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2. 「最強になるために」㉗

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-01-25 06:00:27

-㉗重要人物-

 どうやったのか1日もしないうちに博はハワイから戻って来た、そして息つく間もなく事件現場を確認しに学園へと赴いた。学校の出入口で幸太郎が博を出迎えた、羽田の案内で事件現場の2年3組へと向かう。

博「これは酷いな・・・。」

幸太郎「どう思う?」

博「あの計画を進める時が来たかも知れん。」

幸太郎「ただ、私たちだけでは力不足だ。特にあの2人が出てきた時は。」

博「ああ、義弘派閥の2人か。あいつらが動けば面倒だな。」

幸太郎「やはりあの人の力を借りるしかないな、私が電話してみたら会ってくれるみたいだ。改めてもう1度電話しようと思うのだが。」

博「私もあの人と話したい、スピーカーにお願いできるか?それと相談に行く時は私も行こう。」

 一方、光明は犯行の証拠となる映像が残っているのではないかと各箇所に設置した監視カメラやドローンを確認していた。事件が起きた数分前の映像を見てみると侵入者と思われる黒服が西條に後ろからスタンガンを突き付け気絶させている所が映っていた、西條が配ろうとしていたお茶のダンボールを奪い取るとその中の数本に透明な液体を注射器で注入しているのが見える。注射器で空いた小さい穴を見つからないようにグルーガンで器用に埋め箱に戻した様だ、その映像を西條に見てもらうべく光明は西條の眠る保健室に向かった。

 保健室では圭が付きっきりで看病をしていた。西條はぐっすりと眠っている。

光明「この人が侵入者にやられた黒服さん?」

圭「うん、少し熱があるけどぐっすり眠ってるみたい。どうしたの?」

光明「ドローンと監視カメラの映像を確認してもらおうと思ったんだけど、後の方がいいな。」

圭「今はゆっくり寝かせてあげよう。」

 その時、西條が目を覚ました。

西條「痛たたたたた・・・、えっと、君たちは?」

圭「気が付きましたか、私2年1組の赤城です。」

光明「2年3組の伊達光明です。」

西條「私は西條だ、ずっと看病してくれてたのか?」

圭「西條さんずっと寝てましたから殆ど何もしてませんけど。」

西條「いや助かるよ、ありがとう
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    -㉗運命の出会いの話- ヤンチは少し抵抗した、いくら板長が勧めたからって自分が納得したものを店の商品として出したいらしい。 ヤンチも板長を信頼していた。店を開く前から、いや女将と出会う前からの話だという。板長は唐突に語り始めた。板長「ちょっと昔話にお付き合い頂けますかい。昔、王国軍で料理番と防衛の一部を任されていた一兵卒がいたんです。そいつは仕事と日常に疲れ刺激を求めていましたので定年間近で軍を辞めて冒険者になりました、最初は軍の時に作った貯金で買った装備でゆっくりと採集等の簡単なクエストを進めていたんです。 そんなある日、岩山の上で1人孤独に暮らしていた獣人(ウェアタイガー)がいたんです。そいつは生まれてから孤独の身で親のぬくもりも言葉も知らなかったらしく、ただただ空腹だったみたいなのでそいつに元一兵卒はクエストで捕った魔物の肉を採集で余ったハーブと一緒に焼いて食べさせました。 その味に感動を覚えたらしく獣人はちょこちょこ一兵卒について行くようになり、次第に料理に目覚めていきました。 ただこのままでは一兵卒から料理を学び辛かったからか、獣人はまず言葉を勉強するようになり次第に一兵卒の事を『親父』と呼ぶように・・・。」ヤンチ「親父、やめろよ・・・、照れるだろ!」板長「まぁ、良いじゃないか・・・。おっと失礼、そしてその一兵卒、いや私は獣人のヤンチと小さな屋台を出して暮らして行ったんです、それがこの店の起源でした。 だから私はこいつを信用しているんです。だからこいつの新作、食ってみて頂けませんか、勿論お題は結構ですから。」ヤンチ「でもあれは元々・・・、賄いだし・・・。」板長「良いだろ、それとこれは板長命令だ。」ヤンチ「では・・・、お待ちください・・・。」 ヤンチは調理場へと消えて行った、その間を繋ぐべく板長は焼き肉を続行し光らにビールやお酒を注ぎ続けた。ただその表情は今まで以上に楽しそうに、信頼する息子の成長を楽しみにする父親の様に。 そうこうしている内にヤンチが料理を持って来た、1品目は『黒豚のもみもみ焼き-出汁醤油風味-』。香ばしい香りが光らを楽しませ、薄めの豚肉でご飯を巻くとお代わりが止まらなくなる。隠し味の生姜が手助けしているらしい。 2品目は国産若鶏の混ぜご飯、炙った鶏の切り身を調味料と一緒にふっくらと炊かれた温かなご飯に混ぜて

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」㉖

    -㉖豪華な宴会と板前の過去- 貸切った大宴会場で店の女将が日本でも今まで見たことない位の笑顔を見せていた、肌はとてもつるつるで皺1つない印象で年齢を感じさせない。何か秘密があるんだろうか、接客していた女将とは別に若女将が存在しており2人が笑顔で奥から出てきた。女将「何かございまして?」光「あ・・・、いや・・・、女将さんお綺麗な方だなと思いまして。」女将「あらお上手ですこと、でも何も出ませんわよ。」 と言いながら片手に持っていた熱燗をテーブルに置く、どうやらかなり嬉しかったみたいで女将がサービスしてくれた様だ、ただどこから出てきたかは分からないが。若女将「女将、そろそろ・・・。」女将「あら失礼、ではこの辺で一旦失礼致しますわ。」若女将「あれ?また行っちゃった・・・、すみません。では鉄板の電源失礼致しますね。」 知らぬ間に女将は瞬間移動で消えてしまっていた、若女将は気付かなかったらしく首を左右に振っている。一先ず、鉄板の電源を入れ温めだした。 数分後、宴会場の外から女将、若女将、最後に板前の順番に3人が注文したコースのお肉を運んで来た。女将「お待たせいたしました、『特上焼き肉松コース』のA5ランクのサーロインでございます。」板前「1枚ずつお渡しさせて頂きますのでごゆっくりお楽しみください、味付けはシンプルにこちらの岩塩でどうぞ。」 静かで厳格な風貌ながら落ち着きがあり優しさ溢れる口調で板前が説明する、どうやらこの人はここの板長らしい。板前「板長、お待たせしました。」板長「ありがとう、良かったらお客様の前で説明して差し上げて。」板前「は、はい・・・。こ、こちらは・・・、カルビで・・・、ございます。甘く・・・、豊かな脂が・・・、ビールやご飯に・・・、ピッタリでございます。」板前「ハハハ・・・、一応合格にしておこうか。すみませんね、こいつ支店からこの本店に配属になったばかりで緊張しているみたいなんです。でも可愛い奴なんですよ。」 板長は意外と明るい人らしく気軽に声を掛けやすかった。板長「今から2枚目と3枚目のサーロインを焼いていきます。別の鉄板では、ヤンチってんですが、こいつがカルビを焼いていきますのでお好みの味付けでどうぞ。腕は確かなので美味しく焼いてくれると思いますよ。」 ヤンチが別の鉄板にカルビを丁寧に焼いて行った、お肉がゆっく

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」㉕

    -㉕緊張の瞬間- ナル、ゲオル、そして光の3人は固唾を飲んで競争水面を走る6艇を見ていた。片手に丸めた出走表を握っている傍でスピーカーから実況の女性の声がしている。実況「おはようございます、このレースから私カバーサが実況を務めて参ります。 先程から川の流れが強くなっている競争水面でスタートライン上には横風が吹いて参りました、現在この状況でも人気は1番と2番(ふたばん)が集めております。 2連単では1番-2番、1番-3番、2番-1番、そして2番-3番がオッズ1桁代での予選競争第4レースです。」 光は他の2人以上に緊張していた、この世界での初レースだからだ。光「ゴクッ・・・、お願い・・・。」 そして、出走表をより強く握りしめた。実況「スロー3艇、123、かまし3艇、456、枠なり3対3での進入です。 進入はインコースから、1番2番3番、4番5番6番で・・・、いまああああ、スタートしました! 全艇横並び一線でのスタートです、1周目の1マーク、逃げる1番ミイダスと3番フォールドの間を4番ナシュラがぐぐぅっと差し込んで参りました!」ゲオル・ナル「4だと?!何だってー?!」光「来た!」実況「バックストレッチ4番ナシュラが抜け出して参りました。艇間離れて2着を1番ミイダスと6番カンミが争っております、なおスタートは全艇正常でした。 1周目の2マーク、先頭4番ナシュラが落ち着いて旋回していきます、2着争いの2艇が回りますがインコースを取った1番ミイダスの外側から6番カンミが来てずぼぉぉぉぉっと大回りして加速しております。 2着争いの2艇が未だ並走している中レースは2週目へと入って参りました。 2周目の1マーク、先頭4番ナシュラが余裕を持って旋回し、どんどん後ろとの差を広げて行く中2着争いの2艇が同時に旋回し外側握った6番カンミがこれまたずぼぉぉぉぉっと抜け出して参りました。 バックストレッチ、先頭4号艇ナシュラが加速していく中、上位3艇が固まって参りました。 2週目の2マーク、先頭4号艇、2番手6号艇、そして3番手1号艇でこのまま行きますと今回大混戦の決着となりそうな第4レースも最終周回へと入ります。 最終周回の1マーク、先頭4号艇に2番手6号艇3番手1号艇の順番で旋回してバックストレッチです。 オッズ2連単、4-6の組み合わせ、267.5

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」㉔

    -㉔休日を楽しむ- 銭湯の帰り道、2人は缶ビールを買って歩きながら呑みなおした。ビールを一気に煽ったナルが一言。ナル「いや、幸せです。こんなに楽しい日が待ってるなんて思わなかったな。」光「えっと・・・、どういうことですか?」 光の顔は温泉とビールのお陰でほんのり赤くなっている。ナル「実は初めて会ったあの日、僕仕事が休みだったんですが元々の担当者が急に出れなくなって店長に呼び出されたんです。」光「そうだったんですか・・・、あの日は何か仕事の時間を延ばしたみたいですみませんでした。」ナル「いえ、気にしないで下さい。楽しかったから。」 一瞬シュンとしてしまった光をナルは一言で慰めた。 光はずっと気になっていた事を聞いてみる事にした。光「そう言えば、ナルさんは休日いつも何してるんですか?」ナル「そうですね・・・、ゲオルさんとよく休みが合うので一緒に遊んでます。」光「次、私もご一緒してもいいですか?」ナル「いいですが・・・、休み合いますか?一応、来週の火曜日ですが。」 光はパン屋のシフト表を確認して答えた。光「大丈夫です、行けます。」ナル「では、来週の火曜日に。お楽しみいただければ幸いです。」 そう言うとナルは光を家まで送り自宅へと帰った、本人はルンルンと飛びながら家路を急いだ。 次の火曜日の朝、ナルは光を家まで迎えに行きゲオルの店へと向かった。ゲオルは店の前で待っていた。 光の家は街から北に向かった所にあり、反対にいつもの銭湯は街から南にあった。ただ今日はいつもと違い西の方向に向かって行った、西側にはいつもゆったりとした川が流れていたが街から歩いて行くとけたたましいエンジン音が響き始めた。ゲオル「さぁ、今日は勝たせてもらいますよ!!!」 ゲオルとナルの目が見たことない位に燃えている、看板を見てみると『ネフェテルサ王国レース場公園』とあった。横に場内マップを見ると競輪場、競馬場、ボートレース場、オートレース場が1つの公園に一緒になっていた。 ゲオルとナルはいつもボートレースを選んでいた、2人は出走表を取ると赤ペンを耳に挟み入場料の100円を改札に入れて入って行った。因みに光も日本にいた時やった事があるので違和感は無かった。 場内にはテレビ画面が並びオッズ倍率や先程行われたレースの結果、そして別の画面には展示の結果やリプレイが流れ

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」㉓

    -㉓続く食事会- 光はカレーが、そしてナルはトマトが好きすぎて数日に分けて食べる予定だった夏野菜カレーを1日、しかも1食で食べ終わる勢いであった。ただ日本から持って来て『アイテムボックス』に保存しておいたお米が無くなりそうな勢いだった。ナル「ごめんなさい、貴重な食料なのに。美味しすぎちゃってつい・・・。」光「大丈夫ですよ、代用品を作りましょう。」ナル「ご飯以外にカレーに会うものってあるんですか?」光「ずっと米だけじゃ飽きるでしょ、私に任せて下さい。それに私の故郷ではカレールーだけ食べてビールを呑む人までいますので大丈夫ですよ、では作りますか。」 そう言うと光は小麦粉などの材料、そしてヨーグルトを混ぜたパン生地を作り外へ持って行った。光「見よう見まねにDIYで作ったこの子が役に立つ日が来るとはね。」 家の裏に筒状の窯があった、底で薪炭を火属性魔法で燃やし内部は500度ほどになっている。内側に生地を貼り付け数十秒経つと焼きあがりだ。ナル「何ですかこれは。」光「『タンドール』って言う窯なんです、これでパンを焼きます。」ナル「パンですか、それ用の窯なんですか?」光「いや、鶏肉や魚も焼けますよ。外はパリパリ、中はふっくらと焼けるんです。」 ナルが数十秒経過し焼きたてのナンを取り出す。ナル「薄っぺらなパンですね。」光「『ナン』って言うんです、確かゲオルさんのお店にも売ってた様な気がしますが。」ナル「ああ、これですか。結構手軽にできるんですね。」 気を取り直して、あと数枚ナンを焼き家に持ちこんだ。温めなおしたカレーにつけて1口。ナル「これは初めてです、美味しいですね。」  それを聞いて光はナルに微笑みかけた。 一方、トマトと胡瓜のサラダはドレッシングで味変し楽しんでいたが流石にそのまま食べることに飽きてきた。そこでナルが歩いて5分ほどの自宅で手作りしたチーズを加えオリーブオイルとジェノベーゼソースで作ったドレッシングをかけてカプレーゼにした。光の勤め先の店で買ったフランスパンを切ったものに乗せて食べる、これにはナルも驚きを隠せない。ナル「こんな食べ方があるんですね、初めて知りました。」光「『カプレーゼ』って言うんです、簡単に出来るので今度また是非作ってみてください。」ナル「良いですね、ただ母がチーズが苦手なんですが、その場合はどう

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」㉒

    -㉒いよいよ収穫- 光は朝一、庭先の家庭菜園を眺めポロっと一言呟いた。光「そろそろ収穫できるかな・・・。」 今日になるまで水やりや草抜きなどのお手入れを欠かさず行い丹精込めて大事に大事に育ててきた野菜たちが美味しそうに実っている。 朝日が照り付け絶好の収穫日和、先日買った麦わら帽子にTシャツ姿になり光は笊を片手に収穫に臨んだ。 まずは真っ赤に熟したトマト、沢山あるので1つ取って試しにつまみ食いしてみる。1口齧るとそこから爽やかで甘酸っぱい果汁がたっぷり口に流れ込み幸せにしてくれる。 そして細長く育った茄子やオクラも収穫、今日は夏野菜カレーにするかとルンルンさせてくれる。完成した料理を想像し腹を空かせながら収穫を進めていった。 胡瓜も育っているのでサラダを作るため収穫することに、お陰で今日のランチは豪華なものになりそうだと微笑んだ。 川沿いの小さな切り株に結んだ紐に持っていた笊を結び付け、そこに胡瓜とトマト、そして缶ビールをおいて川につけ収穫後の楽しみとして冷やしておくことにした。 ニヤニヤしながら収穫していると家の前をたまたま通った新聞屋のナルが声を掛けてきた。以前ゲオルからナルがヴァンパイアだと聞かされたが午前中でも平気でおきているし、普通にカジュアルウェアを着こなしているので実感が湧かない。ナル「光さんおはようございます、収穫ですか?」光「あ、おはようございます。そうなんです、この野菜でカレーを作ろうと思いまして。」ナル「いいですね、僕トマト大好きなんですよ。」 これもゲオルが言っていた様な・・・。ナル「良かったらお手伝いさせて頂けませんか?」光「勿論です、カレーを作った後にあそこで野菜とビールを冷やしているのでご一緒にいかがですか?」 光は川の水で冷やしている野菜の入った笊を指差した。ナル「最高ですね、俄然やる気がしてきました。」光「では、手早く収穫しちゃいましょう。」 2人は手早く、しかし果実を傷つけないように丁寧に収穫を進めてきた。ナルのお陰で思っていた以上にかなり早く収穫が終わった。キッチンに移動して光は収穫した野菜を切っていき、その横でナルは寸胴でお湯を沸かし始めて別に用意したガラスの容器に切ったトマトと胡瓜を入れ冷蔵庫で冷やしておいた。 寸胴にカレールーを入れ溶かしてその横でフライパンで切った野菜を炒めて一

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