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第278話

西平大名老夫人と夕美を見送った後、さくらは客間に座ったまましばらく呆然としていた。

この縁談に対して、北條守はどんな態度なのだろうか?葉月琴音だけを愛していたのではなかったか?葉月琴音が高慢にさくらの前で威張っていたことを思い出す。新しい奥方がすぐに来ることをどう思うのだろう。あの日の傲慢な態度が今では滑稽に思えるのではないだろうか。

夕美は扱いやすい相手ではなさそうだが、西平大名家の娘として、家政を取り仕切るには最適な人選だろう。

そして、北條老夫人はきっとこの新しい嫁を気に入るはずだ。再婚とはいえ、多くの持参金を持ってくるだろうし、実家の後ろ盾もある。老夫人は実家の力がある嫁を好むのだから。

葉月琴音は女性と争わないと言っていたが、今回は争うのだろうか?

自分が最も嫌悪し、軽蔑していた人物になってしまうのだろうか?

さくらは好奇心はあったものの、実際に人を遣わせて探りを入れるようなことはしなかった。

しかし、さくらが探ろうとしなくても、北條家から訪問者がやってきた。

それは北條家の第二老夫人だった。

第二老夫人は潤が戻ってきた時にも一度訪れていたが、その時は北條家のことには一切触れなかった。あんな喜ばしい日に不快な話をするのは控えたのだろう。

今回、第二老夫人はさくらに婚礼の贈り物を持ってきた。量は多くなく、高価なものでもなかったが、すべて彼女の心のこもったものだった。

潤のために一揃いの衣装を作り、靴下まで用意していた。

さくらのために布団を一組作り、布団カバーは第二老夫人自身が刺繍したもので、花々が咲き乱れる模様と「偕老同穴」の文字が刺繍されていた。

さらに、さくらのために普段着一式、寝間着一式、刺繍入りの緞子の靴を一足作っていた。

金製品としては龍鳳の金の腕輪一対を贈った。これは市販の一般的なデザインだったが、薄っぺらいものではなく、ずっしりと重みがあり、かなりの出費だったことが窺えた。

北條家の次男家は本家の影響で長年苦しい生活を強いられており、贈れるような品は多くなかった。この龍鳳の腕輪は、その重みだけでなく、第二老夫人の心遣いの重さも感じられるものだった。

さくらは次男家が経済的に苦しいことを知っていたので、こんな高価な贈り物を受け取るわけにはいかなかった。すぐに辞退しようとした。「お洋服と布団はいただきますが、金の腕
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