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第282話

さくらは夜遅くまで起きていたので、早朝にお珠が報告に来たときは驚いた。葉月琴音が屋敷の外で面会を求めて大騒ぎをしており、追い払おうとしても無駄だったので、仕方なくさくらを起こしに来たのだという。

さくらはベッドから起き上がり、眠そうな目で一瞬呆然としていた。本当に来たのだ。

少し目が覚めてくると、内力を使って外の様子を聞いてみた。確かに外は騒がしく、琴音の声が聞こえる。

ドンドンという門を叩く音も聞こえた。このまま騒ぎ続けられては潤が驚いてしまう。潤は随分良くなったとはいえ、荒々しい音にはまだ怯えてしまうのだ。

さくらの最初の反応は飛び起きて桜花槍を握り、琴音を追い払おうとすることだった。

しかし、太政大臣家の周りは権力者の家ばかりだ。琴音がどれほど騒いでも、彼女は今のところ太政大臣家の当主だ。当主が自ら出て追い払うのは、結局品位を落とすことになる。

よし、自分も気になっていたのだ。今この時点で琴音が訪ねてきて、一体何を言いたいのか。

「彼女を外院の脇の間に案内して待たせなさい。私は着替えてすぐに行くわ」さくらは起き上がりながら言った。

お珠はあの女に会うのは縁起が悪いと思ったが、こんな騒ぎ方では仕方がない。太政大臣家には使える護衛も少ない。普通の人なら追い払えるが、琴音は武術の心得がある。

もし護衛が琴音にやられてしまったら、恥ずかしい思いをすることになる。

「分かりました。私が外に出て彼女を中に案内します」お珠は振り向いて出て行き、明子にお嬢様の着替えを手伝うよう言いつけながら、「本当に縁起が悪い」とつぶやいた。

さくらは少し古びた普段着を着て、狐の毛皮のマントを羽織った。今日は少し寒く、また雪が降りそうだ。

それはそれで良い。雪が降れば、潤は雪合戦ができるだろう。

空は曇っていて、風は冷たかったが、邪馬台と比べればまだましだった。邪馬台の風は人の心まで刺し通すようで、体中の骨という骨まで削られるような感じだったのだから。

外院の脇の間で、さくらは琴音を見た。

琴音は紫がかった赤の錦の衣装を着て、黒い鶴氅を羽織っていた。顔には黒いベールをかけ、髪を高く結い上げていた。装飾品は多くなかったが、耳たぶの赤い珊瑚のイヤリングが目を引いた。

彼女の装いは立派で、確かに気品があった。しかし、その目は冷たく、ゆっくりと入ってくるさくらを見つめ
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