無理はない」と擁護する声もあった。

このような意見はすぐさま反論を浴びた。

「貧しいってことの意味を勘違いしてないか?北條守が葉月琴音を娶った時、結納金だけで1、2万両の銀子だったって聞いたぞ。それに親房家の奥様が嫁いだ時の嫁入り道具の多さ、お前は目が見えてないのか?

貧しいだって?あの家の指の隙間から漏れる金だけでも、お前の一年分の食い扶持になるぞ。

仮に貧しいとしても、寄付しないならしないでいい。なぜ建康侯爵家老夫人を老いぼれの物乞いなんて罵る必要がある?あのお方は90歳を過ぎているんだぞ。厳寒の中を歩いて寄付を募ったのは誰のため?被災地の民のためだ。どこが悪くて物乞いと罵られなきゃならないんだ?

それに、北冥親王家が金持ちなのは確かだ。でもお前はどうなんだ?10両の銀子はあるだろ?1両寄付しろって言われたら、する気になるか?しないだろ?

だから彼らにはそういう器量と度量があるんだ。京都の貴族に金がないわけじゃない。なのになぜ彼らだけが3万両も寄付したんだ?」

民衆のこうした議論の声は、当然親王家にも届いた。

上原さくらは使いを出して寄付者リストを確認させた。案の定、北冥親王家の寄付額が最多だった。

彼女は一瞬憂鬱になった。

まるで北冥親王家が目立とうとしているかのようだ。しかも、建康侯爵老夫人が名簿を役所に提出すると言っていたが、表彰するかどうかは役所の判断次第だ。

さくらは以前の寄付は公表されなかったので、今回も公表されないだろうと思っていた。

なぜ今回は掲示されたのだろう?

彼女が銀子を寄付したのは純粋に善意からで、被災した民を助けたいと思ったからだ。目立ちたかったわけではない。

さくらが憂鬱に沈む一方で、恵子皇太妃は喜んでいた。わざわざ人を遣わして確認させ、榎井親王家の寄付が300両だと知ると大笑いした。「300両?よくそんな額を出す気になったものね。近々宮中に行ったら、淑徳貴太妃に聞いてみましょう」

榎井親王は淑徳貴太妃の息子で、斎藤家の娘を娶っており、かなりの財産があるはずだった。

さくらは口元を引き
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