魔学校長のマイヤは林田を許し、早速持ち帰った映像やマイヤの発言が証拠として使えるかを皆で確認しようと提案した。
光明「まずはこちらをご覧ください。」
マイヤが義弘と思われる覆面男に催眠術を掛けられた場面だ、催眠術を掛けられマイヤが自らの手で書類を書き換えたあの場面。
マイヤ「ノームを含む私達アーク・エルフの一族は催眠術に強い特殊スキルを祖先からの遺伝で持っているのですが、まさかその長たる私が・・・。」
ドーラ「じいちゃん・・・、思い出したくないなら無理に思い出さなくていいよ。」 マイヤ「いや、良いんだ。捜査に・・・、いやノームの仕事に協力出来るなら喜んでやるよ。」映像内で書類を書き換えた後、マイヤがぐっすりと眠っているのが何よりの証拠だ。
次に鏡台にあったもう一つのカメラで撮影した映像を再生した。光明「これはマイヤさんが鏡台に仕掛けてあるもう一台の監視カメラの映像です、少し音が小さいので最初の映像から音声を抜粋してありますが勿論同時刻に同じ場所で撮影された物ですので問題は無いかと。」
暑さが故に義弘が覆面を取った場面を再生した。
結愛「義弘が・・・、あれ程の魔力を・・・。」
林田「しかし、いつの間に魔力を得て催眠術の修業を行ったのでしょうか。」 マイヤ「原因はリンガルスにあると思われます、きっと短期間ではありますがリンガルスの下で修業したからだと思われます。また、無理矢理な方法で魔力を引き出したのかと。」 結愛「しかし・・・、ただの魔学校の職員がどうして?」 マイヤ「理事長、恐れながら申し上げます。リンガルスは大賢者なのです!!」 林田・ドーラ・結愛「大賢者?!」 結愛「・・・、って何ですか?」 羽田「これがデジャヴってやつですか?」 光明「以前にもあったんですね・・・。」確かに以前にもあった会話だ、ただ重要なのはそこだけではない。義弘が大賢者の力を得たのはマイヤに催眠術を掛ける為だけなのだろうか。
光明「そう言えば、レースの方は?」
林田「テレビをつけますね。ただ・・・、爆弾処理の方が心配ですね。」 男性「それなら安心して下せぇ。」 林田「その声は・・・。」林田が聞き覚えがある声に振り向くとそこには結愛や利通と共に競馬場に仕掛けられた爆弾の処理に向かったダンラルタ王国警察の爆弾処理班がいた。
プニ「おやっさん、安心して下さいよ。ネフェテルサ王国のレースコースに仕掛けられていた爆弾の処理は無事完了しましたよ、他の2国の現場に派遣された連中からも連絡を受けやしたがもう大丈夫だって言ってました。」
ケルベロス「約1名無茶をしようとしてましたけどね。」 レッドドラゴン「プニったら人命がかかってるから俺が何とかするんだって自分が持ってた棍棒で爆弾をぶっ叩こうとしてたもんな、イヒヒヒヒ。」 林田「それにしても無事で何よりだ、良く帰って来てくれたよ。」 プニ「おやっさん。そう言えば、捜査はどうなっていますかい?」 林田「実はな・・・。」林田はプニ達に今分かっている事を事細かく全て話した、勿論「あの事」も。
爆弾処理班「何ィ?!大賢者?!」
プニ「って何・・・。」 マイヤ「この件(くだり)もう良いですから。」プニにはまた個人的に説明するとして、パルライが思い出したかのように切り出した。
パルライ「取り敢えずレースを見ましょう、⑲番車の位置が気になる。」
林田がテレビをつけると⑲番車が最後の18kmのホームストレートに入った場面であった、主催者側に情報が無い真っ黒のカフェラッテが走っている。ただ妙な位ゆっくりなのだ、時間を稼いでいるかの様に。そしてゴールしかけた瞬間に異変が起きた。
何と、観客達や関係者の目の前で車両が一瞬にして消えてしまったのだ!!-82 脅迫と協定-
実況を務めるネクロマンサーのカバーサ含む全員が目を疑った。
カバーサ「どういう事でしょうか、私にもどういう事か分かりません!!」
その瞬間、パルライに念話が飛んで来た。師匠のゲオルだ。
ゲオル(念話)「パルライ、今の見たか。」
パルライ(念話)「はい、何者かの魔術でしょうか。」 ゲオル(念話)「お前の障壁には反応があったのか?」 パルライ(念話)「悔しいですが・・・、全く。」突然消えた車両を見た全ての者が驚愕しているなか、3国中のオーロラビジョンいっぱいに見覚えのあるあの忌々しい男の顔が映った。正直光にはどうなっているか分からない。
義弘(映像)「結愛・・・、たった数年で私が人生かけて創り上げた貝塚財閥を手に入れたと勘違いしている愚かで憎たらしい馬鹿娘よ。ネフェテルサ王国にある貝塚学園小分校、バルファイ王国の貝塚学園高等魔学校、そしてそこにある貝塚財閥支社は全て私が乗っ取った。降参するなら今の内だ、すぐさまここに来て土下座しろ!!ここにいる人質がどうなっても良いのか?」
結愛は映像を見て驚いた、先程まで自分達と一緒にネフェテルサ王国警察にいたアーク・エルフのマイヤとネフェテルサ王国王宮横の教会兼孤児院にいるはずの神教のアーク・ビショップであるメイスが映っている。2人とも相当な魔力の持ち主のはずなのにあっさりと人質にされてしまい、強力な魔力で拘束されている。
義弘(映像)「この2人を解放して欲しければ今年の首席入学者が「梶岡浩章」ではなく「リラン・クァーデン」である事を認め、私に財閥の全権を戻した上で私の目の前で死んで消え失せろ!!さもなくばリンガルスの手で手に入れたこの強大な魔力で全ての建物を破壊し、全面戦争を仕掛けてやる!!」
林田「何て奴だ・・・、実の娘にあんな言い方しやがって・・・。」 結愛「いえ・・・、アイツだったら十分あり得ます。」そこにいた数名は義弘の発言にあった別の言葉に引っかかっていた、言葉だけではなく行動にも。
林田「強大な魔力であの2人を締め上げ脅迫して、この時点で奴は有罪ですよ。」
デカルト「それ所ではありません、全面戦争まで起こそうとしています。これは「3国平和協定」に違反します。」結愛は両手で拳を握り、震わせていた。
すると、映像の中の2人が結愛に声を掛けた。メイス(映像)「理事長、こんな男の言う事なんて聞く事無いわ、今すぐ逃げて!!」
マイヤ(映像)「そうです、私たちの事はどうでも良いですから!!」その言葉を聞いた義弘がガムテープで2人の口を塞ぎ、その上から魔力で口をも拘束した。
義弘(映像)「逃げるつもりか?本当に戦争を起こすぞ、俺は本気だ!!リンガルス、やれ!!」
すると、パルライと林田が突然映像に映り2人を止めようとしていた。
パルライ(映像)「やめろ!!私の国で何をしているんだ!!」
林田(映像)「少しでも動いてみろ、お前達2人の魔力を封印するぞ!!」 義弘(映像)「ふん、やれるものならやってみやがれ!!」義弘が右手を高く上げ、魔力の円盤の様なものを浮かび上がらせ林田とパルライに向けて投げつけた。
2人が防御の体勢を取ると、目の前が暗くなり叫び声が響いた後そこら中に血が飛び散った。目を開けて見てみると結愛が2人の目の前で円盤での攻撃をもろに受けている。結愛(映像)「ぐっ・・・、これは俺とあんたの問題だろ。他の人を巻き込むんじゃねぇ。」
すると、女性の声が響き義弘の体が硬直した。
女性(映像)「待ちな、あんたが今やった魔力による戦闘行為は3国の協定と法律に違反しているよ。あんた達は大賢者・・・、いや人間を名乗る資格がないね。」
義弘(映像)「貴様・・・、どこから・・・。」-83 身に覚えのある件-
バルファイ王国魔学校にて女性の声を聴いた瞬間義弘の体が硬直していた、同時に何故か林田警部がブルブルと震えている。結愛は身に覚えのある場面だなと思っていたが今は考えない事にした、ただ義弘が狼狽えている事は間違いがない。ただどうして林田も震えているのだろうか。
しかし義弘と林田警部を同時に震わせる程の言葉を言える者がこの世界にいるのだろうかと振り向くとそこには林田警部の妻、ネスタ林田がいた。ネスタ「希さん、実は『連絡』が使えるのは転生者のあんただけじゃないのさ。ただのドワーフの私にだって余裕で出来るんだよ、私を舐めないで頂戴。」
林田「そうか・・・、でもあっちの世界にお前の知り合いがいるのかい?」 ネスタ「何を言ってるさね、あっちの世界の事を全く知らないフリをしてたけど実は知り合いが沢山いるのさ。それに私ゃこの世界におけるこの会社の筆頭株主だよ、嫌な予感がしてあっちの世界の株主である宝田さんに聞いたらこんな事になっている訳さね。さて、本題に戻ろうか。義弘、あんたの勝手な行動を決して許す訳には行かないよ。3国における平和協定まで破ってこの会社を奪い返してどうするつもりだったんだい?」 義弘「愚かな馬鹿娘が下らん教育機関などに使い込んだ私の金を取り戻そうかと。」 ネスタ「何が下らないって?あんたの言う「愚かな馬鹿娘」が教育機関を支持することによって貝塚財閥はお金以上に大切な物を得たんだよ、あんたによってこの会社が失った「信頼」だ。私が何も知らないとでも思ったかい?この世界でのクァーデンとの贈収賄の事も、そしてあっちの世界の貝塚学園での独裁政治っぷりもね。今あんたがしている行動も含めたらもうあんたは重罪人さ、どっちがお馬鹿さんなんだか誰だって分かるよ!!私の旦那の仲間は私の仲間だ。だから私は筆頭株主として結愛社長に味方する、決してあんたを認めないからね!!」 義弘「言ってくれるじゃねぇか・・・、でもこうしてしまえば済む話だ!!」義弘が結愛に向けて大きな火の玉を飛ばしたが、別のより強力な魔力によって弾かれた。
義弘「何が起こった!!私は大賢者だぞ!!」
リンガルス「義弘、黙って様子を見ておけば・・・、いい加減にしろ!!俺はお前に罪を犯させる為に魔術や催眠術を教えたつもりはないぞ!!」 義弘「り、リンガルス・・・、貴様・・・、上司たる私を裏切る気か!!」 リンガルス「お前は私の上司などではない、私の上司はこちらにおられるクランデル魔学校長と貝塚理事長だ!!魔学校長、アーク・ビショップ様、大変申し訳ございません。」リンガルスがいつの間にか2人の拘束を解いていた。
義弘「ただ俺達は一緒にクァーデンから賄賂を受け取った仲だろうが!!」
林田「これの事か?」リンガルスが持っているはずの封筒を何故か林田が胸ポケットから出した。
林田「リンガルスと魔学校長には私から連絡を入れてあんたの仲間と被害者の演技をする様に頼んでたんだよ。特にリンガルスと私は警察の同僚でね、あんたから魔術の指導等を頼まれたと聞いた時にこちらの作戦に協力をお願いしたんだ。今頃リンガルス警部の部下によって贈収賄の罪でパントリー・クァーデンが逮捕されているだろうよ、リラン・クァーデンが入学すると聞いてパントリーが何かしらの動きを見せると思ってリンガルスに潜入をお願いして正解だったな。」
リンガルス「勿論お前の意志によって書き換えられたと言ってもいいこの2つの書類は受理されていない、首席入学者は予定通り「梶岡浩章」だ。ただリラン・クァーデンには罪はないから一般入学者として入学を許可するつもりだが本人が望むかどうか。」 林田「まさか梶岡が一瞬だが犯人グループの一員としてこちらを襲ってくる事は誤算だったな、しかし捜査に協力をお願いして無罪放免とさせてもらった、被害者がいた訳でもないしこちらにも非があったからな。 さてと・・・、監視カメラの映像を含め、証拠が十分に挙がっているんだ。」 林田・リンガルス「貝塚義弘、脅迫罪及び贈収賄罪、侮辱罪、魔力戦闘罪、そして「3国間戦争撲滅平和協定」違反で逮捕する!!」 リンガルス「俺が与えた魔力と魔術を悪用した上に散々こき使いやがって、待ってろよ。すぐに豚箱ぶち込んでやるからな!!」 義弘「ち・・・、畜生ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」リンガルスの部下が4人がかりで義弘をパトカーに押し込むとバルファイ王国警察署に向かって行った。
その頃、光はネフェテルサ王国のレースコース横に設置された観客席でレース裏で起こっていた大事件に硬直しながらビールを呑んでいた。そんな中、カバーサの声が響いた。カバーサ「えっと・・・、色々ありましたが今年のレースの確定をお知らせいたします。1着⑨番、2着⑮番、3着⑥番、以上でございます。ご観覧の皆様、本日までお疲れ様でございました。ご来場心よりお礼申し上げます。」
光「やったー、当たったー!!今夜は呑むぞーー!!」-84 大イベントと大事件の後-
確定放送が終わった瞬間光は飛び上がり持っていたビールの殆どをこぼしてしまったが全くもって気にしていなかった、確定オッズを確認していなかったが今までに無い位の快感を得ている様だ。こぼしたビールで衣服がぐっしょぐしょになってしまったがそんなの全く関係ない、早く払い戻しに行きたい気持ちで一杯で仕方なかった。
そんな中、会場で払戻金額等についての放送がされる。ただ魔力オーロラビジョンがずっと真っ暗なままだ。カバーサ「えー・・・、映像が出てきて・・・、ませんね。なので私の方から改めて着順確定と払い戻し金額を・・・、あ。出せますか?では皆さん、ご一緒に見て行きましょう。
改めまして今年のレースですが、1着⑨番、2着⑮番、そして3着⑥番となりました。2連単⑨-⑮の組み合わせ58790円、また3連単⑨-⑮-⑥の組み合わせ892万4360円となっております。尚、毎年の事ですがレース開始までにこちらの車券をご購入された方は払い戻し金額が倍となりますのでよろしくお願い致します。 えー、解説兼主催の・・・、今年はバルファイ国王様ですかね?今年のレースはいかがでしたでしょうか?」 パルライ「・・・。」画面に映ったパルライは事件解決の疲れからかおしゃべりなカバーサの横で静かに眠っている。
カバーサ「あのー、起きてますか?」
パルライ「・・・。」 カバーサ「スタッフさんすみませーん、強めのスタンガ・・・。」 パルライ「起きてます、起きてますから!!」慌てて起きたパルライ、電撃が苦手なのか、それともカバーサが苦手なのか慌てて起きている。
カバーサ「では気を取り直しまして、今年のレースいかがでしたでしょうか。」
パルライ「そうですね、色んな方々の人情味が出ていた一面に溢れたものだったと思いますね。やはりドライバーさん達の生の御言葉を聞けたのが大きかったかと、ただスタート時のトラップはダンラルタ王国のデカルト国王のアイデアで行った事なのですが検討しなおさなければならない様ですね。しかし、1人でずっと1着を守り逃げ切った⑨番車のドライバーさんには賞賛の拍手をさせて頂きましょう。」すると会場中から賞賛の拍手の嵐が起こった、そこでカバーサが気を利かせ⑨番車の監督に連絡を入れある提案をした。
カバーサ「⑨番車の監督さん、聞こえますか?宜しければドライバーさん本人にウィニングランをして頂くのはどうでしょうかね?」
⑨監督「少々お待ちくださいね・・・、部屋で籠っているかと思うのですが・・・。」監督はキュルアが猫と籠る部屋をこっそり覗いた、中から声が聞こえる。
キュルア「よーしよしよし、可愛いでちゅねー。まだ楽しませてくれるんでちゅか?ああ・・・、ああああああ、ああ・・・、ゴホン。何だってんだよ。」
⑨監督「いや、すまない。楽しんでくれ。あの・・・、実況さんすみません、本人一番邪魔されたくないお楽しみ時間が続いている様です。」 カバーサ「なるほど・・・、本人の意思を尊重しましょう。では皆様、ゴミは各々の会場に設置された魔術空間廃棄物庫(ゴミ箱)に入れて安全にお帰り下さいね。ではお相手はネフェテルサ王国競艇場の実況担当カバーサでございました、ありがとうございました。」 光「ラジオ番組みたいな終わり方だ・・・、取り敢えず払い戻しだね。」光は券売機に的中した車券を入れドキドキしながらその瞬間を待つ、すると紙幣取り出し口から魔力による光が差し込みそこから札束と硬貨が出てきた。大抵高額の払い戻しは窓口でというのが基本となっているが窓口の混雑対策の為、このレースの時だけ特別措置として券売機に強めの魔力が掛けられている。
超がつくほどの大金を受け取るとすぐに『アイテムボックス』に入れ、大負けしたゲオルとナルリスと共に観客席を出た。 ポケットでバイブが鳴った事に気づき電話を取り出す、画面には「林田警部」の名前が。林田(電話)「もしもし、光さんですか?実は大きな事件を解決したので関係者全員で祝賀会をしようと思っていましてね、光さんもどうですか?」
光「良いですね、事件ってオーロラビジョンで流れてたあれですよね?今日大勝しましたので予算は私が持ちます、結愛さんという方にも会ってみたいですしね。ただ・・・、隣に相変わらずのスカンピンが2人いるんですが一緒によろしいですか?」 林田(電話)「あら、景気がよさそうですね。それに大人数の方が楽しいですから大歓迎ですよ、結愛さんに言っておきますね。」-85 大金の使い道-
光は林田警部と今夜の打ち合わせを進めて行った。
林田(電話)「どうしましょう、私が何処かお店を予約しておきましょうか。」
光「いや、食材や料理を持ち寄りどこかで集まりませんか?一先ずメイン食材は私にお任せ下さい。」 林田(電話)「分かりました、では私の家の裏庭に集まりますか。」 光「あの・・・、今から食材を注文しますので「あの2人」に連絡をお願い出来ますか?」 林田(電話)「ああ・・・、「あの2人」ですね。お任せ下さい。」光には幼少の頃から夢があった、それには大金が必要だった。レースの払い戻しにより自他共に認める大金持ちになったのでその夢を叶えてやろうとした、元々この異世界に来た時に神様に大金を渡されていたが隠していたがこれで堂々とこの大きな買い物が出来る。
ただ自分の愛車は今回使用するのに2台とも厳しかった上にレース中にビールをがぶ飲みしていたのでガイにお願いして軽トラを出して貰うにした。勿論お礼としてこの後の呑み会に招待している。(※飲酒運転、ダメ、絶対!!) 一応、この為に『作成』した『強化』でこっそり車をカスタマイズしてはあるのだが・・・。光「乗るかな・・・。」
ガイ「そんなに大きい買い物をするのかい?」 光「そうですね・・・、値段的にも大きさ的にも・・・。」少し不安になりながらとある場所へと向かった。
街から出て20分程、目的地へと着くとガイの顔が蒼ざめた。ガイ「光ちゃん、冗談だろ・・・?あれ・・・、買うのか?」
光「買いますよ、子供の頃からの夢ですから。ああ・・・、興奮してきました。」 ガイ「それにしても乗る・・・、かな・・・。」 光「大丈夫ですって、私にお任せ下さい。」店に入ると店主が笑顔で2人を出迎える、店の名前が刺繍された茶色いエプロンには所々シミが付いている。何故かプニに似て少しチャラい。
店主「いらっしゃいませ、何に致しやしょう。」
光「あの、予約していた吉村ですけど。」 店主「これは失礼、吉村様ですね。お待ちしておりました。」店主は光の名を聞くと何故か襟を正し2人にキャップを渡した。
店主「こちらを被ったら奥へどうぞ。ただ吉村さん・・・、本気ですか?」
光「勿論、夢が叶う瞬間です。駄目ですか?」 店主「いえいえ、私はとても嬉しいのですが何せ初めてなものでして。」 光「私もです、ドキドキして来ました。」 店主「ご期待に沿える物があればいいのですが。」店主に店の奥へと招待された2人は大きな金庫の様な扉の中へと入って行った、明かりが消えていて真っ暗な中はひんやりととても涼しい。どうやらここは冷蔵庫、この世界で言う魔力保冷庫の様だ。
店主「明かりをつけますね。」
店主が明かりをつけると全体的に白く、所々鮮やかなピンク色をした物体がぶら下がっていた。
ガイ「光さん、これはまさか・・・。」
光「そうです、黒毛和牛1頭買いです!!」 店主「この人本気だったんだ・・・、バタン!!」冗談だと思っていた店主が顔を赤くし倒れてしまった、ガイが急いで起こす。
ガイ「大丈夫ですか?」
店主「ああ・・・、失礼いたしました。それで解体はいかがいたしましょう?」 光「実は・・・。」光は店主に耳打ちをした後、解体していないままの牛肉を大量の氷と共に軽トラの荷台に乗せ支払いに入った。
店主「ではえっとですね・・・、これ1頭で980万円頂戴致します。」
これが高い方なのか安い方なのかは分からないが光は札束を積み上げ買い上げた。
-86 超新鮮で大胆なBBQ- ガイの軽トラで1頭買いした黒毛和牛を林田家の裏庭へと運ぶと、今か今かと待つ人々が歓声を上げていた。その中には光が招待した結愛社長もいる、現場には大きなまな板と綺麗な包丁などが並べられ解体の準備がされていた。 丁度その頃、焼き肉屋の御厨板長と板前をしているウェアタイガーのヤンチが到着した。御厨「今夜はご招待頂きありがとうございます、ただ私達も召し上がって宜しいのでしょうか。」光「勿論です、お2人も楽しんで行って下さいね。」ヤンチ「さてと・・・、早速解体していきますか。」女性達「私達も是非手伝わせて貰おうかね。」 声の方向に振り向くとエプロン姿をしたネスタ林田、そしてまさかの貝塚結愛がいた。ヤンチ「お2人さん・・・、本気ですか?」ネスタ「あら、私はドワーフだよ。舐めて貰っては困るね。」 昔からドワーフの一族は身のために色々な技術を何でも習得するという伝統があった、牛肉の解体技術もその1つだ。ヤンチ「でも何で社長さんまで?」結愛「実は私も見分を広げる為にドワーフの方々から勉強させて頂いているんです、牛肉の解体もその1つです。」ネスタ「では早速やりますかね。」 鮮やかな手つきで3人が解体を進めていく。骨と骨の間に包丁を入れていき、スルッと肉が剥がされていった。結愛「さてと・・・、最初から贅沢に行きましょうか。鞍下、肩ロースです。丸々1本だからとても大きいでしょう。」光「涎が出てきちゃってるよ、早く食べたいな。」御厨「さぁ、焼肉にしていきましょうか。」 結愛から受け取った大きな塊を御厨が丁寧に肉磨きと整形をして焼肉の形へと切っていく。20kgもの塊が沢山の焼肉へと変身した。御厨「では、焼いていきましょう。ヤンチ、すまんが整形を頼む。」ヤンチ「あいよ、プロが2人もいるから解体は大丈夫そうですもん。」 御厨が炭火の網の上に肉を乗せ焼いていった、そこら中にいい香りが広がる。光「この匂いだけでビールが行けちゃいそう。」御厨「さぁ、焼けましたよ。塩と山葵でお召し上がり下さい。購入されたご本人からどうぞ。」光「塩と山葵がお肉の甘みを引き立てて美味しい!!」 光がビールを一気に煽る、何とも幸せそうだ。作業中の結愛やネスタ、そして焼き肉屋の2人にも振舞う。結愛「たまりませんね、ビールが美味しい。」光「今日
-91 空からの来客- 宴が続く中、月の輝く星空から大声が響き一同を騒然とさせた。声「この私を差し置いて、皆さんだけでお楽しみとは何事ですか?」光「な・・・、何?!」 全員が飲食をやめ空を見上げた、見覚えのある1頭のコッカトリスが3人のホークマンを連れて地上へとゆっくりと舞い降りた。背には軽装の男性が2人乗っている、林田が逃げる様にして家の中へと駆けこむ。林田「ま・・・、まずい・・・。誘うの忘れていた。」 舞い降りたコッカトリスが背に乗っていた2人を降ろし人の姿へと変わる、ダンラルタ国王であるデカルトだ。横にはホークマンである甥っ子と姪っ子が3人共揃ってお出まししている。姪っ子が背から降りた男性と軽くキスを交わす。甥っ子達はウェアウルフと取り皿を持ち、焼肉を取りに行こうとしていた。デカルト「2人も乗せていたから疲れましたよ、と言うかのっちはどこですか?」ネスタ「のっち・・・?ああ、ウチの旦那ですね。さっき家の方に走って行きましたよ。」デカルト「奥さん、かしこまらないで下さい。我々はもう友達ではないですか。」林田「そう仰って下さると助かります!!」デカルト「またそうやってかしこまる、やめろと言っただろのっちー。」林田「人前だから、それにのっちはダメだって。」 2人のやり取りを数人の女性がヒヤヒヤしながら聞いていた、1国の王に何たる態度を取っているのだと言わんばかりに。その内の1人であるドーラが質問した。ドーラ「お義父さんと国王様、いつの間にそんな関係に?」デカルト「これはこれはいつぞやの受付嬢さんではありませんか?まさかのっちの娘さんだったとはね。」林田「たった今俺の息子と結婚したんだよ、だから義理の娘ね。」 横から聞き覚えのある女性が口の中で黒毛和牛をモグモグさせながら声を挟んだ、その声には光も懐かしさを感じている。女性「じゃあ私達と一緒で新婚さんって訳だ。」 声の正体は先程キスを交わした女性ホークマン・キェルダだ。光「キェルダ!!久しぶりじゃない!!」キェルダ「ついさっき新婚旅行から帰って来たのよ。」光「えらく長めの新婚旅行だったのね。」キェルダ「あんたは暫く仕事を休める位稼いだみたいじゃない。」光「流石、言ってくれるじゃん。」2人「あはは・・・。」 2人が談笑している中、バルタンの兄・ウェインとホークマンの弟
-96 ご飯のお供②- 温かな朴葉味噌を熱々の白米に少しずつ乗せご飯を楽しむ一同、そんな中林田が懐で何かをごそごそと探し始めた。林田「次は私がご紹介させて頂いて宜しいでしょうか、ゲオルさんのお店でこれを売ってたので助かりました。」 林田は懐から小瓶を取り出すと嬉しそうに中身を自ら用意した小皿に出した、誰もが食べた事があるであろうメンマの「やわらぎ」だ。林田「そのまま食べても美味しいのですが、これを胡瓜キムチと混ぜても食感が良くてご飯にピッタリなんです。」 小皿とは別に少し大きめの器を用意し、胡瓜キムチとやわらぎを混ぜて振舞った。シャキシャキの胡瓜と柔らかなメンマがバランスよく混ざっている。メンマに和えられた辣油が味のアクセントになってご飯を誘い、それにより光と結愛はずっと箸が止まらなかった。結愛「アクセントの辣油がキムチの味を引き立てていますね、今日ご飯足りますか?」光「一応2升は用意しているんですが追加注文しないとダメかもしれませんね。」 光と結愛、そして羽田や林田のご飯のお供の時点で用意をしていた半分の1升が無くなろうとしていたので実は焦っていた。念の為、今現在もう半分の1升をお釜で炊いている状況だが無くなるのも時間の問題だろうか。林田のやわらぎ入り胡瓜キムチの出現は一同にとって大きかった、光は『瞬間移動』を利用して地下の貯蔵庫から追加の米を持って来る事にした。念の為に2升程追加を用意し、食事に戻った。 すると、家の入口の辺りから聞き覚えのある男性の声がした。男性「林田さん、林田さん?いらっしゃいますか?来ましたよー。」 その声に返事をする林田、ただ口の中には米が残っている。林田「ああ・・・、待って・・・、ましたよ・・・。裏・・・、庭に・・・、どうぞ・・・。」光「あれ?どなたか呼んだんですか?」林田「ごくん・・・、失礼しました。光さんもお会いした方ですよ。」男性「こんにちは、お久しぶりです。」 優しい笑顔で見覚えのある男性が裏庭に入って来た、この異世界で車を購入したお店の店主・珠洲田だ。珠洲田「光さん、お久しぶりですね。林田さんにご招待を頂きまして来させていただきました。私も皆さんと一緒でご飯が大好きなんです。」光「お久しぶりです、レースの映像でお見かけしましたよ。」珠洲田「これはこれはお恥ずかしい、まさか見られていたとは
1.「私の秘密-赤鬼-」佐行 院 仕事に追われ1日1日が過ぎてゆき、一般では「花金」と呼ばれる週末。明日からの土日という楽しい2日間をどう過ごそうか、それとも今夜どう楽しもうかを沢山の人たちが考えているこの時間帯、開いている店と言えば飲み屋やコンビニ、そして最近増えてきた24時間営業のスーパーぐらい。他には夜勤で働く人たちがいる工場などがちらほらとあり建物から明かりが漏れている場所がほとんどなく電灯の明かりが優しく照らされる夜の街で独身の冴えない眼鏡女子の会社員、赤江 渚(あかえ なぎさ)は家路を急いでいた。毎日朝の9時から出社しての8時間勤務、1時間休憩を含め18時が定時での退勤なのだがそういう訳にも行かない、金曜日は特になのだが帰り際に上司の取口(とりぐち)部長から必ずと言って良いほど呼び止められて書類を押し付けられ毎日の様に残業が加算されすぎており毎月60時間以上の計算となりため息の日々。正直三六協定はどこへやら・・・。ある週の金曜日、毎度の様に帰り際の渚を取口が呼び止めた。取口「渚ちゃーん、今週も頼むよ、うちのチーム書類が立て込んでいるから進めておかないとね。」渚「はーい・・・。」 正直言ってしまうと原因は取口による書類の記入ミスや漏れによるものなのだが、本人は早々と定時に上がり気の合う仲間と逃げる様に近くの繁華街へ呑みに行ってしまう。今週に至っては残業はタイムカードを切ってから行うようにとも言いだした。何て卑怯な奴なんだと、やはりブラック企業の従業員の扱いは酷いなと身をもって学んだ今日この頃。 そんな中、最近巷で噂になっている事があった。特に地元の暴走族や走り屋を中心になのだが『赤いエボⅢに見つかると警察に捕まる』との事だ。通称『赤鬼』。毎週金曜日の夜に県内の暴走族や走り屋のスポットとなっている山に4WD車1台で行っては暴走行為、走り屋行為をしている奴らを一掃しているらしい。正体は未だ不明で年齢や性別など諸々全てが分かっていない。一部の人間には『赤鬼は警察の人間だ』とも言われている。 会社でもその噂で持ちきりだった。丁度よく今日は金曜日。取口「皆聞いたか、先週の金曜日にまた『赤鬼』が出たらしいぞ。今夜も出るかもな。」女性「怖い、今夜は私も早く家に帰ろう。」渚「何言ってんの、今日も残業でしょ・・・。」女性「噂なんだけどさ、『赤鬼』
2.「最強になるために~社長令嬢の青春奪還物語~」佐行 院-①序章- 私立西野町高等学校、私服登校可能など自由な校風のこの学校に通う宝田 守(たからだ まもる)はまったりとした毎日を友人と共に過ごしていた。1コマ55分の授業を6コマ出席して幼馴染の女の子・赤城 圭(あかぎ けい)と帰る。それが守の日常。他の人と何ら変わらない普通の高校生。因みに、守と圭は同じ1年3組だ。 比較的新しい5階建ての校舎に体育館やグラウンド、また食堂があって皆が各々の時間を楽しく過ごしていた。 部活も勿論存在する。運動部や文化部、そして同行会、沢山ある。因みに守は帰宅部(面倒くさいから)、圭もそうだった。因みに運動部にはクラブハウス(部室棟)があった いつも昼休みは図書室で本を読んで過ごした。読書は大好きだ。自分ひとりの世界に入り込める。ゆっくりと本を読み没頭し、チャイムがなったら教室へと戻って授業。本当に普通の日常。 放課後は必ず寄って帰る場所がある、学校の敷地の一角に佇む「浜谷商店(はまたにしょうてん)」というお店だ。歩いてすぐだから守だけじゃなくて西野町高校に通う生徒はみな好んで寄っている。ご夫婦で経営されているお店で皆顔なじみである。ある意味第二の両親と言っても過言ではない。今日はおばちゃんが担当らしい。 守「おばちゃーん、いつものー。」おばちゃん「あいよ、あんたもこれ飽きないねぇ。いつもありがとね。」圭「おばちゃんコーラ無いのー?」おばちゃん「ごめんねー、裏見てきてもいいかい?」圭「もう喉カラカラだよー、早くー、死んじゃうよー。」おばちゃん「そんなんで死ぬわけないだろ、待ってな。」 守は大好きなメンチカツとハムカツを頬張り、圭はコーラをぐいっと飲みながら歩いて帰る。それが僕たちの1日の締めくくりだった・・・、その時が来るまでは。 3学期の終業式の日、事件は起きた。 式を終えホームルームも終わり、守は圭と浜谷商店へと向かっていった。守「あれ食わなきゃ1日が終わらねえよな。」圭「ウチも早くコーラ飲みたーい。」守「またかよ、お前好きだよなー。」 いつも通り・・・のはずだった。圭「ねえ・・・、あれ・・・。」 浜谷商店のいつもは開いていた引き戸が完璧に閉まっている。貼り紙が一枚。「お客様各位 日ごろからのご愛顧誠にありがとうございま
-⑥考査と摸試- 時が流れ数か月、今の「貝塚」になって初めての中間考査となった。以前に比べ範囲が広く感じる上に授業時間が長くなったので当然のように制限時間が長かった。ただ範囲が広くなった分頭を悩ませる生徒が多数存在したがこの考査を突破しなければ進級が危なくなる。 ただ以前理事長の義弘が夏休みなどの長期休みを廃止してしまったので、危ぶまれるものが一つ、良いようで、いや悪いようで減ってしまっていた。今回の摸試は2日かけて6教科8科目の学力を競う、自信満々のものもいればそうでないものもちらほらといた。因みに生徒番号は胸元の番号で結愛と海斗は記入不要となっている。ただそこはやはり学校の先生が考えて作った考査、工夫を凝らした問題がいっぱいだ。 琢磨は2日目の最終科目・現代文の「傍線部(※)の人物像を絵で描きなさい。(色塗り不要)」の問題をじっくりと丁寧に描いて満足感いっぱいで居眠りを決め込んでいた。「(色塗り要)」だったら何人か色ペンを出そうと焦った生徒もいたろうに。若しくは授業中に「色は塗る必要がありますか?」と質問した生徒でもいたのだろうか。中学時代の美術の授業ではあるまいて、そんなに彩り必要とは思えない。もしかして先生が気を利かせて最後の最後にジョークでもかましたのだろうか。まぁ、気にしても仕方ないかという雰囲気と共に中間考査は終わりを告げた。終了のチャイムが鳴り響く。試験官は飛井。飛井「そこまで!後ろから回答用紙のみを回収するように。」守「終わったー、とりあえず一安心だな。」飛井「おい宝田、何を言っているんだ。」 次の言葉に全員耳を疑った。飛井「今から講師の方々による摸試だぞ、早く準備せんか!」全員「何て?!」結愛「親、お・・・、お父様はその様な事は仰っていませんでしたわよ!」 結愛は一応大人の前でのお嬢様モードでいようとしたが気が動転していたのかごちゃついている。この事は義弘が誰にも言わず秘密裏に行っていた様だ。飛井と入れ替わって乃木が入ってきた。問題用紙がかなりの分厚さとなり運ぶのが大変そうだ、教卓に音を立てて置いてから一呼吸ついて試験の開始を告げた。乃木「着席してください、今から数学の問題用紙を配りますがまだ開けないで下さい。」守「どんだけの問題を詰め込んだらああなるんだよ。」圭「かなり手の込んだ問題かもしれないね。それにしてもさ、
-⑪謝罪と協力- 以前結愛が改造した校舎各所に元から設置された監視カメラのハッキングに光明が成功したとの連絡が入ったので海斗と結愛は深夜光明の元へ向かった、兄妹も光明も同様の可能性を示唆していたのだ。念のため、結愛が光明に持ち掛けていた。-数時間前-結愛「光明、ちょっといいか?」光明「ん?」結愛「俺も兄貴も考えてたんだけどな。」光明「うん。」結愛「理事長室や出入口付近以外から親父が出入りしている可能性ってないのかなってよ。」海斗「壁に隠し扉・・・的な。」光明「それは俺も考えてた。」 その時、用を済ませ化粧室から出てきた琢磨が教室に入ってきた。琢磨「何の話だよ。」光明「ん?光明か・・・、実はな・・・。」 光明が琢磨に先程までの会話の内容を伝えた。琢磨「確か監視カメラって結愛が改造してたよな。」光明「実はそのカメラの解析と改造に成功したんだよ、ちょっと見てくれるか?」 光明はパソコンに映っている監視カメラの映像を見せた。光明「これは以前結愛が以前改造した監視カメラの映像だ。念のため、監視側には以前と同様に同じ映像がずっと流れる様にいじくってある、証拠を見せないとな・・・。」琢磨「なぁ、俺も協力できねぇか?」光明「いいけど、お前がいいなら。」琢磨「前に結愛の事を疑っちまったから、なんつぅか・・・、謝りたいというか・・・。」結愛「それは仕方ねぇよ、必ずしも起こりうる事だと俺も海斗も思ってたからな。俺たちは嬉しくねぇが『貝塚』だからな。」琢磨「お前ら『坊ちゃま』と『お嬢様』だもんな。」結愛「やめろよ、そう呼ばれる度に吐き気がするんだ。」海斗「俺も。」守「演技が上手いんだな。」圭「それ褒めてんの?」守「少なくとも俺はそのつもりさ。それにこれは使えるかもしれないだろ。」結愛「『演技』か・・・。」海斗「確か『あいつら』って・・・、だよな?」全員「確かに・・・。」 そこにいた全員が共感していた、ただ今は作戦会議が優先だ。琢磨「一先ず俺がどれかの監視カメラの前に行くわ、そこでだが無線機を通して誰か何かを俺に指示してくれるか?」光明「あいよ。」 琢磨は光明からスコープや無線機を受け取ると一番近くの監視カメラへと向かった、最寄りのカメラまではさほど時間がかかることなく到着した。海斗がカメラの方へ向く。結愛「少し遊ぶか?
-⑯立入禁止部屋- 先程の様なやり取りがあった後、伊津見はしゅんとしながらまたヘッドフォンを付け捜索をし始めた。どうやら光明はあまり良い所を言わなかったようだ、煽った3人も申し訳なさそうな顔をしていた。まさに『気まずい』という言葉がぴったりだった。 トイレから戻って来た光明の表情も同じようなものだった。伊津見「何か・・・、悪かったな。」光明「俺も・・・、すまん。」結愛「というか悪いのは煽った俺達だよな、悪い。」光明「取り敢えず作戦再開だな。」伊津見「うん、また今度飯でも行こう。」光明「そうだ・・・。」伊津見「みつもん、待ってくれ!」光明「ん?」伊津見「微かだがここだけ空気の流れが違う音がしたんだよ。」琢磨「そんなのも聞こえるのか?」光明「コンコンしてみるか。」 光明はドローンで以前の様に壁をコンコンした、すると一部の壁が一瞬だが横に動いた。光明「ん?引き戸か?結愛、開けるぞ。」結愛「うん、頼む。」 光明は隠れていた引き戸を開け部屋から出るようにドローンを動かした、その先には廊下の様なものが広がっている。洋風の壁紙に赤い絨毯が敷かれた床。左右に長いものが目前に広がっていた。海斗「どっちでもいい、ゆっくりと前進してみてくれ。」 ドローンを進めていく光明、深夜だから基本真っ暗なのだが偶に電気が点灯している所を見つけたので中の様子をある程度伺えた。そして大広間っぽい場所にある階段を見つけた瞬間・・・、結愛「すまん光明、ここからさっきの場所に戻れるか?」光明は電灯を頼りに先程の場所に戻ると、結愛「やはりか・・・、ここは1階の『立入禁止部屋』だ。そこに実は扉があるんだが全く動かなかったんだよ、そういう事か・・・。」海斗「畜生・・・、親父にやられたぜ。」橘「じゃあやはり家と学校が繋がっていてここが隠し通路って訳だったんだな。」琢磨「大きく一歩前進したな。」守「でも大切なのはここからだ」圭「進もう。」 光明は慎重にドローンを動かして行った、怪しそうな場所を知るため兄妹に案内をお願いすることにした。明らかに怪しいのは他の階にある立入禁止部屋なのでそれらを捜索していく事にした。まずは2階にある部屋を探すことに。大広間にある大きな階段を上るとまた廊下が広がっていた。そこをゆっくりと進む。奥の一角に階段を見つけた。守「この階段は
-96 ご飯のお供②- 温かな朴葉味噌を熱々の白米に少しずつ乗せご飯を楽しむ一同、そんな中林田が懐で何かをごそごそと探し始めた。林田「次は私がご紹介させて頂いて宜しいでしょうか、ゲオルさんのお店でこれを売ってたので助かりました。」 林田は懐から小瓶を取り出すと嬉しそうに中身を自ら用意した小皿に出した、誰もが食べた事があるであろうメンマの「やわらぎ」だ。林田「そのまま食べても美味しいのですが、これを胡瓜キムチと混ぜても食感が良くてご飯にピッタリなんです。」 小皿とは別に少し大きめの器を用意し、胡瓜キムチとやわらぎを混ぜて振舞った。シャキシャキの胡瓜と柔らかなメンマがバランスよく混ざっている。メンマに和えられた辣油が味のアクセントになってご飯を誘い、それにより光と結愛はずっと箸が止まらなかった。結愛「アクセントの辣油がキムチの味を引き立てていますね、今日ご飯足りますか?」光「一応2升は用意しているんですが追加注文しないとダメかもしれませんね。」 光と結愛、そして羽田や林田のご飯のお供の時点で用意をしていた半分の1升が無くなろうとしていたので実は焦っていた。念の為、今現在もう半分の1升をお釜で炊いている状況だが無くなるのも時間の問題だろうか。林田のやわらぎ入り胡瓜キムチの出現は一同にとって大きかった、光は『瞬間移動』を利用して地下の貯蔵庫から追加の米を持って来る事にした。念の為に2升程追加を用意し、食事に戻った。 すると、家の入口の辺りから聞き覚えのある男性の声がした。男性「林田さん、林田さん?いらっしゃいますか?来ましたよー。」 その声に返事をする林田、ただ口の中には米が残っている。林田「ああ・・・、待って・・・、ましたよ・・・。裏・・・、庭に・・・、どうぞ・・・。」光「あれ?どなたか呼んだんですか?」林田「ごくん・・・、失礼しました。光さんもお会いした方ですよ。」男性「こんにちは、お久しぶりです。」 優しい笑顔で見覚えのある男性が裏庭に入って来た、この異世界で車を購入したお店の店主・珠洲田だ。珠洲田「光さん、お久しぶりですね。林田さんにご招待を頂きまして来させていただきました。私も皆さんと一緒でご飯が大好きなんです。」光「お久しぶりです、レースの映像でお見かけしましたよ。」珠洲田「これはこれはお恥ずかしい、まさか見られていたとは
-91 空からの来客- 宴が続く中、月の輝く星空から大声が響き一同を騒然とさせた。声「この私を差し置いて、皆さんだけでお楽しみとは何事ですか?」光「な・・・、何?!」 全員が飲食をやめ空を見上げた、見覚えのある1頭のコッカトリスが3人のホークマンを連れて地上へとゆっくりと舞い降りた。背には軽装の男性が2人乗っている、林田が逃げる様にして家の中へと駆けこむ。林田「ま・・・、まずい・・・。誘うの忘れていた。」 舞い降りたコッカトリスが背に乗っていた2人を降ろし人の姿へと変わる、ダンラルタ国王であるデカルトだ。横にはホークマンである甥っ子と姪っ子が3人共揃ってお出まししている。姪っ子が背から降りた男性と軽くキスを交わす。甥っ子達はウェアウルフと取り皿を持ち、焼肉を取りに行こうとしていた。デカルト「2人も乗せていたから疲れましたよ、と言うかのっちはどこですか?」ネスタ「のっち・・・?ああ、ウチの旦那ですね。さっき家の方に走って行きましたよ。」デカルト「奥さん、かしこまらないで下さい。我々はもう友達ではないですか。」林田「そう仰って下さると助かります!!」デカルト「またそうやってかしこまる、やめろと言っただろのっちー。」林田「人前だから、それにのっちはダメだって。」 2人のやり取りを数人の女性がヒヤヒヤしながら聞いていた、1国の王に何たる態度を取っているのだと言わんばかりに。その内の1人であるドーラが質問した。ドーラ「お義父さんと国王様、いつの間にそんな関係に?」デカルト「これはこれはいつぞやの受付嬢さんではありませんか?まさかのっちの娘さんだったとはね。」林田「たった今俺の息子と結婚したんだよ、だから義理の娘ね。」 横から聞き覚えのある女性が口の中で黒毛和牛をモグモグさせながら声を挟んだ、その声には光も懐かしさを感じている。女性「じゃあ私達と一緒で新婚さんって訳だ。」 声の正体は先程キスを交わした女性ホークマン・キェルダだ。光「キェルダ!!久しぶりじゃない!!」キェルダ「ついさっき新婚旅行から帰って来たのよ。」光「えらく長めの新婚旅行だったのね。」キェルダ「あんたは暫く仕事を休める位稼いだみたいじゃない。」光「流石、言ってくれるじゃん。」2人「あはは・・・。」 2人が談笑している中、バルタンの兄・ウェインとホークマンの弟
-86 超新鮮で大胆なBBQ- ガイの軽トラで1頭買いした黒毛和牛を林田家の裏庭へと運ぶと、今か今かと待つ人々が歓声を上げていた。その中には光が招待した結愛社長もいる、現場には大きなまな板と綺麗な包丁などが並べられ解体の準備がされていた。 丁度その頃、焼き肉屋の御厨板長と板前をしているウェアタイガーのヤンチが到着した。御厨「今夜はご招待頂きありがとうございます、ただ私達も召し上がって宜しいのでしょうか。」光「勿論です、お2人も楽しんで行って下さいね。」ヤンチ「さてと・・・、早速解体していきますか。」女性達「私達も是非手伝わせて貰おうかね。」 声の方向に振り向くとエプロン姿をしたネスタ林田、そしてまさかの貝塚結愛がいた。ヤンチ「お2人さん・・・、本気ですか?」ネスタ「あら、私はドワーフだよ。舐めて貰っては困るね。」 昔からドワーフの一族は身のために色々な技術を何でも習得するという伝統があった、牛肉の解体技術もその1つだ。ヤンチ「でも何で社長さんまで?」結愛「実は私も見分を広げる為にドワーフの方々から勉強させて頂いているんです、牛肉の解体もその1つです。」ネスタ「では早速やりますかね。」 鮮やかな手つきで3人が解体を進めていく。骨と骨の間に包丁を入れていき、スルッと肉が剥がされていった。結愛「さてと・・・、最初から贅沢に行きましょうか。鞍下、肩ロースです。丸々1本だからとても大きいでしょう。」光「涎が出てきちゃってるよ、早く食べたいな。」御厨「さぁ、焼肉にしていきましょうか。」 結愛から受け取った大きな塊を御厨が丁寧に肉磨きと整形をして焼肉の形へと切っていく。20kgもの塊が沢山の焼肉へと変身した。御厨「では、焼いていきましょう。ヤンチ、すまんが整形を頼む。」ヤンチ「あいよ、プロが2人もいるから解体は大丈夫そうですもん。」 御厨が炭火の網の上に肉を乗せ焼いていった、そこら中にいい香りが広がる。光「この匂いだけでビールが行けちゃいそう。」御厨「さぁ、焼けましたよ。塩と山葵でお召し上がり下さい。購入されたご本人からどうぞ。」光「塩と山葵がお肉の甘みを引き立てて美味しい!!」 光がビールを一気に煽る、何とも幸せそうだ。作業中の結愛やネスタ、そして焼き肉屋の2人にも振舞う。結愛「たまりませんね、ビールが美味しい。」光「今日
-81 集合- 魔学校長のマイヤは林田を許し、早速持ち帰った映像やマイヤの発言が証拠として使えるかを皆で確認しようと提案した。光明「まずはこちらをご覧ください。」 マイヤが義弘と思われる覆面男に催眠術を掛けられた場面だ、催眠術を掛けられマイヤが自らの手で書類を書き換えたあの場面。マイヤ「ノームを含む私達アーク・エルフの一族は催眠術に強い特殊スキルを祖先からの遺伝で持っているのですが、まさかその長たる私が・・・。」ドーラ「じいちゃん・・・、思い出したくないなら無理に思い出さなくていいよ。」マイヤ「いや、良いんだ。捜査に・・・、いやノームの仕事に協力出来るなら喜んでやるよ。」 映像内で書類を書き換えた後、マイヤがぐっすりと眠っているのが何よりの証拠だ。 次に鏡台にあったもう一つのカメラで撮影した映像を再生した。光明「これはマイヤさんが鏡台に仕掛けてあるもう一台の監視カメラの映像です、少し音が小さいので最初の映像から音声を抜粋してありますが勿論同時刻に同じ場所で撮影された物ですので問題は無いかと。」 暑さが故に義弘が覆面を取った場面を再生した。結愛「義弘が・・・、あれ程の魔力を・・・。」林田「しかし、いつの間に魔力を得て催眠術の修業を行ったのでしょうか。」マイヤ「原因はリンガルスにあると思われます、きっと短期間ではありますがリンガルスの下で修業したからだと思われます。また、無理矢理な方法で魔力を引き出したのかと。」結愛「しかし・・・、ただの魔学校の職員がどうして?」マイヤ「理事長、恐れながら申し上げます。リンガルスは大賢者なのです!!」林田・ドーラ・結愛「大賢者?!」結愛「・・・、って何ですか?」羽田「これがデジャヴってやつですか?」光明「以前にもあったんですね・・・。」 確かに以前にもあった会話だ、ただ重要なのはそこだけではない。義弘が大賢者の力を得たのはマイヤに催眠術を掛ける為だけなのだろうか。光明「そう言えば、レースの方は?」林田「テレビをつけますね。ただ・・・、爆弾処理の方が心配ですね。」男性「それなら安心して下せぇ。」林田「その声は・・・。」 林田が聞き覚えがある声に振り向くとそこには結愛や利通と共に競馬場に仕掛けられた爆弾の処理に向かったダンラルタ王国警察の爆弾処理班がいた。プニ「おやっさん、安心して下さい
-76 リンガルス- パルライは羽田からSDカードを受け取るとカメラに挿入しより強力な魔力を込め始めた。羽田「あの・・・、パルライさん?」デカルト「パルライはネクロマンサー、リッチの下で修業した魔法使いなんです。ネフェテルサ王国の警察署には今彼の師匠も来ているのですよ。」 そうこうしているうちにパルライが作業を終え、一息ついた。パルライ「よしっ・・・、終わりました。見てみましょう。」 カメラの小さい映像を3人の大人が凝視する。3人「こ・・・、これは・・・。」 映像では黒い覆面をしたリンガルスと思われる人物がパソコンで何かを編集している。デカルト「拡大出来たらな・・・。」パルライ「やってみますか。」 パルライが魔力を込め、パソコンの映像がくっきりと見えるまで拡大した。「首席入学者」の文字の下にある「梶岡浩章」の文字を消して「リラン・クァーデン」に変更していた。パルライ「確定ですね。」デカルト「待て、どこかへ向かうぞ。」 覆面男は書類を印刷してそそくさとパソコンの電源を切ると部屋を出た。羽田「この建物には魔学校長の部屋があったはずです、それと主要警備室。」パルライ「そこに行きましょう。」 3人はパルライの魔法で主要警備室に『瞬間移動』するとそこには警備員が3名いたのだが全員眠ってしまっていたので羽田が慌ててたたき起こした。羽田「しっかりしろ、警備はどうしたんだ!!」警備員「えっ・・・?痛た・・・、羽田さんじゃないですか。どうしてここに?」羽田「首席入学者が何者かによって改ざんされてんだよ、しかもただ事じゃない!!首謀者の1人が義弘なんだよ!!」警備員「何ですって?!大変じゃないですか!!ただ俺達は覆面をしていた奴が後ろから近づいてきてからどうやらずっと眠ってしまっていたらしく、記憶が無いのです。」 こっそりと『審議判定』の魔法を使用していたパルライが首を縦に振る。パルライ「本当の事を言っている様です。警備員さん、恐れ入りますが少し場所を開けて頂けませんでしょうか。」警備員「あの・・・、失礼ですがどちら様ですか?」羽田「バルファイ王国とダンラルタ王国の国王様方だ。」警備員「申し訳ございません!!どうぞ!!」パルライ「そ・・・、そんな身構えないで下さい。堅苦しいの苦手ですので。では、やりますよ。」 パルライが魔力を流
-71 捜査が続く中- 林田の『連絡』による電話に驚きを隠せない刑務所長に林田が質問した。刑務所長(電話)「都市伝説の通り・・・。」林田「今はそんな事言っている場合じゃない、お前の所に貝塚義弘がいただろ。パワハラ等で捕まった貝塚だ。」刑務所長「あいつなら逮捕された次の日に重岡とかいう投資家が保釈金を払って速攻出て行ったじゃないか、全国でニュースになっていたぜ。」 林田がただ度忘れしていたのだが、刑務所長が改めて言うには義弘の指示で保釈金を支払った重岡が車で義弘を県外の山奥に連れて行くとそこからは2人とも音信不通となったとの事で、新たな悪だくみを行っていた可能性があった。そこで結愛と光明、そして羽田を含む多くの黒服達が突然消えたと聞き、何らかの方法で追って来たかもしれない。林田「因みに結愛さんはどうやってこの世界に?それとここに来てからはどうやって?」結愛(無線)「これも数年前の話です、日本で忙しくしていた私が久々のゆったりとした休日を光明と楽しんでいた時、突然私たちの目の前に幻覚の様な竜巻が現れてそこにいた全員が吹き飛ばされたんです。そのあと目が覚めたらこの世界に。『作成』のスキルもその時知りました、それから少しの間バルファイ王国にある魔学校に通いながらこの世界の事を少しずつ調べて行ったんです。それから貝塚財閥の教育支援の一環として『転送』で持って来た財産の1部を寄付してネフェテルサ王国の孤児院を貝塚学園の小分校に、またバルファイ王国の魔学校を高等魔学校と貝塚財閥の支社にさせて頂いているのです。因みにレースの収益でダンラルタ王国に分校を建設する予定でした。」林田「なるほど、それは我々にも学園を守る義務がありますね。」 その守るべき学園に義弘の魔の手が触れようとしているかもしれない、それは流石に防がなければならない。 その頃、未だトップが⑨番車のまま遂に100周目を迎えようとしているレース場の脇にあるとある施設でバルファイ王国軍の将軍達がひっそりと1人過ごしていた国王を説得していた。バルファイ王国にあるホームストレート横には国王本人が自らの分身を忍ばせていた、分身と言えど思考等が本人とそのまま繋がっているので各々の場所に国王のオリジナルが存在している様な状態となっている。ただ分身は空の鎧に魂を魔力でくっつけているだけのもので、それが仮の姿として一
-66 一方で- 恋人たちが現場に戻って来たのはプニ達が爆弾を『処理』し終えてから十数分経過してからの事だった。2人は口の周りが不自然に明るく光り表情が少し赤くなっている、髪が少し乱れているのは言うまでもない。プニ「お前ら・・・、ううむ・・・。」 プニは仕事を再開すべきだと気持ちを押し殺した、何をしていたかだなんて正直想像もしたくない。 ただ林田警部が無線の向こうで呆れ顔になってしまっているのは確かだ、幸いケルベロスやレッドドラゴン達は気付いていないらしくその場を何としても納めなくてはと冷静に対処する事にした。 プニの無線機から林田警部の声が聞こえる、どうやら恋人たちは無線機の電源を切っていたらしい。林田(無線)「利通君・・・、そしてノーム君・・・、君らが無線機の電源を切ってまで2人きりになりたい気持ちは私も大人だから分からんでもないが・・・。」ドーラ「そんな・・・、照れるじゃないですか。」林田(無線)「ぶっ・・・。」 ドーラが林田に何をしたかはその場の全員が分からなかったが何かしらの攻撃がなされたらしい、多分ビンタに近い物だろう。取り敢えず林田は偶然を装う事にした、どう頑張ってもドーラが何かをした証拠が見つからないのだ。林田(無線)「失礼・・・。さてと、爆弾の方はどうなっているかね?」ドーラ「お父さ・・・、いや警部、1つがコインロッカーの中に見つかりました。爆弾処理班の方々によるとまだ複数個隠されているかとの事です。」林田(無線)「ノーム君・・・、まさかこの言葉を言う事になるとは思わなかったが、君にお父さんと呼ばれる筋合いは無いよ。取り敢えず見つかった爆弾はどうしたのかね?」利通「えっと・・・。」プニ「見つけた1個は俺達で処理したっす。」ケルベロス①「ただ競馬場内から爆弾の匂いがプンプンしますぜ、林田の旦那。」 相変わらずのキャラを保っているが仕事はしっかりと行っているので文句は言わないでおくことにした、別の者達には日を改めて。 一方、銃刀法違反の現行犯で逮捕した犯人をネフェテルサ王国の警察署に巡査が輸送し、それに合わせ警備本部にいた林田警部が一時的に署に戻り取り調べを行った。犯人によると自分は金で雇われただけだと言う、真犯人からは電話での指示を受けていたが非通知での着信だった為番号は知らないそうだ。そして分かった事がもう1つ、
-61 昨日の敵は今日の友と言うが- 3位グループの3台は今までずっと共に走っていた為か、いつの間にか絆が生まれていた。④ドライバー「お前ら、大丈夫か?!悪かった!怪我してないか?!」⑫ドライバー「こちらこそ悪い・・・、あそこで俺が無理に妨害していなかったら・・・。⑧番車の野郎は・・・、無・・・。」⑧ドライバー「野郎じゃないわよ、失礼ね。」⑫ドライバー「そうか・・・、悪かった。怪我は無いか?」⑧ドライバー「私は大丈夫、とりあえずレースの邪魔にならない様に端に避けていましょう、奇跡的にも1台が通れる位の空間は空いてるみたいだからレースに問題は無いと思うわ。」⑫ドライバー「とにかく怪我が無かったらそれでいい、レースはまたの機会に参加すればいいさ。とりあえず端に・・・。」 どこかで会話を聞いていたのか実況のカバーサが一言。カバーサ「お2人さん、良い雰囲気ですがレース自体は一時的に予備のルートを使って続行していますのでご心配なく。」⑧ドライバー「そうなの?・・・って、アンタどこで聞いてんのよ!!」 ⑧番車のドライバーに追及されるとカバーサは慌てて胡麻化した。カバーサ「おや、1匹のコッカトリスが車番プレートを両手に持って自らコース飛んでますよ。えっと・・・、こちらは④番車のドライバーさんですか?」④ドライバー「俺は・・・、死んだ⑧番と俺を気遣ってくれた⑫番の為に・・・、それと自分達の為に完走だけでもするんだ・・・!!」⑧ドライバー「失礼ね、私まだ死んでないわよ!!」 ⑧番車のドライバーによる適格なツッコミにより一瞬会場は湧いたがレースの主催者から通達が出たのでカバーサが伝えた。カバーサ「えっと・・・、④番さん・・・、気合には皆が感動していますがお車で走っていませんので事故での失格は取り消されませんよ」④ドライバー「えっ・・・。」カバーサ「だから言ってるでしょ、あなた失格。今すぐコースから立ち退かないと私が自らピー(自粛)しますよ。」④ドライバー「は・・・、はいー・・・。」 ④番車のドライバーは諦めて地上に降り立つと人間の姿に戻ってから徒歩で戻って行った、背中にはとても哀愁を感じるが少し震えてもいた。カバーサ「まぁどう考えても距離的に無理なんですけどね、本人自ら立ち退いて下さったので良しとしましょう。あ、くれぐれも私は脅してませんので
-56 レース開始直前だが- 光は出走表の場所をナルリスに聞き車券を購入しに向かっていた、まるで国民の祝日の様に老若男女が右往左往していて大混雑している。 先程1杯呑んだビールの影響か光はトイレに行きたくなったので車券売り場への道中で探すことにした。 トイレは意外過ぎるほど早く見つかり全く混雑していなかったので光はすぐに駆け込み用を済ませた。 トイレを出て車券売り場を目指す、ぷらぷらと歩いているとふんわりと優しい香りがして来たので近くを通った時少し寄ってみるかと意気込んだ。 何軒か日本に似た食べ物屋の屋台が出ている様でその内の1軒を覗いてみる事にした。光「『龍(たつ)の鱗(うろこ)』ね・・・、こんな名前の店あったかな。」 ただ一際行列が目立っており、その上光を誘った香りがその屋台からだったので光は一切迷う事無く飛び込んだ。 店の中では皆が一心不乱に丼に入った麺を啜っている。店主「いらっしゃいませ、お一人様ですか?お好きなお席へどうぞ。」 どうやらここはラーメン屋さんの屋台のようだ。他のお客さんが食べているラーメンはスープが綺麗に透き通った金色のもので、細麺。トッピングはカイワレ大根と何かを揚げているチップスらしい。(※作者が大好きなラーメンの1つです、店名は変えてますが。) カウンターにお品書きがあったのでチラリと見てみると「鯛塩ラーメン」の文字がある。光「『魚介ベースのスープで鯛の皮のチップスをトッピングした美味しいラーメンです』・・・か。」店主「お決まりですか?」光「あっ、鯛塩ラーメンをお願いします。」店主「少々お待ちください。」 屋台の隅に探していた出走表をみつけた。光「出走表頂いてもいいですか?」店主「勿論どうぞ、ラーメンが出来るまでゆっくり予想していて下さいね。」光「助かります。」 光は店の隅に行き出走表を1枚取って席に戻った、①~㉑までの車番の横にチーム名やホームストレートで行われた予選の計測タイム、スタートポジション等が書かれていた。光「確かポールポジション取った⑰ブルーボアが1番人気で、18kmのホームストレートはダントツ、ただガソリンの積載量が比較的少ない気がするな・・・。」 ピットでの給油は認められているがピットストップの回数が多いとその分逆転を許してしまう可能性が大きくなる。光「コーナリングの図を