Home / その他 / (改訂版)夜勤族の妄想物語 / 3. 「異世界ほのぼの日記」66~70

Share

3. 「異世界ほのぼの日記」66~70

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-01-21 11:47:41

-66 一方で-

 恋人たちが現場に戻って来たのはプニ達が爆弾を『処理』し終えてから十数分経過してからの事だった。2人は口の周りが不自然に明るく光り表情が少し赤くなっている、髪が少し乱れているのは言うまでもない。

プニ「お前ら・・・、ううむ・・・。」

 プニは仕事を再開すべきだと気持ちを押し殺した、何をしていたかだなんて正直想像もしたくない。

 ただ林田警部が無線の向こうで呆れ顔になってしまっているのは確かだ、幸いケルベロスやレッドドラゴン達は気付いていないらしくその場を何としても納めなくてはと冷静に対処する事にした。

 プニの無線機から林田警部の声が聞こえる、どうやら恋人たちは無線機の電源を切っていたらしい。

林田(無線)「利通君・・・、そしてノーム君・・・、君らが無線機の電源を切ってまで2人きりになりたい気持ちは私も大人だから分からんでもないが・・・。」

ドーラ「そんな・・・、照れるじゃないですか。」

林田(無線)「ぶっ・・・。」

 ドーラが林田に何をしたかはその場の全員が分からなかったが何かしらの攻撃がなされたらしい、多分ビンタに近い物だろう。取り敢えず林田は偶然を装う事にした、どう頑張ってもドーラが何かをした証拠が見つからないのだ。

林田(無線)「失礼・・・。さてと、爆弾の方はどうなっているかね?」

ドーラ「お父さ・・・、いや警部、1つがコインロッカーの中に見つかりました。爆弾処理班の方々によるとまだ複数個隠されているかとの事です。」

林田(無線)「ノーム君・・・、まさかこの言葉を言う事になるとは思わなかったが、君にお父さんと呼ばれる筋合いは無いよ。取り敢えず見つかった爆弾はどうしたのかね?」

利通「えっと・・・。」

プニ「見つけた1個は俺達で処理したっす。」

ケルベロス①「ただ競馬場内から爆弾の匂いがプンプンしますぜ、林田の旦那。」

 相変わらずのキャラを保っているが仕事はしっかりと行っているので文句は言わないでおくことにした、別の者達には日を改めて。

 一方、銃刀法違反の現行犯で逮捕した犯人をネフェテルサ王国の警察署に巡査が輸送し、それに合わせ警備本部にいた林田警部が一時的に署に戻り取り調べを行った。犯人によると自分は金で雇われただけだと言う、真犯人からは電話での指示を受けていたが非通知での着信だった為番号は知らないそうだ。そして分かった事がもう1つ、真犯人に雇われて犯行を手伝っている者が後2人いるらしく、ダンラルタとバルファイに1人ずつ。主に真犯人が仕掛けた爆弾の管理を任されていた。

 現行犯逮捕なのでネフェテルサ王国の法律で確実に有罪になるとは思われるが刑を軽くすることを条件に競馬場に仕掛けられている爆弾の位置と個数、そして他の2国にいる犯人グループの者の特徴を聞き出すことにしてみた。

林田「些細な事でも何でもいい、君の知っている事を教えてくれないか?」

犯人「競馬場に仕掛けられている爆弾はあと3つ・・・、そして場外に大き目の物が3つで、勿論場所は教える。全てが独自のネットワークで繋がっていて同時に爆発される様に設定されているらしい、ただ警察にバレた時の事を考慮して解除された瞬間に真犯人に連絡が行く様になっていると聞いた。下手すればそれによって爆発までの時間が短くなるかも知れない。

 そしてすまないが、会った事も無いから主犯者含め他の犯人グループの者の顔や名前といった特徴は全く知らない。

 金は作戦を終えてからとの事なので勿論まだ払われていないし、差出人不明の封筒に入ったこの携帯を持たされてさっきも言った通り番号非通知だったから俺には全く情報が無い。」

林田「そうか・・・、よく言ってくれた。察するにお前さん・・・、かなり腹が減っているのでは無いのかな?」

犯人「何故・・・、分かった・・・。」

林田「私の想像だが君はろくに食えない程金に困っていて、真犯人の奴からの報酬の情報に目がくらみ、犯行に協力してしまったのだろう。ただ自分が間違った事をした、罪を犯したという事は勿論分かっているね?」

犯人「ああ・・・、どんな重い罰でも甘んじて受けるつもりだ。そしてエルフの刑事さんに謝りたい、不本意とは言え申し訳ない事をしたと。」

林田「分かった、『どん』な罰でも受けるんだな?エルフの刑事・・・、ああノーム君の事か。おい、またうちの利通とお楽しみの様だが聞いてたか?」

ドーラ(無線)「す、すみません・・・。はっきりと聞こえてましたよ、許します許します。」

林田「そういう事だから、こっちも君に見苦しい物を見せてしまったかもしれないんだよ。お詫びと言ってはなんだが、罰の1つとしてこのデカ盛りの特製『丼』を食べて貰おう。」

犯人「警部さん・・・、ぐすん・・・。これうめぇよ、ただある意味『重い』罰だな。」

-67 重い罰-

 『丼』な『重い』罰を受ける犯人に林田は柔らかな表情と口調で質問してみた、キツめの口調で聞くと答えづらくなってしまうかも知れない、素直に答えてくれそうな内に聞いてみようと言う作戦だ。

林田「どうだ、味は美味いか?知り合いの板前さんに頼んで作って貰ったんだ。俺大好きなんだ、カツ丼と親子丼に牛丼、そしてかき揚げ丼がよ。」

 丼にたっぷりの白米が盛られ、上には黒豚のロースカツにネフェテルサ特産の若鶏で出来た親子丼の具材がかけられ横にカラッとサクサクに揚げられた大きなかき揚げと継ぎ足しの出汁で甘辛く煮詰められた牛肉が添えられている。料理の練習に余念のない焼肉屋で働くウェアタイガーのヤンチの特製丼で、お代はいらないからと御厨板長が試食を頼んできたのだ。

犯人「こんなご馳走・・・、久々だよ。」

林田「それな、本当は俺の昼飯だったんだぞ。」

犯人「いいのか?俺、さっきも言ったが金ねえぞ。」

林田「良いんだ良いんだ。目の前で腹を空かせている奴がいるとほっとけねぇ性格(たち)でな、許してくれ。それにしてもよっぽど腹減っていたんだな、もう半分も無いじゃんかよ。」

犯人「美味すぎてな・・・、俺には勿体ねぇ・・・。死んだ両親に食わせてやりてぇ・・・。」

林田「良かったら、お前さんの話を聞かせてくれないか?食べ終わってからで良いからよ。」

 犯人は冷めない内にと口にどんどんと運んでいった、急ぎすぎて詰まらせかけている。ただ、まだ満腹感は来ていないみたいで勢いはおさまらない。

林田「ははは、急ぐからだろ。今お茶を持ってきてやるから待っとけ。」

 林田警部が冷蔵庫から麦茶を持ってきて犯人に1杯与えると、食らいつく様に一気に飲み干した。

林田「少し気になったんだが、お前さん。この世界の奴では無いな?」

犯人「ああ・・・、確かにそうだが何故分かった?」

林田「俺と同じ匂いがしたんだよ、今更だが名前は?」

犯人「梶岡だ・・・、梶岡浩章(かじおかひろあき)。」

林田「梶岡か、実は俺も転生者なんだ。お前さんも俺と同じだから、日本の味を美味そうに食ってるんだな。」

梶岡「いや・・・、実は日本での記憶は全く無くてな。」

林田「良かったら聞かせてくれるか。」

梶岡「長くなるぞ、レースを見なくて良いのか?」

林田「後で何とでもするさ。」

梶岡「ん?まぁ・・・、良いか。これは数年前、ここに俺を転生させた神様的な奴に聞いた話なんだが俺が生まれた直後に元々体の弱かった母親は分娩室で出血多量で亡くなり、病院まで走っていた父親もトラックにひき逃げされて即死だったらしい。そのトラックは逃走中の銀行強盗犯が運転していた物らしく、犯人は未だ捕まっていないそうだ。両親の顔や名前、声も知らぬまま施設に送られる事になった俺は施設に行く予定だった当日に新生児室から何者かに盗まれ、駅のコインロッカーの中で放置されている内に窒息で死んだと聞いた。そしてこの世界に転生されこの国の孤児院で育ち卒業、ほぼほぼ全財産をはたいてアパートを購入した俺はバルファイ王国の魔学校に行く予定だったんだ。一応、首席入学の予定だったんだぜ?なのにいきなり入学資格の剥奪通知なんてものが来てな、そこに書かれていた電話番号にかけてみたんだが誰も出ない。居場所も無くしちまった俺は職を得ようと冒険者ギルドに登録しようとしてみたが身分証明書が無いから登録出来ないと受付嬢に言われてよ・・・、それで今に至る訳さ。それにしても今思えばあのエルフの刑事さんに似た奴だった気がするな。」

 林田は懐に忍ばせていた無線機を机に置き、呼びかけた。

林田「ノーム君・・・、そう言う事らしいが、聞いていたか?」

ドーラ(無線)「聞いてました、何となく見たことがある顔だと思ったのですがあなただったのですね?」

梶岡「どういう事だ?」

林田「この国の冒険者ギルドの受付嬢本人だよ、本職はここの刑事。それと結愛さん・・・、梶岡が言っていた事は事実でしょうか?」

結愛(無線)「私の方には報告が上がってませんね、梶岡さんでしたっけ、少し調べさせて頂けませんか?羽田さん、お願いできますか?」

羽田(無線)「お任せください。」

梶岡「これもどういう事だ?」

林田「君が行こうとしていた魔学校の理事長だよ、調べてくれるらしい。それでだ・・・、どうやらこちら側に非があるようなので今回のもう1つの『罰』は俺達の捜査に協力するって事でどうだ?」

-68 協力と反抗-

 羽田は警備隊に混ざり捜査を続けつつ、黒服に指示を出し魔学校の入学センターの担当者に取り調べを行う事にした。その前に、結愛の指示で当時の入学者リストをコピーし入念にチェックしていった。勿論、梶岡の名前は無い。首席入学者は「リラン・クァーデン」と書かれている。黒服からその事を聞くと羽田はすぐに結愛と林田に無線で伝えた、林田は驚きを隠せない。

林田(無線)「クァーデンですって?!確かにそう書かれていたのですか?!」

結愛(無線)「警部さん、何かご存知なのですか?」

林田(無線)「ええ・・・、悪名高い事で有名でしてね。名誉の為なら何でもしでかすダンラルタ王国の貴族ですよ。少し私に時間を頂けませんか?」

 林田は電話を取り出し、ある所に事情を話し始めた。電話の向こうの男性は快諾し、梶岡と話してくれると言った。

男性(電話)「梶岡さんでしたか?私で宜しければ力になりましょう、お話をお聞かせ願えますか?」

 梶岡は林田に話した自らの歴史を男性に話した、電話の向こうで男性は涙を流している。

男性(電話)「そうですか・・・、大変でしたね。私にお任せ下さい、魔学校とクァーデン家に問い合わせてみましょう。」

梶岡「あの・・・、貴方は?」

男性(電話)「ダンラルタで八百屋を経営している者でして、知り合いが多いのです。」

 林田は笑いを堪えた、有名な某時代劇で聞いた事のある様なフレーズだからだ。

 数分後、警察署に来た羽田に梶岡を紹介して一緒に魔学校を調べる様に伝えた。羽田達がその場を離れると林田は男性に電話を掛けなおした。

林田「国王様、宜しいのですか?あんな嘘をついて。」

デカルト(電話)「構いませんよ、国王だと言うと身構えて話し辛くなってしまうでしょう。現にあなたもそうですから。」

林田「はい?」

 林田は以前飲み比べをした時にデカルトと連絡先を交換していたのだった。その時、自分達はもう友人なので気兼ねなく話してくれと言われていたのだ。

林田「そうだな、デカルト。すまない、ただ他の人の前だったから許しておくれ。」

デカルト(電話)「ひどい奴だな、忘れたのかと思ったぜ。」

林田「とにかく頼むわ、一大事かも知れん。」

デカルト(電話)「分かった、ただ俺は立場上レース会場を離れる訳にはいかんから軍の者に頼んでみるよ。」

 今行われている伝統のレースは3国の国王が主催者とも言えるので各国のレース本部にいる必要があるのだ。

 デカルトは軍隊に属するグリフォン数人と隊を率いる上級鳥獣人族(アーク・ホークマン)で雷魔法を操るバルタンを数人呼ぶとクァーデン家に向かう様伝えレースの方に戻った。

 クァーデン家の屋敷はらせん状のレースコース近辺の山の山頂に豪邸を構えており、噂では裏市場の人身売買で無理矢理連れて帰ってきた奴隷を多く持っているらしく、魔獣愛護団体からも目を付けられているそうだ。

 デカルトの指示でクァーデン家に来た軍隊長のムカリトが呼びかけた。

ムカリト「国王様の指示でここに来た、聞きたいことがある。玄関を開けて貰えないだろうか。」

 執事が奥から出てきた。主人は拒否していると伝えると玄関を固く閉め中庭の奥へと戻って行った。ムカリトはデカルトに報告の電話をした。

ムカリト「国王様、いかが致しましょうか。」

デカルト(電話)「私の申し出を断るとはね・・・、クァーデンならあり得ると思いましたがやはり怪しいですね。分かりました、私が許可します。もう1度申し出に応じないようでしたら強行突破してください、その時は運悪く奴隷となった獣人達の保護をお忘れなく。」

ムカリト「かしこまりました。」

 ムカリトは再び玄関に向かい先程と同じ台詞と共に強行突破する旨をも伝えた。玄関は静まり返っている。軍隊は木製の扉をこじ開け中庭に入った。奥から汚れたぼろきれを着せられ手枷を付けられた獣人が数人助けを求めながら飛び出してきた、きっと例の奴隷だろう。軍隊長達は獣人達をグリフォンの背に乗せると王宮へと向かう様に指示した。

-69 解放した理由-

 クァーデン家から解放した奴隷たちをデカルトに会わせる為、一先ず王宮へと連れて行った。レース場に行く前に彼らに入浴させた後、新品の衣服と沢山の食事を与える様にとデカルトから指示があったからだ。特に食事に関しては出せるだけ出して良いので奴隷たちが満腹になるまでとの通達だった。

 ムカリトの同僚で同じく軍隊長であるバルタンのウィダンが数人のグリフォンと任務を遂行していた、ただデカルトの「出せるだけ出して良い」という通達が妙に引っかかっているのだが。

奴隷「兵士さん・・・、良いのかい?こんなに良くしてもらって。」

ウィダン「だ・・・、大丈夫だ。こうする様に国王陛下直々の指示があってな。それにしても全然食事を取っていなかったのか?王宮にあった食材の殆ど9割方出したんだが全部食っちまったじゃねぇか。」

奴隷「まずい事をしてしまったならすまない、俺達元々巨獣人族(ジャイアント)なんだ。」

 ウィダンは王宮や王国軍の者の普段の食事の数十倍の量を出したつもりだったのだが奴隷たちは全てをペロリと完食してしまった、しかも10分も掛からない内に。

ウィダン「だからか・・・、大食いで有名だと聞いたが本当だったんだな。」

奴隷「さっき兵士さんに聞かれた通り、捕まってから全く食事という物を与えられて無かった。我慢しながらの強制労働は本当に辛かったよ。決して満たされない空腹と喉の渇きに耐える事が出来ず、何人もの仲間が亡くなっていったんだ・・・。辛かったよ、友人が目の前で息を引き取るのを見るのは。」

ウィダン「そうか・・・。思い出したくなかったら良いのだが、亡くなった方々はどうなった?」

奴隷「ゴミの様に鉄の窯に入れられ、燃料として使われた。俺達の毛皮はよく燃えると知っているらしい。ぐっ・・・。」

ウィダン「すまない・・・、悪かった。許してくれ。」

 ウィダンは奴隷の両肩に手を置き、頭を下げた。2人は目に涙を浮かべている。

ウィダン「それにしても初めて聞いたな、巨獣人族の毛皮がよく燃えるなんて。」

奴隷「俺達は普段は魔法で人の姿やこのサイズを維持しているんだが、これも結構辛くてな。ただ獣人族の中でも俺達巨獣人族は寒い所に住むことが多いから、体表に沢山ある毛皮で体を温めながら過ごしていたんだ。たまにだが毛の1本1本にある油分を利用し、焚火をしてキャンプの様にバーベキュー等を中心とした料理をする事もあったんだよ。

 それより兵士さん、本当にありがとう・・・。本当に美味しかった・・・。」

ウィダン「礼には及ばないさ、そろそろ国王様の所に出発しようか。」

 ウィダンの声を聴くと丁度出発の準備を終えたグリフォン達が背中に乗るように促し、奴隷たちは従った。奴隷たちはグリフォンにもお礼を言っていた、よっぽど嬉しかったのだろう。

グリフォン「礼なら国王様に言いな・・・。」

 笑みを浮かべ奴隷にこう伝えるとレース場に向かって飛び立った、奴隷達の気持ちを落ち着ける為ウィダンが話しかけた。

ウィダン「王宮の料理、美味かっただろ?俺も好きでな、特に何が美味かった?」

奴隷「そうだな・・・。全て美味かったが、特に明太子スパゲッティだったな。俺大好物なんだよ。少し和風出汁と辣油が利いてて味わい深く、ついがっついてしまった。」

ウィダン「やっぱりか、俺もあれ好きでな。それにしてもまさかシェフが少しだけ入れた隠し味を初めて食って2つ当てるなんて凄いな。」

グリフォン「俺も最初は生クリームしか分からなかったぞ。」

奴隷「実はこう見えて調理師の資格を持っていてな、料理と味覚には自信があるんだ。」

ウィダン「そうか、良かったら今度食わせてくれよ。」

奴隷「いくらでも食わせてやるさ。」

ウィダン「楽しみにしてるぜ。おっと・・、もうすぐ着くみたいだ。」

グリフォン「着陸するぞ、ただ少し場が荒れてるみたいだからよく捕まっていてくれ。」

 ウィダンと奴隷達を乗せたグリフォン達がゆっくりとレース場横の砂地にゆっくりと旋回しながら着陸するとそこにコッカトリスが飛んで来た、デカルトだ。

 デカルトが人化するとグリフォン達も同じ様に人化し、皆と共に頭を下げて跪いた。

ウィダン「国王様、クァーデン家に捕えられていた方々をお連れしました。」

デカルト「ありがとう。皆さん、長旅お疲れ様でした。私は国王のデカルトと申します。皆さんにお越しいただいたのは他でもありません、クァーデンとバルファイ王国にある魔学校の人間との関係性を可能な限りお伺いしたかったからです。」

奴隷「確か・・・、俺達が捕まっていた牢屋の向かいでクァーデンが何者かに大金を渡していたのを見ました、その時『これで上手くやってくれ』と言っていたような・・・。」

-70 出てきたのはまさかの人物-

 ダンラルタ王国の悪徳貴族であるクァーデン家に奴隷として捕まっていた巨獣人族の話を親身になって聞き入る国王のデカルト、少しも聞き逃さぬようにしたいので慎重に言葉を選んで質問していく。

デカルト「恐れ入りますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

奴隷「皆・・・、名前を奪われ番号で呼ばれていました。」

デカルト「そうですか・・・、因みに奪われる前の物は覚えていますか?」

奴隷「ガヒューでした、ガヒュー・パンドル。」

デカルト「ではガヒューさん含め皆さん、これからは堂々とご自分のお名前を名乗って下さい。」

 巨獣人族の者達の目には涙が。

ガヒュー「よろしいのですか・・・。」

デカルト「勿論、国王の名の下に許可致します。今日からあなた方はわが友、そして皆さんの雇口も探させて頂きましょう・・・。」

ガヒュー「ありがとうございます、人生でこの上ない位の幸せです。」

デカルト「これからどんどん、幸せで楽しい人生を共に歩みましょう。その為にも私に協力してくれますね?」

巨獣人族達「お任せください、国王様!」

デカルト「ではウィダン君・・・、皆さんの為に雇口を。恐れ入りますがガヒューさんはもう少しお話をお伺いさせて頂けますか?」

ガヒュー「勿論でございます、国王様。」

 デカルトはゆったりとした雰囲気で話しやすくする為にとガヒューにハーブティーを与えた、また果実で作ったフルーツタルトも横に添えている。両方とも素材からデカルトが作っている。

デカルト「どうぞ、私が王宮の中庭で育てたハーブと果実を使ったハーブティーとフルーツタルトです。お召し上がりください、ただくれぐれも他の人には内緒にしてくださいね。」

 ガヒューは震えながらティーカップを手にし、1口啜った。優しい味わいに心が安らいでゆく、そして横に添えられたフルーツタルトをナイフとフォークで器用に切って食べた。

 ガヒューは2品の優しい味わいで落ち着いた様だ。

ガヒュー「美味しいです、こんなご馳走久々で・・・嬉し・・・い・・・。」

デカルト「お辛かったでしょう・・・、もう大丈夫ですからね。我々は味方です、すみませんが覚えている事をお教え願えませんか?」

 ガヒューは使っていた什器類を置き、重い口を開こうとしていたのでデカルトは林田に電話を繋いだ。

デカルト「私の友人です、ネフェテルサ王国警察で警部をしています。」

林田(電話)「デカルト国王の友人の林田と申します。些細な事でも構いません、覚えている事をお教え願えますか?」

ガヒュー「先程国王に申し上げました通り、俺達が捕まっていた牢屋の向かいでクァーデンが札束を何者かに渡して『これで上手くやってくれ』と伝えていました、確かクァーデン含め3人いたと思います。残り2人の顔は見えませんでしたが、先程の言葉の後にクァーデンが『義弘さんもお願いします』と言っていました。」

林田(電話)「い・・・、今何と?!」

ガヒュー「だから・・・、『義弘さんもお願いします』って・・・。」

林田(電話)「『義弘』と言っていたのですね?」

ガヒュー「確かに言っていました、牢の監視カメラに3人の様子が映っていたはずですので間違いなく。」

 林田から競馬場にいる結愛にその事が伝わると結愛は無線機を持った右手を震わせていた、顔全体が蒼ざめている。

結愛「義弘・・・、あの野郎・・・。この世界で何をする気だ・・・。」

林田(無線)「結愛さん、落ち着いて待って下さい。確か奴の刑期はまだ終わっていなかったはず、日本の刑務所に『連絡』してみましょう。」

 林田は日本と連絡出来る様、この世界に来て初めて『作成』した『連絡』で義弘がいるはずの刑務所へと繋いだ。怪しまれない様に電話を通して話す形にしている、お陰で日本では「あらゆる場所の固定電話に死者からの着信がある」という都市伝説が生まれてしまっているが今はそんな事言っている場合ではない。

林田「刑務所長、久々だな。落ち着いて話したい、時間あるか?」

刑務所長(電話)「お前その声・・・、林田か?死んだって・・・、聞いたぞ・・・。」

Related chapters

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」71~75

    -71 捜査が続く中- 林田の『連絡』による電話に驚きを隠せない刑務所長に林田が質問した。刑務所長(電話)「都市伝説の通り・・・。」林田「今はそんな事言っている場合じゃない、お前の所に貝塚義弘がいただろ。パワハラ等で捕まった貝塚だ。」刑務所長「あいつなら逮捕された次の日に重岡とかいう投資家が保釈金を払って速攻出て行ったじゃないか、全国でニュースになっていたぜ。」 林田がただ度忘れしていたのだが、刑務所長が改めて言うには義弘の指示で保釈金を支払った重岡が車で義弘を県外の山奥に連れて行くとそこからは2人とも音信不通となったとの事で、新たな悪だくみを行っていた可能性があった。そこで結愛と光明、そして羽田を含む多くの黒服達が突然消えたと聞き、何らかの方法で追って来たかもしれない。林田「因みに結愛さんはどうやってこの世界に?それとここに来てからはどうやって?」結愛(無線)「これも数年前の話です、日本で忙しくしていた私が久々のゆったりとした休日を光明と楽しんでいた時、突然私たちの目の前に幻覚の様な竜巻が現れてそこにいた全員が吹き飛ばされたんです。そのあと目が覚めたらこの世界に。『作成』のスキルもその時知りました、それから少しの間バルファイ王国にある魔学校に通いながらこの世界の事を少しずつ調べて行ったんです。それから貝塚財閥の教育支援の一環として『転送』で持って来た財産の1部を寄付してネフェテルサ王国の孤児院を貝塚学園の小分校に、またバルファイ王国の魔学校を高等魔学校と貝塚財閥の支社にさせて頂いているのです。因みにレースの収益でダンラルタ王国に分校を建設する予定でした。」林田「なるほど、それは我々にも学園を守る義務がありますね。」 その守るべき学園に義弘の魔の手が触れようとしているかもしれない、それは流石に防がなければならない。 その頃、未だトップが⑨番車のまま遂に100周目を迎えようとしているレース場の脇にあるとある施設でバルファイ王国軍の将軍達がひっそりと1人過ごしていた国王を説得していた。バルファイ王国にあるホームストレート横には国王本人が自らの分身を忍ばせていた、分身と言えど思考等が本人とそのまま繋がっているので各々の場所に国王のオリジナルが存在している様な状態となっている。ただ分身は空の鎧に魂を魔力でくっつけているだけのもので、それが仮の姿として一

    Last Updated : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」76~80

    -76 リンガルス- パルライは羽田からSDカードを受け取るとカメラに挿入しより強力な魔力を込め始めた。羽田「あの・・・、パルライさん?」デカルト「パルライはネクロマンサー、リッチの下で修業した魔法使いなんです。ネフェテルサ王国の警察署には今彼の師匠も来ているのですよ。」 そうこうしているうちにパルライが作業を終え、一息ついた。パルライ「よしっ・・・、終わりました。見てみましょう。」 カメラの小さい映像を3人の大人が凝視する。3人「こ・・・、これは・・・。」 映像では黒い覆面をしたリンガルスと思われる人物がパソコンで何かを編集している。デカルト「拡大出来たらな・・・。」パルライ「やってみますか。」 パルライが魔力を込め、パソコンの映像がくっきりと見えるまで拡大した。「首席入学者」の文字の下にある「梶岡浩章」の文字を消して「リラン・クァーデン」に変更していた。パルライ「確定ですね。」デカルト「待て、どこかへ向かうぞ。」 覆面男は書類を印刷してそそくさとパソコンの電源を切ると部屋を出た。羽田「この建物には魔学校長の部屋があったはずです、それと主要警備室。」パルライ「そこに行きましょう。」 3人はパルライの魔法で主要警備室に『瞬間移動』するとそこには警備員が3名いたのだが全員眠ってしまっていたので羽田が慌ててたたき起こした。羽田「しっかりしろ、警備はどうしたんだ!!」警備員「えっ・・・?痛た・・・、羽田さんじゃないですか。どうしてここに?」羽田「首席入学者が何者かによって改ざんされてんだよ、しかもただ事じゃない!!首謀者の1人が義弘なんだよ!!」警備員「何ですって?!大変じゃないですか!!ただ俺達は覆面をしていた奴が後ろから近づいてきてからどうやらずっと眠ってしまっていたらしく、記憶が無いのです。」 こっそりと『審議判定』の魔法を使用していたパルライが首を縦に振る。パルライ「本当の事を言っている様です。警備員さん、恐れ入りますが少し場所を開けて頂けませんでしょうか。」警備員「あの・・・、失礼ですがどちら様ですか?」羽田「バルファイ王国とダンラルタ王国の国王様方だ。」警備員「申し訳ございません!!どうぞ!!」パルライ「そ・・・、そんな身構えないで下さい。堅苦しいの苦手ですので。では、やりますよ。」 パルライが魔力を流

    Last Updated : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」81~85

    -81 集合- 魔学校長のマイヤは林田を許し、早速持ち帰った映像やマイヤの発言が証拠として使えるかを皆で確認しようと提案した。光明「まずはこちらをご覧ください。」 マイヤが義弘と思われる覆面男に催眠術を掛けられた場面だ、催眠術を掛けられマイヤが自らの手で書類を書き換えたあの場面。マイヤ「ノームを含む私達アーク・エルフの一族は催眠術に強い特殊スキルを祖先からの遺伝で持っているのですが、まさかその長たる私が・・・。」ドーラ「じいちゃん・・・、思い出したくないなら無理に思い出さなくていいよ。」マイヤ「いや、良いんだ。捜査に・・・、いやノームの仕事に協力出来るなら喜んでやるよ。」 映像内で書類を書き換えた後、マイヤがぐっすりと眠っているのが何よりの証拠だ。 次に鏡台にあったもう一つのカメラで撮影した映像を再生した。光明「これはマイヤさんが鏡台に仕掛けてあるもう一台の監視カメラの映像です、少し音が小さいので最初の映像から音声を抜粋してありますが勿論同時刻に同じ場所で撮影された物ですので問題は無いかと。」 暑さが故に義弘が覆面を取った場面を再生した。結愛「義弘が・・・、あれ程の魔力を・・・。」林田「しかし、いつの間に魔力を得て催眠術の修業を行ったのでしょうか。」マイヤ「原因はリンガルスにあると思われます、きっと短期間ではありますがリンガルスの下で修業したからだと思われます。また、無理矢理な方法で魔力を引き出したのかと。」結愛「しかし・・・、ただの魔学校の職員がどうして?」マイヤ「理事長、恐れながら申し上げます。リンガルスは大賢者なのです!!」林田・ドーラ・結愛「大賢者?!」結愛「・・・、って何ですか?」羽田「これがデジャヴってやつですか?」光明「以前にもあったんですね・・・。」 確かに以前にもあった会話だ、ただ重要なのはそこだけではない。義弘が大賢者の力を得たのはマイヤに催眠術を掛ける為だけなのだろうか。光明「そう言えば、レースの方は?」林田「テレビをつけますね。ただ・・・、爆弾処理の方が心配ですね。」男性「それなら安心して下せぇ。」林田「その声は・・・。」 林田が聞き覚えがある声に振り向くとそこには結愛や利通と共に競馬場に仕掛けられた爆弾の処理に向かったダンラルタ王国警察の爆弾処理班がいた。プニ「おやっさん、安心して下さい

    Last Updated : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」86~90

    -86 超新鮮で大胆なBBQ- ガイの軽トラで1頭買いした黒毛和牛を林田家の裏庭へと運ぶと、今か今かと待つ人々が歓声を上げていた。その中には光が招待した結愛社長もいる、現場には大きなまな板と綺麗な包丁などが並べられ解体の準備がされていた。 丁度その頃、焼き肉屋の御厨板長と板前をしているウェアタイガーのヤンチが到着した。御厨「今夜はご招待頂きありがとうございます、ただ私達も召し上がって宜しいのでしょうか。」光「勿論です、お2人も楽しんで行って下さいね。」ヤンチ「さてと・・・、早速解体していきますか。」女性達「私達も是非手伝わせて貰おうかね。」 声の方向に振り向くとエプロン姿をしたネスタ林田、そしてまさかの貝塚結愛がいた。ヤンチ「お2人さん・・・、本気ですか?」ネスタ「あら、私はドワーフだよ。舐めて貰っては困るね。」 昔からドワーフの一族は身のために色々な技術を何でも習得するという伝統があった、牛肉の解体技術もその1つだ。ヤンチ「でも何で社長さんまで?」結愛「実は私も見分を広げる為にドワーフの方々から勉強させて頂いているんです、牛肉の解体もその1つです。」ネスタ「では早速やりますかね。」 鮮やかな手つきで3人が解体を進めていく。骨と骨の間に包丁を入れていき、スルッと肉が剥がされていった。結愛「さてと・・・、最初から贅沢に行きましょうか。鞍下、肩ロースです。丸々1本だからとても大きいでしょう。」光「涎が出てきちゃってるよ、早く食べたいな。」御厨「さぁ、焼肉にしていきましょうか。」 結愛から受け取った大きな塊を御厨が丁寧に肉磨きと整形をして焼肉の形へと切っていく。20kgもの塊が沢山の焼肉へと変身した。御厨「では、焼いていきましょう。ヤンチ、すまんが整形を頼む。」ヤンチ「あいよ、プロが2人もいるから解体は大丈夫そうですもん。」 御厨が炭火の網の上に肉を乗せ焼いていった、そこら中にいい香りが広がる。光「この匂いだけでビールが行けちゃいそう。」御厨「さぁ、焼けましたよ。塩と山葵でお召し上がり下さい。購入されたご本人からどうぞ。」光「塩と山葵がお肉の甘みを引き立てて美味しい!!」 光がビールを一気に煽る、何とも幸せそうだ。作業中の結愛やネスタ、そして焼き肉屋の2人にも振舞う。結愛「たまりませんね、ビールが美味しい。」光「今日

    Last Updated : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」91~95

    -91 空からの来客- 宴が続く中、月の輝く星空から大声が響き一同を騒然とさせた。声「この私を差し置いて、皆さんだけでお楽しみとは何事ですか?」光「な・・・、何?!」 全員が飲食をやめ空を見上げた、見覚えのある1頭のコッカトリスが3人のホークマンを連れて地上へとゆっくりと舞い降りた。背には軽装の男性が2人乗っている、林田が逃げる様にして家の中へと駆けこむ。林田「ま・・・、まずい・・・。誘うの忘れていた。」 舞い降りたコッカトリスが背に乗っていた2人を降ろし人の姿へと変わる、ダンラルタ国王であるデカルトだ。横にはホークマンである甥っ子と姪っ子が3人共揃ってお出まししている。姪っ子が背から降りた男性と軽くキスを交わす。甥っ子達はウェアウルフと取り皿を持ち、焼肉を取りに行こうとしていた。デカルト「2人も乗せていたから疲れましたよ、と言うかのっちはどこですか?」ネスタ「のっち・・・?ああ、ウチの旦那ですね。さっき家の方に走って行きましたよ。」デカルト「奥さん、かしこまらないで下さい。我々はもう友達ではないですか。」林田「そう仰って下さると助かります!!」デカルト「またそうやってかしこまる、やめろと言っただろのっちー。」林田「人前だから、それにのっちはダメだって。」 2人のやり取りを数人の女性がヒヤヒヤしながら聞いていた、1国の王に何たる態度を取っているのだと言わんばかりに。その内の1人であるドーラが質問した。ドーラ「お義父さんと国王様、いつの間にそんな関係に?」デカルト「これはこれはいつぞやの受付嬢さんではありませんか?まさかのっちの娘さんだったとはね。」林田「たった今俺の息子と結婚したんだよ、だから義理の娘ね。」 横から聞き覚えのある女性が口の中で黒毛和牛をモグモグさせながら声を挟んだ、その声には光も懐かしさを感じている。女性「じゃあ私達と一緒で新婚さんって訳だ。」 声の正体は先程キスを交わした女性ホークマン・キェルダだ。光「キェルダ!!久しぶりじゃない!!」キェルダ「ついさっき新婚旅行から帰って来たのよ。」光「えらく長めの新婚旅行だったのね。」キェルダ「あんたは暫く仕事を休める位稼いだみたいじゃない。」光「流石、言ってくれるじゃん。」2人「あはは・・・。」 2人が談笑している中、バルタンの兄・ウェインとホークマンの弟

    Last Updated : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」96~100 番外編

    -96 ご飯のお供②- 温かな朴葉味噌を熱々の白米に少しずつ乗せご飯を楽しむ一同、そんな中林田が懐で何かをごそごそと探し始めた。林田「次は私がご紹介させて頂いて宜しいでしょうか、ゲオルさんのお店でこれを売ってたので助かりました。」 林田は懐から小瓶を取り出すと嬉しそうに中身を自ら用意した小皿に出した、誰もが食べた事があるであろうメンマの「やわらぎ」だ。林田「そのまま食べても美味しいのですが、これを胡瓜キムチと混ぜても食感が良くてご飯にピッタリなんです。」 小皿とは別に少し大きめの器を用意し、胡瓜キムチとやわらぎを混ぜて振舞った。シャキシャキの胡瓜と柔らかなメンマがバランスよく混ざっている。メンマに和えられた辣油が味のアクセントになってご飯を誘い、それにより光と結愛はずっと箸が止まらなかった。結愛「アクセントの辣油がキムチの味を引き立てていますね、今日ご飯足りますか?」光「一応2升は用意しているんですが追加注文しないとダメかもしれませんね。」 光と結愛、そして羽田や林田のご飯のお供の時点で用意をしていた半分の1升が無くなろうとしていたので実は焦っていた。念の為、今現在もう半分の1升をお釜で炊いている状況だが無くなるのも時間の問題だろうか。林田のやわらぎ入り胡瓜キムチの出現は一同にとって大きかった、光は『瞬間移動』を利用して地下の貯蔵庫から追加の米を持って来る事にした。念の為に2升程追加を用意し、食事に戻った。 すると、家の入口の辺りから聞き覚えのある男性の声がした。男性「林田さん、林田さん?いらっしゃいますか?来ましたよー。」 その声に返事をする林田、ただ口の中には米が残っている。林田「ああ・・・、待って・・・、ましたよ・・・。裏・・・、庭に・・・、どうぞ・・・。」光「あれ?どなたか呼んだんですか?」林田「ごくん・・・、失礼しました。光さんもお会いした方ですよ。」男性「こんにちは、お久しぶりです。」 優しい笑顔で見覚えのある男性が裏庭に入って来た、この異世界で車を購入したお店の店主・珠洲田だ。珠洲田「光さん、お久しぶりですね。林田さんにご招待を頂きまして来させていただきました。私も皆さんと一緒でご飯が大好きなんです。」光「お久しぶりです、レースの映像でお見かけしましたよ。」珠洲田「これはこれはお恥ずかしい、まさか見られていたとは

    Last Updated : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   1. 「私の秘密」

    1.「私の秘密-赤鬼-」佐行 院 仕事に追われ1日1日が過ぎてゆき、一般では「花金」と呼ばれる週末。明日からの土日という楽しい2日間をどう過ごそうか、それとも今夜どう楽しもうかを沢山の人たちが考えているこの時間帯、開いている店と言えば飲み屋やコンビニ、そして最近増えてきた24時間営業のスーパーぐらい。他には夜勤で働く人たちがいる工場などがちらほらとあり建物から明かりが漏れている場所がほとんどなく電灯の明かりが優しく照らされる夜の街で独身の冴えない眼鏡女子の会社員、赤江 渚(あかえ なぎさ)は家路を急いでいた。毎日朝の9時から出社しての8時間勤務、1時間休憩を含め18時が定時での退勤なのだがそういう訳にも行かない、金曜日は特になのだが帰り際に上司の取口(とりぐち)部長から必ずと言って良いほど呼び止められて書類を押し付けられ毎日の様に残業が加算されすぎており毎月60時間以上の計算となりため息の日々。正直三六協定はどこへやら・・・。ある週の金曜日、毎度の様に帰り際の渚を取口が呼び止めた。取口「渚ちゃーん、今週も頼むよ、うちのチーム書類が立て込んでいるから進めておかないとね。」渚「はーい・・・。」 正直言ってしまうと原因は取口による書類の記入ミスや漏れによるものなのだが、本人は早々と定時に上がり気の合う仲間と逃げる様に近くの繁華街へ呑みに行ってしまう。今週に至っては残業はタイムカードを切ってから行うようにとも言いだした。何て卑怯な奴なんだと、やはりブラック企業の従業員の扱いは酷いなと身をもって学んだ今日この頃。 そんな中、最近巷で噂になっている事があった。特に地元の暴走族や走り屋を中心になのだが『赤いエボⅢに見つかると警察に捕まる』との事だ。通称『赤鬼』。毎週金曜日の夜に県内の暴走族や走り屋のスポットとなっている山に4WD車1台で行っては暴走行為、走り屋行為をしている奴らを一掃しているらしい。正体は未だ不明で年齢や性別など諸々全てが分かっていない。一部の人間には『赤鬼は警察の人間だ』とも言われている。 会社でもその噂で持ちきりだった。丁度よく今日は金曜日。取口「皆聞いたか、先週の金曜日にまた『赤鬼』が出たらしいぞ。今夜も出るかもな。」女性「怖い、今夜は私も早く家に帰ろう。」渚「何言ってんの、今日も残業でしょ・・・。」女性「噂なんだけどさ、『赤鬼』

    Last Updated : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   2. 「最強になるために」①~⑤

    2.「最強になるために~社長令嬢の青春奪還物語~」佐行 院-①序章- 私立西野町高等学校、私服登校可能など自由な校風のこの学校に通う宝田 守(たからだ まもる)はまったりとした毎日を友人と共に過ごしていた。1コマ55分の授業を6コマ出席して幼馴染の女の子・赤城 圭(あかぎ けい)と帰る。それが守の日常。他の人と何ら変わらない普通の高校生。因みに、守と圭は同じ1年3組だ。 比較的新しい5階建ての校舎に体育館やグラウンド、また食堂があって皆が各々の時間を楽しく過ごしていた。 部活も勿論存在する。運動部や文化部、そして同行会、沢山ある。因みに守は帰宅部(面倒くさいから)、圭もそうだった。因みに運動部にはクラブハウス(部室棟)があった いつも昼休みは図書室で本を読んで過ごした。読書は大好きだ。自分ひとりの世界に入り込める。ゆっくりと本を読み没頭し、チャイムがなったら教室へと戻って授業。本当に普通の日常。 放課後は必ず寄って帰る場所がある、学校の敷地の一角に佇む「浜谷商店(はまたにしょうてん)」というお店だ。歩いてすぐだから守だけじゃなくて西野町高校に通う生徒はみな好んで寄っている。ご夫婦で経営されているお店で皆顔なじみである。ある意味第二の両親と言っても過言ではない。今日はおばちゃんが担当らしい。 守「おばちゃーん、いつものー。」おばちゃん「あいよ、あんたもこれ飽きないねぇ。いつもありがとね。」圭「おばちゃんコーラ無いのー?」おばちゃん「ごめんねー、裏見てきてもいいかい?」圭「もう喉カラカラだよー、早くー、死んじゃうよー。」おばちゃん「そんなんで死ぬわけないだろ、待ってな。」 守は大好きなメンチカツとハムカツを頬張り、圭はコーラをぐいっと飲みながら歩いて帰る。それが僕たちの1日の締めくくりだった・・・、その時が来るまでは。 3学期の終業式の日、事件は起きた。 式を終えホームルームも終わり、守は圭と浜谷商店へと向かっていった。守「あれ食わなきゃ1日が終わらねえよな。」圭「ウチも早くコーラ飲みたーい。」守「またかよ、お前好きだよなー。」 いつも通り・・・のはずだった。圭「ねえ・・・、あれ・・・。」 浜谷商店のいつもは開いていた引き戸が完璧に閉まっている。貼り紙が一枚。「お客様各位   日ごろからのご愛顧誠にありがとうございま

    Last Updated : 2025-01-21

Latest chapter

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」96~100 番外編

    -96 ご飯のお供②- 温かな朴葉味噌を熱々の白米に少しずつ乗せご飯を楽しむ一同、そんな中林田が懐で何かをごそごそと探し始めた。林田「次は私がご紹介させて頂いて宜しいでしょうか、ゲオルさんのお店でこれを売ってたので助かりました。」 林田は懐から小瓶を取り出すと嬉しそうに中身を自ら用意した小皿に出した、誰もが食べた事があるであろうメンマの「やわらぎ」だ。林田「そのまま食べても美味しいのですが、これを胡瓜キムチと混ぜても食感が良くてご飯にピッタリなんです。」 小皿とは別に少し大きめの器を用意し、胡瓜キムチとやわらぎを混ぜて振舞った。シャキシャキの胡瓜と柔らかなメンマがバランスよく混ざっている。メンマに和えられた辣油が味のアクセントになってご飯を誘い、それにより光と結愛はずっと箸が止まらなかった。結愛「アクセントの辣油がキムチの味を引き立てていますね、今日ご飯足りますか?」光「一応2升は用意しているんですが追加注文しないとダメかもしれませんね。」 光と結愛、そして羽田や林田のご飯のお供の時点で用意をしていた半分の1升が無くなろうとしていたので実は焦っていた。念の為、今現在もう半分の1升をお釜で炊いている状況だが無くなるのも時間の問題だろうか。林田のやわらぎ入り胡瓜キムチの出現は一同にとって大きかった、光は『瞬間移動』を利用して地下の貯蔵庫から追加の米を持って来る事にした。念の為に2升程追加を用意し、食事に戻った。 すると、家の入口の辺りから聞き覚えのある男性の声がした。男性「林田さん、林田さん?いらっしゃいますか?来ましたよー。」 その声に返事をする林田、ただ口の中には米が残っている。林田「ああ・・・、待って・・・、ましたよ・・・。裏・・・、庭に・・・、どうぞ・・・。」光「あれ?どなたか呼んだんですか?」林田「ごくん・・・、失礼しました。光さんもお会いした方ですよ。」男性「こんにちは、お久しぶりです。」 優しい笑顔で見覚えのある男性が裏庭に入って来た、この異世界で車を購入したお店の店主・珠洲田だ。珠洲田「光さん、お久しぶりですね。林田さんにご招待を頂きまして来させていただきました。私も皆さんと一緒でご飯が大好きなんです。」光「お久しぶりです、レースの映像でお見かけしましたよ。」珠洲田「これはこれはお恥ずかしい、まさか見られていたとは

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」91~95

    -91 空からの来客- 宴が続く中、月の輝く星空から大声が響き一同を騒然とさせた。声「この私を差し置いて、皆さんだけでお楽しみとは何事ですか?」光「な・・・、何?!」 全員が飲食をやめ空を見上げた、見覚えのある1頭のコッカトリスが3人のホークマンを連れて地上へとゆっくりと舞い降りた。背には軽装の男性が2人乗っている、林田が逃げる様にして家の中へと駆けこむ。林田「ま・・・、まずい・・・。誘うの忘れていた。」 舞い降りたコッカトリスが背に乗っていた2人を降ろし人の姿へと変わる、ダンラルタ国王であるデカルトだ。横にはホークマンである甥っ子と姪っ子が3人共揃ってお出まししている。姪っ子が背から降りた男性と軽くキスを交わす。甥っ子達はウェアウルフと取り皿を持ち、焼肉を取りに行こうとしていた。デカルト「2人も乗せていたから疲れましたよ、と言うかのっちはどこですか?」ネスタ「のっち・・・?ああ、ウチの旦那ですね。さっき家の方に走って行きましたよ。」デカルト「奥さん、かしこまらないで下さい。我々はもう友達ではないですか。」林田「そう仰って下さると助かります!!」デカルト「またそうやってかしこまる、やめろと言っただろのっちー。」林田「人前だから、それにのっちはダメだって。」 2人のやり取りを数人の女性がヒヤヒヤしながら聞いていた、1国の王に何たる態度を取っているのだと言わんばかりに。その内の1人であるドーラが質問した。ドーラ「お義父さんと国王様、いつの間にそんな関係に?」デカルト「これはこれはいつぞやの受付嬢さんではありませんか?まさかのっちの娘さんだったとはね。」林田「たった今俺の息子と結婚したんだよ、だから義理の娘ね。」 横から聞き覚えのある女性が口の中で黒毛和牛をモグモグさせながら声を挟んだ、その声には光も懐かしさを感じている。女性「じゃあ私達と一緒で新婚さんって訳だ。」 声の正体は先程キスを交わした女性ホークマン・キェルダだ。光「キェルダ!!久しぶりじゃない!!」キェルダ「ついさっき新婚旅行から帰って来たのよ。」光「えらく長めの新婚旅行だったのね。」キェルダ「あんたは暫く仕事を休める位稼いだみたいじゃない。」光「流石、言ってくれるじゃん。」2人「あはは・・・。」 2人が談笑している中、バルタンの兄・ウェインとホークマンの弟

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」86~90

    -86 超新鮮で大胆なBBQ- ガイの軽トラで1頭買いした黒毛和牛を林田家の裏庭へと運ぶと、今か今かと待つ人々が歓声を上げていた。その中には光が招待した結愛社長もいる、現場には大きなまな板と綺麗な包丁などが並べられ解体の準備がされていた。 丁度その頃、焼き肉屋の御厨板長と板前をしているウェアタイガーのヤンチが到着した。御厨「今夜はご招待頂きありがとうございます、ただ私達も召し上がって宜しいのでしょうか。」光「勿論です、お2人も楽しんで行って下さいね。」ヤンチ「さてと・・・、早速解体していきますか。」女性達「私達も是非手伝わせて貰おうかね。」 声の方向に振り向くとエプロン姿をしたネスタ林田、そしてまさかの貝塚結愛がいた。ヤンチ「お2人さん・・・、本気ですか?」ネスタ「あら、私はドワーフだよ。舐めて貰っては困るね。」 昔からドワーフの一族は身のために色々な技術を何でも習得するという伝統があった、牛肉の解体技術もその1つだ。ヤンチ「でも何で社長さんまで?」結愛「実は私も見分を広げる為にドワーフの方々から勉強させて頂いているんです、牛肉の解体もその1つです。」ネスタ「では早速やりますかね。」 鮮やかな手つきで3人が解体を進めていく。骨と骨の間に包丁を入れていき、スルッと肉が剥がされていった。結愛「さてと・・・、最初から贅沢に行きましょうか。鞍下、肩ロースです。丸々1本だからとても大きいでしょう。」光「涎が出てきちゃってるよ、早く食べたいな。」御厨「さぁ、焼肉にしていきましょうか。」 結愛から受け取った大きな塊を御厨が丁寧に肉磨きと整形をして焼肉の形へと切っていく。20kgもの塊が沢山の焼肉へと変身した。御厨「では、焼いていきましょう。ヤンチ、すまんが整形を頼む。」ヤンチ「あいよ、プロが2人もいるから解体は大丈夫そうですもん。」 御厨が炭火の網の上に肉を乗せ焼いていった、そこら中にいい香りが広がる。光「この匂いだけでビールが行けちゃいそう。」御厨「さぁ、焼けましたよ。塩と山葵でお召し上がり下さい。購入されたご本人からどうぞ。」光「塩と山葵がお肉の甘みを引き立てて美味しい!!」 光がビールを一気に煽る、何とも幸せそうだ。作業中の結愛やネスタ、そして焼き肉屋の2人にも振舞う。結愛「たまりませんね、ビールが美味しい。」光「今日

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」81~85

    -81 集合- 魔学校長のマイヤは林田を許し、早速持ち帰った映像やマイヤの発言が証拠として使えるかを皆で確認しようと提案した。光明「まずはこちらをご覧ください。」 マイヤが義弘と思われる覆面男に催眠術を掛けられた場面だ、催眠術を掛けられマイヤが自らの手で書類を書き換えたあの場面。マイヤ「ノームを含む私達アーク・エルフの一族は催眠術に強い特殊スキルを祖先からの遺伝で持っているのですが、まさかその長たる私が・・・。」ドーラ「じいちゃん・・・、思い出したくないなら無理に思い出さなくていいよ。」マイヤ「いや、良いんだ。捜査に・・・、いやノームの仕事に協力出来るなら喜んでやるよ。」 映像内で書類を書き換えた後、マイヤがぐっすりと眠っているのが何よりの証拠だ。 次に鏡台にあったもう一つのカメラで撮影した映像を再生した。光明「これはマイヤさんが鏡台に仕掛けてあるもう一台の監視カメラの映像です、少し音が小さいので最初の映像から音声を抜粋してありますが勿論同時刻に同じ場所で撮影された物ですので問題は無いかと。」 暑さが故に義弘が覆面を取った場面を再生した。結愛「義弘が・・・、あれ程の魔力を・・・。」林田「しかし、いつの間に魔力を得て催眠術の修業を行ったのでしょうか。」マイヤ「原因はリンガルスにあると思われます、きっと短期間ではありますがリンガルスの下で修業したからだと思われます。また、無理矢理な方法で魔力を引き出したのかと。」結愛「しかし・・・、ただの魔学校の職員がどうして?」マイヤ「理事長、恐れながら申し上げます。リンガルスは大賢者なのです!!」林田・ドーラ・結愛「大賢者?!」結愛「・・・、って何ですか?」羽田「これがデジャヴってやつですか?」光明「以前にもあったんですね・・・。」 確かに以前にもあった会話だ、ただ重要なのはそこだけではない。義弘が大賢者の力を得たのはマイヤに催眠術を掛ける為だけなのだろうか。光明「そう言えば、レースの方は?」林田「テレビをつけますね。ただ・・・、爆弾処理の方が心配ですね。」男性「それなら安心して下せぇ。」林田「その声は・・・。」 林田が聞き覚えがある声に振り向くとそこには結愛や利通と共に競馬場に仕掛けられた爆弾の処理に向かったダンラルタ王国警察の爆弾処理班がいた。プニ「おやっさん、安心して下さい

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」76~80

    -76 リンガルス- パルライは羽田からSDカードを受け取るとカメラに挿入しより強力な魔力を込め始めた。羽田「あの・・・、パルライさん?」デカルト「パルライはネクロマンサー、リッチの下で修業した魔法使いなんです。ネフェテルサ王国の警察署には今彼の師匠も来ているのですよ。」 そうこうしているうちにパルライが作業を終え、一息ついた。パルライ「よしっ・・・、終わりました。見てみましょう。」 カメラの小さい映像を3人の大人が凝視する。3人「こ・・・、これは・・・。」 映像では黒い覆面をしたリンガルスと思われる人物がパソコンで何かを編集している。デカルト「拡大出来たらな・・・。」パルライ「やってみますか。」 パルライが魔力を込め、パソコンの映像がくっきりと見えるまで拡大した。「首席入学者」の文字の下にある「梶岡浩章」の文字を消して「リラン・クァーデン」に変更していた。パルライ「確定ですね。」デカルト「待て、どこかへ向かうぞ。」 覆面男は書類を印刷してそそくさとパソコンの電源を切ると部屋を出た。羽田「この建物には魔学校長の部屋があったはずです、それと主要警備室。」パルライ「そこに行きましょう。」 3人はパルライの魔法で主要警備室に『瞬間移動』するとそこには警備員が3名いたのだが全員眠ってしまっていたので羽田が慌ててたたき起こした。羽田「しっかりしろ、警備はどうしたんだ!!」警備員「えっ・・・?痛た・・・、羽田さんじゃないですか。どうしてここに?」羽田「首席入学者が何者かによって改ざんされてんだよ、しかもただ事じゃない!!首謀者の1人が義弘なんだよ!!」警備員「何ですって?!大変じゃないですか!!ただ俺達は覆面をしていた奴が後ろから近づいてきてからどうやらずっと眠ってしまっていたらしく、記憶が無いのです。」 こっそりと『審議判定』の魔法を使用していたパルライが首を縦に振る。パルライ「本当の事を言っている様です。警備員さん、恐れ入りますが少し場所を開けて頂けませんでしょうか。」警備員「あの・・・、失礼ですがどちら様ですか?」羽田「バルファイ王国とダンラルタ王国の国王様方だ。」警備員「申し訳ございません!!どうぞ!!」パルライ「そ・・・、そんな身構えないで下さい。堅苦しいの苦手ですので。では、やりますよ。」 パルライが魔力を流

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」71~75

    -71 捜査が続く中- 林田の『連絡』による電話に驚きを隠せない刑務所長に林田が質問した。刑務所長(電話)「都市伝説の通り・・・。」林田「今はそんな事言っている場合じゃない、お前の所に貝塚義弘がいただろ。パワハラ等で捕まった貝塚だ。」刑務所長「あいつなら逮捕された次の日に重岡とかいう投資家が保釈金を払って速攻出て行ったじゃないか、全国でニュースになっていたぜ。」 林田がただ度忘れしていたのだが、刑務所長が改めて言うには義弘の指示で保釈金を支払った重岡が車で義弘を県外の山奥に連れて行くとそこからは2人とも音信不通となったとの事で、新たな悪だくみを行っていた可能性があった。そこで結愛と光明、そして羽田を含む多くの黒服達が突然消えたと聞き、何らかの方法で追って来たかもしれない。林田「因みに結愛さんはどうやってこの世界に?それとここに来てからはどうやって?」結愛(無線)「これも数年前の話です、日本で忙しくしていた私が久々のゆったりとした休日を光明と楽しんでいた時、突然私たちの目の前に幻覚の様な竜巻が現れてそこにいた全員が吹き飛ばされたんです。そのあと目が覚めたらこの世界に。『作成』のスキルもその時知りました、それから少しの間バルファイ王国にある魔学校に通いながらこの世界の事を少しずつ調べて行ったんです。それから貝塚財閥の教育支援の一環として『転送』で持って来た財産の1部を寄付してネフェテルサ王国の孤児院を貝塚学園の小分校に、またバルファイ王国の魔学校を高等魔学校と貝塚財閥の支社にさせて頂いているのです。因みにレースの収益でダンラルタ王国に分校を建設する予定でした。」林田「なるほど、それは我々にも学園を守る義務がありますね。」 その守るべき学園に義弘の魔の手が触れようとしているかもしれない、それは流石に防がなければならない。 その頃、未だトップが⑨番車のまま遂に100周目を迎えようとしているレース場の脇にあるとある施設でバルファイ王国軍の将軍達がひっそりと1人過ごしていた国王を説得していた。バルファイ王国にあるホームストレート横には国王本人が自らの分身を忍ばせていた、分身と言えど思考等が本人とそのまま繋がっているので各々の場所に国王のオリジナルが存在している様な状態となっている。ただ分身は空の鎧に魂を魔力でくっつけているだけのもので、それが仮の姿として一

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」66~70

    -66 一方で- 恋人たちが現場に戻って来たのはプニ達が爆弾を『処理』し終えてから十数分経過してからの事だった。2人は口の周りが不自然に明るく光り表情が少し赤くなっている、髪が少し乱れているのは言うまでもない。プニ「お前ら・・・、ううむ・・・。」 プニは仕事を再開すべきだと気持ちを押し殺した、何をしていたかだなんて正直想像もしたくない。 ただ林田警部が無線の向こうで呆れ顔になってしまっているのは確かだ、幸いケルベロスやレッドドラゴン達は気付いていないらしくその場を何としても納めなくてはと冷静に対処する事にした。 プニの無線機から林田警部の声が聞こえる、どうやら恋人たちは無線機の電源を切っていたらしい。林田(無線)「利通君・・・、そしてノーム君・・・、君らが無線機の電源を切ってまで2人きりになりたい気持ちは私も大人だから分からんでもないが・・・。」ドーラ「そんな・・・、照れるじゃないですか。」林田(無線)「ぶっ・・・。」 ドーラが林田に何をしたかはその場の全員が分からなかったが何かしらの攻撃がなされたらしい、多分ビンタに近い物だろう。取り敢えず林田は偶然を装う事にした、どう頑張ってもドーラが何かをした証拠が見つからないのだ。林田(無線)「失礼・・・。さてと、爆弾の方はどうなっているかね?」ドーラ「お父さ・・・、いや警部、1つがコインロッカーの中に見つかりました。爆弾処理班の方々によるとまだ複数個隠されているかとの事です。」林田(無線)「ノーム君・・・、まさかこの言葉を言う事になるとは思わなかったが、君にお父さんと呼ばれる筋合いは無いよ。取り敢えず見つかった爆弾はどうしたのかね?」利通「えっと・・・。」プニ「見つけた1個は俺達で処理したっす。」ケルベロス①「ただ競馬場内から爆弾の匂いがプンプンしますぜ、林田の旦那。」 相変わらずのキャラを保っているが仕事はしっかりと行っているので文句は言わないでおくことにした、別の者達には日を改めて。 一方、銃刀法違反の現行犯で逮捕した犯人をネフェテルサ王国の警察署に巡査が輸送し、それに合わせ警備本部にいた林田警部が一時的に署に戻り取り調べを行った。犯人によると自分は金で雇われただけだと言う、真犯人からは電話での指示を受けていたが非通知での着信だった為番号は知らないそうだ。そして分かった事がもう1つ、

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3.「異世界ほのぼの日記」61~65

    -61 昨日の敵は今日の友と言うが- 3位グループの3台は今までずっと共に走っていた為か、いつの間にか絆が生まれていた。④ドライバー「お前ら、大丈夫か?!悪かった!怪我してないか?!」⑫ドライバー「こちらこそ悪い・・・、あそこで俺が無理に妨害していなかったら・・・。⑧番車の野郎は・・・、無・・・。」⑧ドライバー「野郎じゃないわよ、失礼ね。」⑫ドライバー「そうか・・・、悪かった。怪我は無いか?」⑧ドライバー「私は大丈夫、とりあえずレースの邪魔にならない様に端に避けていましょう、奇跡的にも1台が通れる位の空間は空いてるみたいだからレースに問題は無いと思うわ。」⑫ドライバー「とにかく怪我が無かったらそれでいい、レースはまたの機会に参加すればいいさ。とりあえず端に・・・。」 どこかで会話を聞いていたのか実況のカバーサが一言。カバーサ「お2人さん、良い雰囲気ですがレース自体は一時的に予備のルートを使って続行していますのでご心配なく。」⑧ドライバー「そうなの?・・・って、アンタどこで聞いてんのよ!!」 ⑧番車のドライバーに追及されるとカバーサは慌てて胡麻化した。カバーサ「おや、1匹のコッカトリスが車番プレートを両手に持って自らコース飛んでますよ。えっと・・・、こちらは④番車のドライバーさんですか?」④ドライバー「俺は・・・、死んだ⑧番と俺を気遣ってくれた⑫番の為に・・・、それと自分達の為に完走だけでもするんだ・・・!!」⑧ドライバー「失礼ね、私まだ死んでないわよ!!」 ⑧番車のドライバーによる適格なツッコミにより一瞬会場は湧いたがレースの主催者から通達が出たのでカバーサが伝えた。カバーサ「えっと・・・、④番さん・・・、気合には皆が感動していますがお車で走っていませんので事故での失格は取り消されませんよ」④ドライバー「えっ・・・。」カバーサ「だから言ってるでしょ、あなた失格。今すぐコースから立ち退かないと私が自らピー(自粛)しますよ。」④ドライバー「は・・・、はいー・・・。」 ④番車のドライバーは諦めて地上に降り立つと人間の姿に戻ってから徒歩で戻って行った、背中にはとても哀愁を感じるが少し震えてもいた。カバーサ「まぁどう考えても距離的に無理なんですけどね、本人自ら立ち退いて下さったので良しとしましょう。あ、くれぐれも私は脅してませんので

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3.「異世界ほのぼの日記」56~60

    -56 レース開始直前だが- 光は出走表の場所をナルリスに聞き車券を購入しに向かっていた、まるで国民の祝日の様に老若男女が右往左往していて大混雑している。 先程1杯呑んだビールの影響か光はトイレに行きたくなったので車券売り場への道中で探すことにした。 トイレは意外過ぎるほど早く見つかり全く混雑していなかったので光はすぐに駆け込み用を済ませた。 トイレを出て車券売り場を目指す、ぷらぷらと歩いているとふんわりと優しい香りがして来たので近くを通った時少し寄ってみるかと意気込んだ。 何軒か日本に似た食べ物屋の屋台が出ている様でその内の1軒を覗いてみる事にした。光「『龍(たつ)の鱗(うろこ)』ね・・・、こんな名前の店あったかな。」 ただ一際行列が目立っており、その上光を誘った香りがその屋台からだったので光は一切迷う事無く飛び込んだ。 店の中では皆が一心不乱に丼に入った麺を啜っている。店主「いらっしゃいませ、お一人様ですか?お好きなお席へどうぞ。」 どうやらここはラーメン屋さんの屋台のようだ。他のお客さんが食べているラーメンはスープが綺麗に透き通った金色のもので、細麺。トッピングはカイワレ大根と何かを揚げているチップスらしい。(※作者が大好きなラーメンの1つです、店名は変えてますが。) カウンターにお品書きがあったのでチラリと見てみると「鯛塩ラーメン」の文字がある。光「『魚介ベースのスープで鯛の皮のチップスをトッピングした美味しいラーメンです』・・・か。」店主「お決まりですか?」光「あっ、鯛塩ラーメンをお願いします。」店主「少々お待ちください。」 屋台の隅に探していた出走表をみつけた。光「出走表頂いてもいいですか?」店主「勿論どうぞ、ラーメンが出来るまでゆっくり予想していて下さいね。」光「助かります。」 光は店の隅に行き出走表を1枚取って席に戻った、①~㉑までの車番の横にチーム名やホームストレートで行われた予選の計測タイム、スタートポジション等が書かれていた。光「確かポールポジション取った⑰ブルーボアが1番人気で、18kmのホームストレートはダントツ、ただガソリンの積載量が比較的少ない気がするな・・・。」 ピットでの給油は認められているがピットストップの回数が多いとその分逆転を許してしまう可能性が大きくなる。光「コーナリングの図を

Scan code to read on App
DMCA.com Protection Status