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3. 「異世界ほのぼの日記」76~80

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-01-21 11:49:17

-76 リンガルス-

 パルライは羽田からSDカードを受け取るとカメラに挿入しより強力な魔力を込め始めた。

羽田「あの・・・、パルライさん?」

デカルト「パルライはネクロマンサー、リッチの下で修業した魔法使いなんです。ネフェテルサ王国の警察署には今彼の師匠も来ているのですよ。」

 そうこうしているうちにパルライが作業を終え、一息ついた。

パルライ「よしっ・・・、終わりました。見てみましょう。」

 カメラの小さい映像を3人の大人が凝視する。

3人「こ・・・、これは・・・。」

 映像では黒い覆面をしたリンガルスと思われる人物がパソコンで何かを編集している。

デカルト「拡大出来たらな・・・。」

パルライ「やってみますか。」

 パルライが魔力を込め、パソコンの映像がくっきりと見えるまで拡大した。「首席入学者」の文字の下にある「梶岡浩章」の文字を消して「リラン・クァーデン」に変更していた。

パルライ「確定ですね。」

デカルト「待て、どこかへ向かうぞ。」

 覆面男は書類を印刷してそそくさとパソコンの電源を切ると部屋を出た。

羽田「この建物には魔学校長の部屋があったはずです、それと主要警備室。」

パルライ「そこに行きましょう。」

 3人はパルライの魔法で主要警備室に『瞬間移動』するとそこには警備員が3名いたのだが全員眠ってしまっていたので羽田が慌ててたたき起こした。

羽田「しっかりしろ、警備はどうしたんだ!!」

警備員「えっ・・・?痛た・・・、羽田さんじゃないですか。どうしてここに?」

羽田「首席入学者が何者かによって改ざんされてんだよ、しかもただ事じゃない!!首謀者の1人が義弘なんだよ!!」

警備員「何ですって?!大変じゃないですか!!ただ俺達は覆面をしていた奴が後ろから近づいてきてからどうやらずっと眠ってしまっていたらしく、記憶が無いのです。」

 こっそりと『審議判定』の魔法を使用していたパルライが首を縦に振る。

パルライ「本当の事を言っている様です。警備員さん、恐れ入りますが少し場所を開けて頂けませんでしょうか。」

警備員「あの・・・、失礼ですがどちら様ですか?」

羽田「バルファイ王国とダンラルタ王国の国王様方だ。」

警備員「申し訳ございません!!どうぞ!!」

パルライ「そ・・・、そんな身構えないで下さい。堅苦しいの苦手ですので。では、やりますよ。」

 パルライが魔力を流し込むと全ての画面が覆面の人物を映し出していた、廊下を走り魔学校長室に向かっている。

 学園全体の理事長は勿論結愛なのだが各々の学校の管理の為各学校に学校長室を置き担当者を結愛自ら決めていた、学校長にはドーラと同じで知能の高いアーク・エルフの社員を選ぶことにしている。

 3人が魔学校長室へ行くと魔学校長もすやすやと眠ってしまっていた、しかし3人の足音を聞くとすぐに起き上がった。

魔学校長「起きてます起きてます!!許して下さい!!」

羽田「魔学校長、明らかに寝てたではありませんか。」

魔学校長「羽田さんではありませんか、寝てたとは不覚。きっとまた・・・、アイツに・・・。」

羽田「アイツ?」

魔学校長「以前リンガルスに強力な催眠術を掛けられまして。」

パルライ「待ってください、確かあなた方アーク・エルフは大抵の催眠術が無効となるスキルをお持ちだったはず。」

 3人は魔学校長の次の発言に驚きを隠せなくなった。

魔学校長「リンガルスは只者ではありません、大賢者(アーク・ワイズマン)なんです!!」

-77 強大な力-

 2国の国王含む3名は魔学校長の言葉に驚愕し、思わず声を合わせて繰り返した。

3人「大賢者(アーク・ワイズマン)?!」

羽田「・・・、って何ですか?」

2国王・魔学校長「がぁーっ!!」

 声を揃えて2国の王と魔学校長が大阪のあの有名な喜劇の様にずっこけた。

魔学校長「ご存じないのに驚かれたのですか?」

羽田「つい思わず・・・、すみません。」

魔学校長「まぁ、いいでしょう。元々伝説の存在と言われてましたから。」

羽田「伝説・・・、ですか。」

 簡単に説明をするパルライ。

パルライ「現存する魔法使いで私の師匠を含むリッチ以上の魔力の持ち主で賢者(ワイズマン)と呼ばれる方々がいたのです。その中でも魔術の扱いに長けたたった数人が大賢者(アーク・ワイズマン)とよばれる様になりました、ただ元々この世界のとある小さな村に数名しか存在していなかったと確認されておらず、その村も近所の山火事の無くなってしまったという話が広がり、賢者自体もういない存在とされていたのです。」

羽田「なるほど・・・、その伝説の存在が悪さを。」

デカルト「元々賢者はその名の通り人々を正しい道へと導く存在とされていたので私自身も未だに信じる事が出来ません。」

魔学校長「しかし、リンガルスが私に催眠術をかけたのは紛れもない事実です、私も自慢ではありませんが魔法に自信がある方なのです。ただ奴の魔力は私の数倍、いや数十倍以上の強大な物でした。」

羽田「その大賢者が魔学校長に催眠術をかけてまで何をさせようとしたのでしょうか。」

 すると魔学校長が1枚の書類を3人に見せた、元々梶岡の名前が書かれていたと思われる場所に修正液が塗られその上にペンで「リラン・クァーデン」と記入されていた。しかし、魔学校長は何処か不自然さを感じていた。

魔学校長「何処からどう見てもリンガルス本人の筆跡では無いのです。」

羽田「この筆跡に見覚えは?」

魔学校長「実は・・・、私の物みたいでして。ただ書いた記憶が無いのです。」

 デカルトと羽田は辺りを見回した。

魔学校長「どうされました?」

羽田「こちらの部屋には監視カメラは無いのですか?」

魔学校長「あります、ただ結構古びていて以前から上手く録画できていない様なのですが。」

パルライ「魔学校長がこちらにいらっしゃる間も録画する仕様になっているのですか?」

魔学校長「勿論です、あちらで赤いランプが点滅している物なのですが。」

羽田「こちらで再生する事は出来ますか?」

魔学校長「どうぞ、こちらのパソコンを使って下さい。」

 羽田は部屋の端にある監視カメラを一時的に停止して中にあるSDカードを取り出した後、魔学校長が手元のパソコンを差し出すとカードを挿入し再生を始めた。

羽田「何時ごろに催眠術を掛けられたか覚えていますか?」

魔学校長「確か・・・、先日行った定期魔術考査についての報告書に目を通していた時だったので2時間ほど前だったでしょうか。」

 羽田が映像を2時間前まで巻き戻すと真っ暗に変わりずっとその状態が続いていた、どうやらリンガルスと思われる覆面の男が蓋をしたと思われる。真っ暗な映像の直前には無理矢理催眠術を掛けようとした覆面男と魔学校長が揉めている場面が映っていた、覆面男の右手には先程の書類が握られている。

羽田「この映像の音声は聞けますか?」

魔学校長「確かここをクリックしたら・・・。」

 魔学校長がスピーカーのアイコンをクリックすると真っ暗な映像の音声が流れ出した、ただ映像の覆面男は何らかの形で音声を変えている。

覆面男(映像)「認めろ、今年の首席入学者は「リラン・クァーデン」だと。」

魔学校長(映像)「何を言っているんだ、私が直筆でこの書類に「梶岡浩章」と書いている限り覆せんよ!!」

覆面男(映像)「これか・・・、分かった。貴様には眠って貰うぞ。」

魔学校長(映像)「何を言って・・・、グゥー・・・。」

-78 催眠術-

 監視カメラに映った魔学校長は覆面男の手によりあっさりと眠らされてしまった。

覆面男(映像)「寝たな、手を焼かせおって。暑いな、誰も見てないし監視カメラにも蓋をしたから脱ぐか。」

 真っ暗な映像で覆面男は覆面を取った様だ。

覆面男(映像)「さてと・・・、自らの手で書き換えて貰おうか。首席入学者は誰だ。」

魔学校長(映像)「り、リラン・・・、くぁ、クァーデン・・・。」

覆面男(映像)「そうだな・・・、では今目の前にある虚偽の書類を書き換えるのだ。」

 真っ暗な映像が続いているが、ごそごそと物音がしている。デスクの引き出しを開けて修正液を取り出し書き換える準備をしている様だ。

 音を立て蓋を開けると修正液を塗り付けペンでその上に「リラン・クァーデン」と書き込んでいた。

覆面男(映像)「よし・・・、これがあれば問題ない。アイツは上手くやっているだろうか・・・、まぁいい。取り敢えず合流して逃げるかね。」

 羽田が眉を顰め映像を少し巻き戻して再生し直した。

覆面男(映像)「取り敢えず合流して逃げるかね。」

羽田「「合流して逃げる」・・・、か。何か引っかかるな・・・。」

魔学校長「実はと申しますと、この鏡台の鏡の裏にも監視カメラを仕掛けてまして。」

 鏡台の鏡を扉の様に開くと中からもう1台カメラが現れた。

魔学校長「ただこのカメラの映像は鏡が厚いので音声が小さいのですが。」

羽田「とにかく見てみましょう、何か嫌な予感がします。まさか・・・、あの男が・・・。」

 『あの男』の姿が頭をよぎった羽田はカメラから先程と同様にカードを取り出すとパソコンに挿入し映像を再生した、鏡越しにしては綺麗にくっきりと映っている。先程の魔学校長が覆面男と揉めている場面だ、羽田がそこからも続けて再生を続けて4人はずっと見続けていた。

 羽田が嫌な予感を感じた問題の催眠術のシーンに差し掛かり、映像の中の魔学校長が自身の手で名前を書き換えた場面。しかし問題はそこでは無い、暑さが故に直前に覆面を取った男の顔がくっきりと映っている。そこに映っていたのはリンガルスでは無く・・・。

羽田「義弘・・・、どういう事だ!!アイツが・・・、何故催眠術を・・・!!」

 羽田の『あの男』という嫌な予感が当たった様で、映像に映っていたのは貝塚義弘、その人だったのだ。

魔学校長「しかし、私が感じた魔力は確かにリンガルスの物でした。何が違ったのでしょうか。」

 パルライは2つの仮説を可能性の1つとして立て、魔学校長に質問してみた。

パルライ「魔学校長、何点か質問してもよろしいですか?」

魔学校長「勿論です。」

パルライ「これより前にリンガルスに催眠術を掛けられた事は複数回あるのですか?」

魔学校長「何度も何度もありました。真面目な用事の時もありましたし、単に遊びで掛けたという時もありましたね。どの時も映像の時と同じ様な魔力を感じたのを覚えています。」

パルライ「その時なのですが、目隠しをされていた事はありますか?」

魔学校長「たった数回ほどだけですが、目隠しがあったと思います。その時も同様の魔力を感じました。」

パルライ「違和感は?」

魔学校長「さほどでは無かったのですがありましたね、でも段々と同じ物に近づいて来たのを覚えています。」

パルライ「なるほど・・・、そういう事ですか。」

 パルライの発言の意味が理解出来なかったデカルトが質問した。

デカルト「どういう事だ。」

パルライ「貝塚義弘がリンガルスの下で魔術と催眠術の鍛錬を行ったと思われます、可能な限り自らを大賢者に近づける形で。あれほどの魔力の持ち主が2人という事になるとかなり厄介かと思われます。」

羽田「しかし、義弘は何処で魔力を?」

パルライ「リンガルス本人の魔力を分け与えられたかと、それもかなり強力な物をね。」

-79 2人の覆面男-

 深刻な現状を報告しないといけないと思った羽田が最初に連絡したのは光明だった、別々のカードに入った映像と音声を合成できないかと相談するためだ。

光明(電話)「俺の所に持ってきてくれたら可能ですよ。」

羽田「助かります、超重要な証拠になる映像になるかと思われます。」

光明(電話)「すぐに向かいます、林田警部や結愛にすぐ見せなければ。」

羽田「我々はこの案件の捜査を継続しておりますので、そのおつもりで。」

光明(電話)「分かりました、急ぎますね。」

 一安心しながら電話を切った羽田の表情を見たパルライが声を掛けた。

パルライ「光明さんの様な技術のある方が味方にいて大助かりですね。」

羽田「私には不可能な事ばかりで面目ないです。」

デカルト「取り敢えず監視カメラの映像を流しましょう、義弘とリンガルスがどこで合流したか気になります。それにもう逃げているかもしれない。」

魔学校長「主要警部室で建物内外の通路全ての映像をご覧いただけます、すぐに向かいましょう。」

 4人は主要警備室へと移動し、警備員に指示を出し各所の監視カメラの映像を再生し始めた。催眠術に掛かった魔学校長が自らの手で書類に「リラン・クァーデン」の名前を記入し終えた時間帯から。

 映像では書類を手に入れた義弘と思われる覆面男が魔学校長室を出た後、廊下を突っ切り階段へと向かっていた。階段付近に取り付けられた監視カメラの映像に切り替えると、覆面男が階段を駆け下りようとしているのが映っていた・・・、と思われた。

羽田「何・・・?!くっ・・・、気付いていたか。」

 覆面男は階段を降りずに消えてしまった、『瞬間移動』で移動したのだろうか。

パルライ「すぐに全通路の映像に切り替えて下さい。」

 映像を切り替えたが覆面をしている人物は何処にも見当たらない、「合流する」と言っていたはずなので2人映っているはずなのだが。

 パルライは『瞬間移動』以外の可能性を示唆した、映っていないだけの可能性なのではと。早速警備員に指示を出す。

パルライ「警備員さん、先程の階段付近のカメラの映像を映して頂けませんか?できれば先程と同じ時間帯で。」

警備員「分かりました、やってみましょう。」

 警備員は映像を操作して指示通りの時間帯の映像を出した、映像の中の覆面男が消えた瞬間からパルライが目を凝らして映像を見ている。

パルライ「やはりか・・・。」

デカルト「何があったんだ?」

パルライ「ああ・・・、皆さんこちらをご覧頂けますか?」

 パルライはもう一度再生する様に警備員に促し、先程の映像を流しだした。

パルライ「止めて!!」

 警備員が映像を止めた、覆面男が魔法で消えた瞬間のシーンだ。

パルライ「この場面です。皆さん『瞬間移動』で何処かへ向かったと思われたかと思いますが、これならどうですか?」

 監視カメラの制御器にパルライが魔力を流すと、誰もいなかった階段付近に『瞬間移動』したはずの覆面男が。

パルライ「何処の通路を探してもいない訳です、何処にも移動していなかったのですから。この状態で映像を流します。」

 映像の再生を再開する、覆面男は階段付近から動かずじっと息を潜めている。

 暫くすると覆面をした人物が階段を駆け上がって来た、2人は魔法で姿を消しているので安心したかの様に覆面を取った。やはり正体は義弘とリンガルスだ。

義弘(映像)「裏工作と梶岡に送る「入学資格剥奪通知」はこの通りだ、そっちはどうだ?」

リンガルス(映像)「データの書き換えも完了しました。これでリランが首席入学者です。」

-80 証拠-

 光明が到着すると羽田は監視カメラの映像が入った2枚のSDカードを手渡し状況を説明した、勿論義弘が大賢者と同等の魔力を得ているという事も。そして主要警備室に戻り監視カメラの映像の複製を貰えるか確認しに行った。

 カードを受け取った光弘はすぐに解析を開始して映像と音声を見聞きして比べ、同時刻で同じ場所の物と分かった瞬間に改めて作業を再開した。

光明「大賢者・・・、ですか。」

パルライ「ええ・・・、伝説の存在と言われていましたがまさかこの様な場面で出くわすとは思いませんでした。正直敵に回したくないのが本心です。」

光明「そんな存在に義弘が・・・。」

パルライ「おそらくですが。」

光明「急ぎ作業を行います、どうやら一刻を争うみたいですし。」

 一刻と言えば光明は気になる事があった。

光明「そう言えば⑲番車は今何周目ですか?爆弾処理の状況が気になってまして。」

デカルト「残り15周だそうです。」

光明「お2人の国の爆弾の方はどうなっていますか?」

パルライ「確かに気になりますね。」

デカルト「すぐに聞いてみます。」

 2人は各々の国の警察や王国軍に連絡を入れ爆弾処理の状況を確認した上で⑲番車が後15周という事を伝え、処理作業を急ぐように命じた。

デカルト「こちらは後2個だそうです。」

パルライ「こちらは残り1個と申しておりました。」

 しかし、気になるのはやはり・・・。

光明「今走っている⑲番車の正体は何者なのでしょうか。」

パルライ「主催者である私達に情報が無く、起爆に関係あると言うのが気になりますね。」

デカルト「車を止めさせますか?」

光明「いえ、やめておきましょう。レースに手を出したらその瞬間に起爆のスイッチを押されかねません。」

 光明はパソコンからSDカードを取り出した。

光明「作業が終わりました、急ぎネフェテルサに戻りましょう。」

パルライ「重要参考人として魔学校長を連れて行くべきでしょうか。」

光明「そうですね、実際に現時点で被害に遭った人物は魔学校長と梶岡さんですから。」

羽田「ご主人様、お待たせ致しました。必要な監視カメラの映像の複製です。」

魔学校長「私も協力させてください。」

パルライ「ありがとうございます、では急いで行きましょうか。」

 パルライは魔学校長含む全員の体内に自分の魔力を流すと『瞬間移動』で全員をネフェテルサ王国警察にいる林田の下に連れて行った。

 5人が突然現れた為、林田は驚き持っていたコーヒーをこぼしてしまった。

林田「あちっっっっ!!あ、お帰りなさい。お待ちしておりましたよ。」

光明「只今戻りました、結愛もここにいますね?」

結愛「ごめん、ファンデーション直してた。」

光明「おい、そんな場合かよ!!」

結愛「何だよ、女にとったら大事な事なの!!」

パルライ「まあまあ、それ位にしておきましょう。光明さん、監視カメラの映像をお願いします。」

 林田は初対面のアーク・エルフを手差しした。

林田「あの・・・、こちらの方は?」

魔学校長「申し遅れました、私バルファイ王国魔学校で魔学校長を致しております・・・。」

女性「じ・・・、じいちゃん!!何でここに?!」

 爆弾処理班との競馬場近辺の調査と爆弾処理を終え戻って来たドーラだ。

魔学校長「ノームではないか、そうかここはお前の職場か。重要参考人としてついて来たんだよ。では改めまして孫娘がお世話になっております、バルファイ王国魔学校長のマイヤ・クランデルと申します。」

林田「これはこれは、ノーム君のおじい様でしたか。本日はお越しいただきありがとうございます、知らなかったとは言え先程は失礼致しました。」

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    Last Updated : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   2. 「最強になるために」①~⑤

    2.「最強になるために~社長令嬢の青春奪還物語~」佐行 院-①序章- 私立西野町高等学校、私服登校可能など自由な校風のこの学校に通う宝田 守(たからだ まもる)はまったりとした毎日を友人と共に過ごしていた。1コマ55分の授業を6コマ出席して幼馴染の女の子・赤城 圭(あかぎ けい)と帰る。それが守の日常。他の人と何ら変わらない普通の高校生。因みに、守と圭は同じ1年3組だ。 比較的新しい5階建ての校舎に体育館やグラウンド、また食堂があって皆が各々の時間を楽しく過ごしていた。 部活も勿論存在する。運動部や文化部、そして同行会、沢山ある。因みに守は帰宅部(面倒くさいから)、圭もそうだった。因みに運動部にはクラブハウス(部室棟)があった いつも昼休みは図書室で本を読んで過ごした。読書は大好きだ。自分ひとりの世界に入り込める。ゆっくりと本を読み没頭し、チャイムがなったら教室へと戻って授業。本当に普通の日常。 放課後は必ず寄って帰る場所がある、学校の敷地の一角に佇む「浜谷商店(はまたにしょうてん)」というお店だ。歩いてすぐだから守だけじゃなくて西野町高校に通う生徒はみな好んで寄っている。ご夫婦で経営されているお店で皆顔なじみである。ある意味第二の両親と言っても過言ではない。今日はおばちゃんが担当らしい。 守「おばちゃーん、いつものー。」おばちゃん「あいよ、あんたもこれ飽きないねぇ。いつもありがとね。」圭「おばちゃんコーラ無いのー?」おばちゃん「ごめんねー、裏見てきてもいいかい?」圭「もう喉カラカラだよー、早くー、死んじゃうよー。」おばちゃん「そんなんで死ぬわけないだろ、待ってな。」 守は大好きなメンチカツとハムカツを頬張り、圭はコーラをぐいっと飲みながら歩いて帰る。それが僕たちの1日の締めくくりだった・・・、その時が来るまでは。 3学期の終業式の日、事件は起きた。 式を終えホームルームも終わり、守は圭と浜谷商店へと向かっていった。守「あれ食わなきゃ1日が終わらねえよな。」圭「ウチも早くコーラ飲みたーい。」守「またかよ、お前好きだよなー。」 いつも通り・・・のはずだった。圭「ねえ・・・、あれ・・・。」 浜谷商店のいつもは開いていた引き戸が完璧に閉まっている。貼り紙が一枚。「お客様各位   日ごろからのご愛顧誠にありがとうございま

    Last Updated : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   2. 「最強になるために」⑥~⑩

    -⑥考査と摸試- 時が流れ数か月、今の「貝塚」になって初めての中間考査となった。以前に比べ範囲が広く感じる上に授業時間が長くなったので当然のように制限時間が長かった。ただ範囲が広くなった分頭を悩ませる生徒が多数存在したがこの考査を突破しなければ進級が危なくなる。 ただ以前理事長の義弘が夏休みなどの長期休みを廃止してしまったので、危ぶまれるものが一つ、良いようで、いや悪いようで減ってしまっていた。今回の摸試は2日かけて6教科8科目の学力を競う、自信満々のものもいればそうでないものもちらほらといた。因みに生徒番号は胸元の番号で結愛と海斗は記入不要となっている。ただそこはやはり学校の先生が考えて作った考査、工夫を凝らした問題がいっぱいだ。 琢磨は2日目の最終科目・現代文の「傍線部(※)の人物像を絵で描きなさい。(色塗り不要)」の問題をじっくりと丁寧に描いて満足感いっぱいで居眠りを決め込んでいた。「(色塗り要)」だったら何人か色ペンを出そうと焦った生徒もいたろうに。若しくは授業中に「色は塗る必要がありますか?」と質問した生徒でもいたのだろうか。中学時代の美術の授業ではあるまいて、そんなに彩り必要とは思えない。もしかして先生が気を利かせて最後の最後にジョークでもかましたのだろうか。まぁ、気にしても仕方ないかという雰囲気と共に中間考査は終わりを告げた。終了のチャイムが鳴り響く。試験官は飛井。飛井「そこまで!後ろから回答用紙のみを回収するように。」守「終わったー、とりあえず一安心だな。」飛井「おい宝田、何を言っているんだ。」 次の言葉に全員耳を疑った。飛井「今から講師の方々による摸試だぞ、早く準備せんか!」全員「何て?!」結愛「親、お・・・、お父様はその様な事は仰っていませんでしたわよ!」 結愛は一応大人の前でのお嬢様モードでいようとしたが気が動転していたのかごちゃついている。この事は義弘が誰にも言わず秘密裏に行っていた様だ。飛井と入れ替わって乃木が入ってきた。問題用紙がかなりの分厚さとなり運ぶのが大変そうだ、教卓に音を立てて置いてから一呼吸ついて試験の開始を告げた。乃木「着席してください、今から数学の問題用紙を配りますがまだ開けないで下さい。」守「どんだけの問題を詰め込んだらああなるんだよ。」圭「かなり手の込んだ問題かもしれないね。それにしてもさ、

    Last Updated : 2025-01-21
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   2. 「最強になるために」⑪~⑮

    -⑪謝罪と協力- 以前結愛が改造した校舎各所に元から設置された監視カメラのハッキングに光明が成功したとの連絡が入ったので海斗と結愛は深夜光明の元へ向かった、兄妹も光明も同様の可能性を示唆していたのだ。念のため、結愛が光明に持ち掛けていた。-数時間前-結愛「光明、ちょっといいか?」光明「ん?」結愛「俺も兄貴も考えてたんだけどな。」光明「うん。」結愛「理事長室や出入口付近以外から親父が出入りしている可能性ってないのかなってよ。」海斗「壁に隠し扉・・・的な。」光明「それは俺も考えてた。」 その時、用を済ませ化粧室から出てきた琢磨が教室に入ってきた。琢磨「何の話だよ。」光明「ん?光明か・・・、実はな・・・。」 光明が琢磨に先程までの会話の内容を伝えた。琢磨「確か監視カメラって結愛が改造してたよな。」光明「実はそのカメラの解析と改造に成功したんだよ、ちょっと見てくれるか?」 光明はパソコンに映っている監視カメラの映像を見せた。光明「これは以前結愛が以前改造した監視カメラの映像だ。念のため、監視側には以前と同様に同じ映像がずっと流れる様にいじくってある、証拠を見せないとな・・・。」琢磨「なぁ、俺も協力できねぇか?」光明「いいけど、お前がいいなら。」琢磨「前に結愛の事を疑っちまったから、なんつぅか・・・、謝りたいというか・・・。」結愛「それは仕方ねぇよ、必ずしも起こりうる事だと俺も海斗も思ってたからな。俺たちは嬉しくねぇが『貝塚』だからな。」琢磨「お前ら『坊ちゃま』と『お嬢様』だもんな。」結愛「やめろよ、そう呼ばれる度に吐き気がするんだ。」海斗「俺も。」守「演技が上手いんだな。」圭「それ褒めてんの?」守「少なくとも俺はそのつもりさ。それにこれは使えるかもしれないだろ。」結愛「『演技』か・・・。」海斗「確か『あいつら』って・・・、だよな?」全員「確かに・・・。」 そこにいた全員が共感していた、ただ今は作戦会議が優先だ。琢磨「一先ず俺がどれかの監視カメラの前に行くわ、そこでだが無線機を通して誰か何かを俺に指示してくれるか?」光明「あいよ。」 琢磨は光明からスコープや無線機を受け取ると一番近くの監視カメラへと向かった、最寄りのカメラまではさほど時間がかかることなく到着した。海斗がカメラの方へ向く。結愛「少し遊ぶか?

    Last Updated : 2025-01-21

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  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」96~100 番外編

    -96 ご飯のお供②- 温かな朴葉味噌を熱々の白米に少しずつ乗せご飯を楽しむ一同、そんな中林田が懐で何かをごそごそと探し始めた。林田「次は私がご紹介させて頂いて宜しいでしょうか、ゲオルさんのお店でこれを売ってたので助かりました。」 林田は懐から小瓶を取り出すと嬉しそうに中身を自ら用意した小皿に出した、誰もが食べた事があるであろうメンマの「やわらぎ」だ。林田「そのまま食べても美味しいのですが、これを胡瓜キムチと混ぜても食感が良くてご飯にピッタリなんです。」 小皿とは別に少し大きめの器を用意し、胡瓜キムチとやわらぎを混ぜて振舞った。シャキシャキの胡瓜と柔らかなメンマがバランスよく混ざっている。メンマに和えられた辣油が味のアクセントになってご飯を誘い、それにより光と結愛はずっと箸が止まらなかった。結愛「アクセントの辣油がキムチの味を引き立てていますね、今日ご飯足りますか?」光「一応2升は用意しているんですが追加注文しないとダメかもしれませんね。」 光と結愛、そして羽田や林田のご飯のお供の時点で用意をしていた半分の1升が無くなろうとしていたので実は焦っていた。念の為、今現在もう半分の1升をお釜で炊いている状況だが無くなるのも時間の問題だろうか。林田のやわらぎ入り胡瓜キムチの出現は一同にとって大きかった、光は『瞬間移動』を利用して地下の貯蔵庫から追加の米を持って来る事にした。念の為に2升程追加を用意し、食事に戻った。 すると、家の入口の辺りから聞き覚えのある男性の声がした。男性「林田さん、林田さん?いらっしゃいますか?来ましたよー。」 その声に返事をする林田、ただ口の中には米が残っている。林田「ああ・・・、待って・・・、ましたよ・・・。裏・・・、庭に・・・、どうぞ・・・。」光「あれ?どなたか呼んだんですか?」林田「ごくん・・・、失礼しました。光さんもお会いした方ですよ。」男性「こんにちは、お久しぶりです。」 優しい笑顔で見覚えのある男性が裏庭に入って来た、この異世界で車を購入したお店の店主・珠洲田だ。珠洲田「光さん、お久しぶりですね。林田さんにご招待を頂きまして来させていただきました。私も皆さんと一緒でご飯が大好きなんです。」光「お久しぶりです、レースの映像でお見かけしましたよ。」珠洲田「これはこれはお恥ずかしい、まさか見られていたとは

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」91~95

    -91 空からの来客- 宴が続く中、月の輝く星空から大声が響き一同を騒然とさせた。声「この私を差し置いて、皆さんだけでお楽しみとは何事ですか?」光「な・・・、何?!」 全員が飲食をやめ空を見上げた、見覚えのある1頭のコッカトリスが3人のホークマンを連れて地上へとゆっくりと舞い降りた。背には軽装の男性が2人乗っている、林田が逃げる様にして家の中へと駆けこむ。林田「ま・・・、まずい・・・。誘うの忘れていた。」 舞い降りたコッカトリスが背に乗っていた2人を降ろし人の姿へと変わる、ダンラルタ国王であるデカルトだ。横にはホークマンである甥っ子と姪っ子が3人共揃ってお出まししている。姪っ子が背から降りた男性と軽くキスを交わす。甥っ子達はウェアウルフと取り皿を持ち、焼肉を取りに行こうとしていた。デカルト「2人も乗せていたから疲れましたよ、と言うかのっちはどこですか?」ネスタ「のっち・・・?ああ、ウチの旦那ですね。さっき家の方に走って行きましたよ。」デカルト「奥さん、かしこまらないで下さい。我々はもう友達ではないですか。」林田「そう仰って下さると助かります!!」デカルト「またそうやってかしこまる、やめろと言っただろのっちー。」林田「人前だから、それにのっちはダメだって。」 2人のやり取りを数人の女性がヒヤヒヤしながら聞いていた、1国の王に何たる態度を取っているのだと言わんばかりに。その内の1人であるドーラが質問した。ドーラ「お義父さんと国王様、いつの間にそんな関係に?」デカルト「これはこれはいつぞやの受付嬢さんではありませんか?まさかのっちの娘さんだったとはね。」林田「たった今俺の息子と結婚したんだよ、だから義理の娘ね。」 横から聞き覚えのある女性が口の中で黒毛和牛をモグモグさせながら声を挟んだ、その声には光も懐かしさを感じている。女性「じゃあ私達と一緒で新婚さんって訳だ。」 声の正体は先程キスを交わした女性ホークマン・キェルダだ。光「キェルダ!!久しぶりじゃない!!」キェルダ「ついさっき新婚旅行から帰って来たのよ。」光「えらく長めの新婚旅行だったのね。」キェルダ「あんたは暫く仕事を休める位稼いだみたいじゃない。」光「流石、言ってくれるじゃん。」2人「あはは・・・。」 2人が談笑している中、バルタンの兄・ウェインとホークマンの弟

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」86~90

    -86 超新鮮で大胆なBBQ- ガイの軽トラで1頭買いした黒毛和牛を林田家の裏庭へと運ぶと、今か今かと待つ人々が歓声を上げていた。その中には光が招待した結愛社長もいる、現場には大きなまな板と綺麗な包丁などが並べられ解体の準備がされていた。 丁度その頃、焼き肉屋の御厨板長と板前をしているウェアタイガーのヤンチが到着した。御厨「今夜はご招待頂きありがとうございます、ただ私達も召し上がって宜しいのでしょうか。」光「勿論です、お2人も楽しんで行って下さいね。」ヤンチ「さてと・・・、早速解体していきますか。」女性達「私達も是非手伝わせて貰おうかね。」 声の方向に振り向くとエプロン姿をしたネスタ林田、そしてまさかの貝塚結愛がいた。ヤンチ「お2人さん・・・、本気ですか?」ネスタ「あら、私はドワーフだよ。舐めて貰っては困るね。」 昔からドワーフの一族は身のために色々な技術を何でも習得するという伝統があった、牛肉の解体技術もその1つだ。ヤンチ「でも何で社長さんまで?」結愛「実は私も見分を広げる為にドワーフの方々から勉強させて頂いているんです、牛肉の解体もその1つです。」ネスタ「では早速やりますかね。」 鮮やかな手つきで3人が解体を進めていく。骨と骨の間に包丁を入れていき、スルッと肉が剥がされていった。結愛「さてと・・・、最初から贅沢に行きましょうか。鞍下、肩ロースです。丸々1本だからとても大きいでしょう。」光「涎が出てきちゃってるよ、早く食べたいな。」御厨「さぁ、焼肉にしていきましょうか。」 結愛から受け取った大きな塊を御厨が丁寧に肉磨きと整形をして焼肉の形へと切っていく。20kgもの塊が沢山の焼肉へと変身した。御厨「では、焼いていきましょう。ヤンチ、すまんが整形を頼む。」ヤンチ「あいよ、プロが2人もいるから解体は大丈夫そうですもん。」 御厨が炭火の網の上に肉を乗せ焼いていった、そこら中にいい香りが広がる。光「この匂いだけでビールが行けちゃいそう。」御厨「さぁ、焼けましたよ。塩と山葵でお召し上がり下さい。購入されたご本人からどうぞ。」光「塩と山葵がお肉の甘みを引き立てて美味しい!!」 光がビールを一気に煽る、何とも幸せそうだ。作業中の結愛やネスタ、そして焼き肉屋の2人にも振舞う。結愛「たまりませんね、ビールが美味しい。」光「今日

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」81~85

    -81 集合- 魔学校長のマイヤは林田を許し、早速持ち帰った映像やマイヤの発言が証拠として使えるかを皆で確認しようと提案した。光明「まずはこちらをご覧ください。」 マイヤが義弘と思われる覆面男に催眠術を掛けられた場面だ、催眠術を掛けられマイヤが自らの手で書類を書き換えたあの場面。マイヤ「ノームを含む私達アーク・エルフの一族は催眠術に強い特殊スキルを祖先からの遺伝で持っているのですが、まさかその長たる私が・・・。」ドーラ「じいちゃん・・・、思い出したくないなら無理に思い出さなくていいよ。」マイヤ「いや、良いんだ。捜査に・・・、いやノームの仕事に協力出来るなら喜んでやるよ。」 映像内で書類を書き換えた後、マイヤがぐっすりと眠っているのが何よりの証拠だ。 次に鏡台にあったもう一つのカメラで撮影した映像を再生した。光明「これはマイヤさんが鏡台に仕掛けてあるもう一台の監視カメラの映像です、少し音が小さいので最初の映像から音声を抜粋してありますが勿論同時刻に同じ場所で撮影された物ですので問題は無いかと。」 暑さが故に義弘が覆面を取った場面を再生した。結愛「義弘が・・・、あれ程の魔力を・・・。」林田「しかし、いつの間に魔力を得て催眠術の修業を行ったのでしょうか。」マイヤ「原因はリンガルスにあると思われます、きっと短期間ではありますがリンガルスの下で修業したからだと思われます。また、無理矢理な方法で魔力を引き出したのかと。」結愛「しかし・・・、ただの魔学校の職員がどうして?」マイヤ「理事長、恐れながら申し上げます。リンガルスは大賢者なのです!!」林田・ドーラ・結愛「大賢者?!」結愛「・・・、って何ですか?」羽田「これがデジャヴってやつですか?」光明「以前にもあったんですね・・・。」 確かに以前にもあった会話だ、ただ重要なのはそこだけではない。義弘が大賢者の力を得たのはマイヤに催眠術を掛ける為だけなのだろうか。光明「そう言えば、レースの方は?」林田「テレビをつけますね。ただ・・・、爆弾処理の方が心配ですね。」男性「それなら安心して下せぇ。」林田「その声は・・・。」 林田が聞き覚えがある声に振り向くとそこには結愛や利通と共に競馬場に仕掛けられた爆弾の処理に向かったダンラルタ王国警察の爆弾処理班がいた。プニ「おやっさん、安心して下さい

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」76~80

    -76 リンガルス- パルライは羽田からSDカードを受け取るとカメラに挿入しより強力な魔力を込め始めた。羽田「あの・・・、パルライさん?」デカルト「パルライはネクロマンサー、リッチの下で修業した魔法使いなんです。ネフェテルサ王国の警察署には今彼の師匠も来ているのですよ。」 そうこうしているうちにパルライが作業を終え、一息ついた。パルライ「よしっ・・・、終わりました。見てみましょう。」 カメラの小さい映像を3人の大人が凝視する。3人「こ・・・、これは・・・。」 映像では黒い覆面をしたリンガルスと思われる人物がパソコンで何かを編集している。デカルト「拡大出来たらな・・・。」パルライ「やってみますか。」 パルライが魔力を込め、パソコンの映像がくっきりと見えるまで拡大した。「首席入学者」の文字の下にある「梶岡浩章」の文字を消して「リラン・クァーデン」に変更していた。パルライ「確定ですね。」デカルト「待て、どこかへ向かうぞ。」 覆面男は書類を印刷してそそくさとパソコンの電源を切ると部屋を出た。羽田「この建物には魔学校長の部屋があったはずです、それと主要警備室。」パルライ「そこに行きましょう。」 3人はパルライの魔法で主要警備室に『瞬間移動』するとそこには警備員が3名いたのだが全員眠ってしまっていたので羽田が慌ててたたき起こした。羽田「しっかりしろ、警備はどうしたんだ!!」警備員「えっ・・・?痛た・・・、羽田さんじゃないですか。どうしてここに?」羽田「首席入学者が何者かによって改ざんされてんだよ、しかもただ事じゃない!!首謀者の1人が義弘なんだよ!!」警備員「何ですって?!大変じゃないですか!!ただ俺達は覆面をしていた奴が後ろから近づいてきてからどうやらずっと眠ってしまっていたらしく、記憶が無いのです。」 こっそりと『審議判定』の魔法を使用していたパルライが首を縦に振る。パルライ「本当の事を言っている様です。警備員さん、恐れ入りますが少し場所を開けて頂けませんでしょうか。」警備員「あの・・・、失礼ですがどちら様ですか?」羽田「バルファイ王国とダンラルタ王国の国王様方だ。」警備員「申し訳ございません!!どうぞ!!」パルライ「そ・・・、そんな身構えないで下さい。堅苦しいの苦手ですので。では、やりますよ。」 パルライが魔力を流

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」71~75

    -71 捜査が続く中- 林田の『連絡』による電話に驚きを隠せない刑務所長に林田が質問した。刑務所長(電話)「都市伝説の通り・・・。」林田「今はそんな事言っている場合じゃない、お前の所に貝塚義弘がいただろ。パワハラ等で捕まった貝塚だ。」刑務所長「あいつなら逮捕された次の日に重岡とかいう投資家が保釈金を払って速攻出て行ったじゃないか、全国でニュースになっていたぜ。」 林田がただ度忘れしていたのだが、刑務所長が改めて言うには義弘の指示で保釈金を支払った重岡が車で義弘を県外の山奥に連れて行くとそこからは2人とも音信不通となったとの事で、新たな悪だくみを行っていた可能性があった。そこで結愛と光明、そして羽田を含む多くの黒服達が突然消えたと聞き、何らかの方法で追って来たかもしれない。林田「因みに結愛さんはどうやってこの世界に?それとここに来てからはどうやって?」結愛(無線)「これも数年前の話です、日本で忙しくしていた私が久々のゆったりとした休日を光明と楽しんでいた時、突然私たちの目の前に幻覚の様な竜巻が現れてそこにいた全員が吹き飛ばされたんです。そのあと目が覚めたらこの世界に。『作成』のスキルもその時知りました、それから少しの間バルファイ王国にある魔学校に通いながらこの世界の事を少しずつ調べて行ったんです。それから貝塚財閥の教育支援の一環として『転送』で持って来た財産の1部を寄付してネフェテルサ王国の孤児院を貝塚学園の小分校に、またバルファイ王国の魔学校を高等魔学校と貝塚財閥の支社にさせて頂いているのです。因みにレースの収益でダンラルタ王国に分校を建設する予定でした。」林田「なるほど、それは我々にも学園を守る義務がありますね。」 その守るべき学園に義弘の魔の手が触れようとしているかもしれない、それは流石に防がなければならない。 その頃、未だトップが⑨番車のまま遂に100周目を迎えようとしているレース場の脇にあるとある施設でバルファイ王国軍の将軍達がひっそりと1人過ごしていた国王を説得していた。バルファイ王国にあるホームストレート横には国王本人が自らの分身を忍ばせていた、分身と言えど思考等が本人とそのまま繋がっているので各々の場所に国王のオリジナルが存在している様な状態となっている。ただ分身は空の鎧に魂を魔力でくっつけているだけのもので、それが仮の姿として一

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」66~70

    -66 一方で- 恋人たちが現場に戻って来たのはプニ達が爆弾を『処理』し終えてから十数分経過してからの事だった。2人は口の周りが不自然に明るく光り表情が少し赤くなっている、髪が少し乱れているのは言うまでもない。プニ「お前ら・・・、ううむ・・・。」 プニは仕事を再開すべきだと気持ちを押し殺した、何をしていたかだなんて正直想像もしたくない。 ただ林田警部が無線の向こうで呆れ顔になってしまっているのは確かだ、幸いケルベロスやレッドドラゴン達は気付いていないらしくその場を何としても納めなくてはと冷静に対処する事にした。 プニの無線機から林田警部の声が聞こえる、どうやら恋人たちは無線機の電源を切っていたらしい。林田(無線)「利通君・・・、そしてノーム君・・・、君らが無線機の電源を切ってまで2人きりになりたい気持ちは私も大人だから分からんでもないが・・・。」ドーラ「そんな・・・、照れるじゃないですか。」林田(無線)「ぶっ・・・。」 ドーラが林田に何をしたかはその場の全員が分からなかったが何かしらの攻撃がなされたらしい、多分ビンタに近い物だろう。取り敢えず林田は偶然を装う事にした、どう頑張ってもドーラが何かをした証拠が見つからないのだ。林田(無線)「失礼・・・。さてと、爆弾の方はどうなっているかね?」ドーラ「お父さ・・・、いや警部、1つがコインロッカーの中に見つかりました。爆弾処理班の方々によるとまだ複数個隠されているかとの事です。」林田(無線)「ノーム君・・・、まさかこの言葉を言う事になるとは思わなかったが、君にお父さんと呼ばれる筋合いは無いよ。取り敢えず見つかった爆弾はどうしたのかね?」利通「えっと・・・。」プニ「見つけた1個は俺達で処理したっす。」ケルベロス①「ただ競馬場内から爆弾の匂いがプンプンしますぜ、林田の旦那。」 相変わらずのキャラを保っているが仕事はしっかりと行っているので文句は言わないでおくことにした、別の者達には日を改めて。 一方、銃刀法違反の現行犯で逮捕した犯人をネフェテルサ王国の警察署に巡査が輸送し、それに合わせ警備本部にいた林田警部が一時的に署に戻り取り調べを行った。犯人によると自分は金で雇われただけだと言う、真犯人からは電話での指示を受けていたが非通知での着信だった為番号は知らないそうだ。そして分かった事がもう1つ、

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3.「異世界ほのぼの日記」61~65

    -61 昨日の敵は今日の友と言うが- 3位グループの3台は今までずっと共に走っていた為か、いつの間にか絆が生まれていた。④ドライバー「お前ら、大丈夫か?!悪かった!怪我してないか?!」⑫ドライバー「こちらこそ悪い・・・、あそこで俺が無理に妨害していなかったら・・・。⑧番車の野郎は・・・、無・・・。」⑧ドライバー「野郎じゃないわよ、失礼ね。」⑫ドライバー「そうか・・・、悪かった。怪我は無いか?」⑧ドライバー「私は大丈夫、とりあえずレースの邪魔にならない様に端に避けていましょう、奇跡的にも1台が通れる位の空間は空いてるみたいだからレースに問題は無いと思うわ。」⑫ドライバー「とにかく怪我が無かったらそれでいい、レースはまたの機会に参加すればいいさ。とりあえず端に・・・。」 どこかで会話を聞いていたのか実況のカバーサが一言。カバーサ「お2人さん、良い雰囲気ですがレース自体は一時的に予備のルートを使って続行していますのでご心配なく。」⑧ドライバー「そうなの?・・・って、アンタどこで聞いてんのよ!!」 ⑧番車のドライバーに追及されるとカバーサは慌てて胡麻化した。カバーサ「おや、1匹のコッカトリスが車番プレートを両手に持って自らコース飛んでますよ。えっと・・・、こちらは④番車のドライバーさんですか?」④ドライバー「俺は・・・、死んだ⑧番と俺を気遣ってくれた⑫番の為に・・・、それと自分達の為に完走だけでもするんだ・・・!!」⑧ドライバー「失礼ね、私まだ死んでないわよ!!」 ⑧番車のドライバーによる適格なツッコミにより一瞬会場は湧いたがレースの主催者から通達が出たのでカバーサが伝えた。カバーサ「えっと・・・、④番さん・・・、気合には皆が感動していますがお車で走っていませんので事故での失格は取り消されませんよ」④ドライバー「えっ・・・。」カバーサ「だから言ってるでしょ、あなた失格。今すぐコースから立ち退かないと私が自らピー(自粛)しますよ。」④ドライバー「は・・・、はいー・・・。」 ④番車のドライバーは諦めて地上に降り立つと人間の姿に戻ってから徒歩で戻って行った、背中にはとても哀愁を感じるが少し震えてもいた。カバーサ「まぁどう考えても距離的に無理なんですけどね、本人自ら立ち退いて下さったので良しとしましょう。あ、くれぐれも私は脅してませんので

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3.「異世界ほのぼの日記」56~60

    -56 レース開始直前だが- 光は出走表の場所をナルリスに聞き車券を購入しに向かっていた、まるで国民の祝日の様に老若男女が右往左往していて大混雑している。 先程1杯呑んだビールの影響か光はトイレに行きたくなったので車券売り場への道中で探すことにした。 トイレは意外過ぎるほど早く見つかり全く混雑していなかったので光はすぐに駆け込み用を済ませた。 トイレを出て車券売り場を目指す、ぷらぷらと歩いているとふんわりと優しい香りがして来たので近くを通った時少し寄ってみるかと意気込んだ。 何軒か日本に似た食べ物屋の屋台が出ている様でその内の1軒を覗いてみる事にした。光「『龍(たつ)の鱗(うろこ)』ね・・・、こんな名前の店あったかな。」 ただ一際行列が目立っており、その上光を誘った香りがその屋台からだったので光は一切迷う事無く飛び込んだ。 店の中では皆が一心不乱に丼に入った麺を啜っている。店主「いらっしゃいませ、お一人様ですか?お好きなお席へどうぞ。」 どうやらここはラーメン屋さんの屋台のようだ。他のお客さんが食べているラーメンはスープが綺麗に透き通った金色のもので、細麺。トッピングはカイワレ大根と何かを揚げているチップスらしい。(※作者が大好きなラーメンの1つです、店名は変えてますが。) カウンターにお品書きがあったのでチラリと見てみると「鯛塩ラーメン」の文字がある。光「『魚介ベースのスープで鯛の皮のチップスをトッピングした美味しいラーメンです』・・・か。」店主「お決まりですか?」光「あっ、鯛塩ラーメンをお願いします。」店主「少々お待ちください。」 屋台の隅に探していた出走表をみつけた。光「出走表頂いてもいいですか?」店主「勿論どうぞ、ラーメンが出来るまでゆっくり予想していて下さいね。」光「助かります。」 光は店の隅に行き出走表を1枚取って席に戻った、①~㉑までの車番の横にチーム名やホームストレートで行われた予選の計測タイム、スタートポジション等が書かれていた。光「確かポールポジション取った⑰ブルーボアが1番人気で、18kmのホームストレートはダントツ、ただガソリンの積載量が比較的少ない気がするな・・・。」 ピットでの給油は認められているがピットストップの回数が多いとその分逆転を許してしまう可能性が大きくなる。光「コーナリングの図を

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