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第272話

でも、王家といえば本当に来ていた気がする。

西平大名・親房甲虎の従弟だったかな。でも母には好まれなかったようだ。

もういいわね。過去は過去よ。あと二ヶ月で玄武との結婚式だもの。過ぎ去ったことは昨日死んだようなもの、新しい未来を迎える気持ちでいればいい。

この先に向けて、新しい人生を歩み出す準備をしていた。

天気が徐々に冷え込み、庭の梅の花にはつぼみがついた。数日もすれば咲き始めるだろう。

今年の梅は早咲きで、福田はこれを吉兆だと言っていた。

潤はようやく歩けるようになったが、数歩歩くとすぐに戻って寝床に戻らなければならなかった。

屋敷では婚礼の準備が着々と進められていた。婚約が決まった日から、花嫁衣裳の縫製が始まっていた。蓮華工房の刺繍師に任されており、都の権力者が娘を嫁がせる際には、大抵蓮華工房を利用した。一つには彼女たちの刺繍の腕前が良く、仕事が早いこと。二つ目は蓮華工房の刺繍師の技術が大和国中に知れ渡っていることだった。多くの地方の富商や貴人たちは、蓮華工房の花嫁衣裳を注文するためなら惜しみなく金を使った。

梅田ばあやはこの日、蓮華工房に進捗を確認しに行った。帰ってくると、何か言いたげな、しかし言うのをためらっているような奇妙な表情をしていた。

さくらはその様子を見て尋ねた。「花嫁衣裳に何か問題でもあったの?」

さくらはこの日、立ち襟のマントを着て、潤を連れて梅を愛でに行った。帰りには潤を背負うことになった。

潤は歩きたがっていたが、さくらは丹治先生の指示に従い、まだ多くは歩かせられなかった。一日に2、3回、少し歩いて血行を良くするだけで、足の血行が滞らないようにしていた。

梅田ばあやは潤が薬膳を飲み終わり、お椀を片付けてから言った。「お嬢様、大したことではありませんが、親房家の方々に会いました」

「親房家の人?」さくらは瞬時に、梅田ばあやが以前言いかけて言わなかったことを思い出した。「ええ、親房家が求婚に来たことは覚えているわ。でも今はそんなことを蒸し返す必要もないでしょう」

潤を落ち着かせると、さくらは梅田ばあやと一緒に外に出た。

空は曇っていて、風が強かった。さくらは襟元を引き締め、ばあやが薬のお椀を瑞香に渡すのを見てから、一緒に物置に向かった。今日は新しく買った嫁入り道具を整理すると言っていたのだ。

梅田ばあやの声が寒風
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